NHKが100分de名著という番組で、世界の名著を紹介している。その「般若心経」版である。
佐々木閑著によるテキストが出ているのでその書評と、2014年9月にテレビで放映されたが、
テレビのみで示された内容についても紹介したいと思う。
なお、付録のコンテンツが加わった書籍シリーズというのも出ているが、そちらは読んでいない。
まずは、テキストについて。
著者の佐々木閑という方は、京都大学の工学部を出た後、文学部を卒業している。そして現在は、
花園大学で教授を務めている。そういう経歴ゆえか、この本は、般若心経について、とても
理路整然と説明している。教科書のように無味乾燥というわけではない。理系の感性で般若心経を
説いているといってもいいかもしれない。そこに私は気持ちの良さを感じた。日本で一番人気の
お経だから、多くの解説本が出ていて、私も以前に、玄侑宗久著のものを読んだことがある。それは
それで面白く読んだが、なんかよくわからないモヤモヤしたものが残ってしまったのである。
本著書において、般若心経は「釈迦の仏教」を否定して、乗り越えてできた大乗仏教のエッセンス
のようなお経であると説明する。これはお釈迦様の教えではないのだ。そこはよく誤解さるところ
らしい。そして、般若心経を表す重要な要素は、「空」の概念と神秘の力である。「空」とは何も
ないということではなくて、言葉では表すことのできない何かという意味である。そして、このお経は
呪文であり、それを唱えるだけで神秘な力を発揮するという。それは単に心を整えるという効果を超えて、
魔を払いのける作用であるという。意味がわからなくても憶えて唱えることが大切だという。
私の周りには、般若心経を覚えている人を見たことがなかったが、参加しているお寺の坐禅会の最後にお経を
読むときには、般若心経をそらんじている人がかなりいるのをいつも見る。
私もこの機会に暗記することができた。
テレビ放映の内容で気についたことを何点か。
般若心経は欧米でも人気があって、英語ではheart sutraと呼ばれている。スティーブ・ジョブスや
ジョン・レノンも心の拠り所にしていたという。般若心経では、いろいろなものを無として否定していく。
例えば、無眼耳鼻舌身意というフレーズは、There are no eyes, no ears, no nose, no tongue, no body,
no mind.となる。ジョン・レノンのイマジンでは、例えば、nothing to kill or die for, and no religion
too.というようにnoで否定していくところがあって影響がうかがえるといった具合だ。
短いドラマのような場面が挿入されていて、般若心経を読んで会社を辞めた人や、会社をクビになって
般若心経の意味を考える人が出てくる。このお経には、悩んでいる人を会社から辞めさせてしまうような
劇薬のようなパワーがあるのかもしれない。
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