子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2011年TVドラマ夏シーズン・レビューNO.3:「陽はまた昇る」

2011年08月11日 22時35分21秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
今季は学校ものが少ないと思ったら,ヴェテランの井上由美子が繰り出してきた一風変わった「教室」ならぬ「教場」ものが,佐藤浩市主演のテレビ朝日「陽はまた昇る」だ。
警視庁捜査一課から,警察学校に赴任してきたワケありの教官(佐藤)が,若くて,世間知らずで,甘え切った(ように見える)若者たち(三浦春馬,池松壮亮など)を鍛え上げるというシンプルな筋立て。それだけに,ドラマが盛り上がるかどうかは,主役の教官はもとより,生徒とその周囲を固めるキャラクターをしっかりと立てられるかどうかが重要だろう。

主役の佐藤浩市は初回,いきなりどっさりと頭部を覆い尽くした茶髪で,アポジカのCMなのか?と驚かせたが,ドラマ通の知人に拠れば「勿論あれはカツラ」とのこと。
何らかの事件の被疑者に妻を寝取られた元エリートという役柄は,今のところそれなりにソリッドで,髪の多い(しつこいか?)佐藤にしっくりきているようだ。
だが,出だしは理不尽なまでに厳しい鬼教官で,生徒との間に生じた緊張感をどこまで引っ張れるかが見ものだったのに,早くも優しく人間味溢れる面を出してしまったのが,長丁場の展開にどう響いてくるか,やや不安もある。

三浦春馬はデビュー以来,自分より幼かったり,あるいは大人過ぎたりと,精神年齢の振れ幅の多い役者人生を過ごしてきたようだが,ここに来て実年齢相応の若さを表現する楽しさを発散している。そのライバルとなるのはひたすらクールかつストレートに熱くなる池松壮亮なのだが,「大鹿村騒動記」での役柄同様に性同一性障害的な雰囲気を漂わせる冨浦智嗣が,ひょっとすると物語のアクセントになるかもしれない。

佐藤と対立する教官に真矢みきが扮しているが,狂信的な教育信念で執拗に主人公に足払いをかけようとあがいたテレ東「鈴木先生」における富田靖子のような迫力は,見られない。
石野真子が警察学校の関係者が集うスナックのような,料理屋のような,何とも言えない店のママを演じているが,彼女の演技やキャラクター以前に,セットが絶望的なまでに安っぽい。あんな空間で酒を飲んで心安らぐほど,今時の警官は牧歌的な生活はしていないと思うのだが。

と,今のところは不安材料もたくさんあるが,佐藤の背中に若い役者たちが惚れて引っ張られれば,それなりの水準に達しそうな空気もある。
このあと必要なのは,トレードマークだった「ちょっとねじれたワル」から転向してしまった浪岡一喜が,地を出して佐藤にぐれることかもしれないが,それはちょっと難しいか。


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