全ての山好きに捧ぐ

2014-10-13 21:20:53 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(終)

今回の縦走の計画段階では南アルプス公園線は土砂崩れの復旧中で、夜叉神峠から広河原までが通行止めとなっており、バスは運休。
甲府からは遠回りとなる奈良田経由で臨時便が運行されていた。
8月末で通行止め解除予定とのことだったが本当に解除してくれるのか分からない。
甲府からバスに乗るのはあきらめて、どうせ奈良田を経由するのなら、身延から出ている奈良田行きのバスに乗る事にした。
大阪からだと甲府へ行くより身延の方が近い。
なので電車はひかり号とふじかわ号を使用した。

<旅のお共>


ふじかわ号は静岡駅発。
東海道本線を富士駅まで走りそこから身延線に入る。
ひかり号を静岡駅で降り、在来線ホームへ行くとふじかわ号がいた。
3両編成の特急電車だ。
1両が指定席車両、2両が自由席車両。
念のため指定席をとったが、自由席でもまったく問題なく座れる乗車率だった。

<ふじかわ号>


身延線は富士駅から静岡駅の方に向けて引かれている。
静岡駅から富士駅に入るふじかわ号は富士駅でスイッチバックし進行方向が変わる事になる。
それで静岡駅から富士駅までは座席の向きが進行方向と逆で、後ろを向けて走らせていた。
みんなが後ろを向いて座っているのは変な眺めだ。

<運転席>


富士駅で進行方向が変わり、東海道本線を離れて身延線に入った。
ようやく落ち着いた。
電車は東海道本線では快調に飛ばしていたが、身延線は街を離れると単線となり山の中に入るとカーブが連続し極端にスピードが落ちる。
車輪とレールがこすれ合って鳴るキシキシという金属音が響く。
線路脇に繁茂した草木が車体に当たる音もする。
ローカルな雰囲気だ。
左手には富士川が流れその向こうの山のてっぺんは雲に隠れていた。
あの向こうに南アルプスがあるのだな。

<下部温泉駅>


奈良田行きのバスは身延駅始発だが、下部温泉駅にも寄ってくれる。
下部温泉駅の方がふじかわ号との接続時刻が良いのでここで乗り換え。
特急停車駅なのに無人駅である。
乗って来たふじかわ号は乗客を降ろしたのに出発しない。
どうやら単線なので上り列車と下り列車が入れ違う駅らしい。
しばらくすると上りのふじかわ号がやってきた。
帰りもこの駅から乗るから、上りと下りの2列車をホーム端から狙ってみよう。

<いい駅だ>


そして日はさくさく流れ帰阪する日。
甲府側のホーム端でここなら2列車の顔が撮れるだろうと思う場所で待つが、停車位置がずれていた。
上り列車が思っていたより手前に止まり、予想した構図では撮れず片方がはみ出してしまう。
上り列車が先に出発するので、荷物を持って後ろに下がり取り直す時間をとる勇気が持てず、撮影失敗。
残念。
帰りは自由席で、今回の行程を思い返しつつ帰宅した。

・・・

山歩きは天気が良ければ楽しい事ばかり。
山小屋の不自由もあまり気にならない。
だから山に来るんだ。
そうなんだよな。
<了>

奈良田温泉

2014-10-10 08:25:29 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(十)

今回の登山口までの足は電車とバス。
JR身延線下部温泉駅で電車を降り、奈良田温泉行きのバスを待っていると、旅してるらしいご婦人に声をかけられた。
私がでかいザックを担いでいたので行き先に興味を持たれたようだ。
私は広河原から山に登るのだと話し、ご婦人は奈良田温泉に入りに行くのだと言われる。
なんでも奈良田温泉には以前来たことがあり、その泉質が大層良かったのでまた来たのだとのこと。
お湯に浸かると身体に泡がいっぱいついて、肌もスベスベになったそうだ。
泡がつくのか…、なら炭酸泉なのかな。
登山後のお風呂にそこを予定していたので非常に楽しみになった。



で、奈良田の町に下山。
到着はお昼前。
その日はずっと下り道だったが、脚は結構な疲れ具合だ。
奈良田の里温泉という町営の温泉施設まで看板に従い向かうが、これが上り坂だった。
無事下山して気が抜けたのか、もっと急な道を登って来たはずが、この程度の坂が脚にとても堪え厳しかった。
施設の建物はなかなか重厚な和風の造りで新しい。
町営の公共浴場なので歴史ある古い施設なのかと思っていた。

実はこの日の朝、山小屋で荷造りしてる時、忘れ物をしたことに気付いていた。
携帯シャンプーとボディソープを持って来てなかったのだ。
ありゃりゃ、4日間風呂に入って無いので石鹸なしでの入浴はあり得ない。
古い共同浴場に石鹸なんて備え付けてるところなんてそうそう無いし、馬鹿な忘れ物をしたものだと嘆いたのだ。
で、受付で売ってないかと見てみると、浴室にリンスインシャンプーとボディソープは備え付けてありますとお知らせしてくれていた。
新しい施設で助かった。



まず頭と身体を洗うためシャワーを浴びる。
おお、シャワーのお湯が心を溶かす。
なんだこの心地良さは?
身体を内側から温めることはあったが、外側から温めるのが久しぶりだからか。
腹に当たる液体が気持ち良い。
今回もシャンプーを3回して、身体を洗い、さあ温泉だ。
浴槽は二つあり、左側のお湯はぬる目で、右側はさらにぬるい。
右側は風邪ひきそうなので左側に入る。

うーん、よろしいなあ。
ぬる目のお湯なのでゆっくり浸かれる。
下部温泉駅でお話ししたご婦人の言うように、泡は付かなかった。
泉質は日によって変動するらしいから、この日は炭酸が抜けてたのかも。
残念。
でもお湯はアルカリ性でお肌ヌルヌル。
毛穴の奥まで汚れを乳化してくれました。



入浴後、併設の食事処で昼食とした。
昼間だったけど、無事下山と良きお休みとなったことを祝して、一人生ビールで乾杯した。
注文したのは山梨名物ほうとう。
初めて食べた。
アツアツの食べ物は久しぶり。
旨いもんだな。
根菜類がゴロゴロ入ってて、大満足した。


キノコって擬人化して見てしまう

2014-09-25 23:46:08 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(九)

森で出会った魅力溢れるキノコたち。

<さすらいの編笠野郎>
ひゅるるーんるんるんるん、寒うござんすぅ、ひゅるるるるるるーん。




<えへん>




<岡本太郎なキャラに見えないか>




<腐海の森>




<托鉢>
街道脇にて。 南無南無~。




<なんだなんだ?>
注視を浴びる。




山深き森

2014-09-24 23:47:50 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(八)

翌日も霧の中の道を下る。
昨晩降った雨は夜半には上がり、朝、山小屋を出発する時にはガスの向こうに朝焼けが見えた。
上空は晴れているようだ。
が、私の居るのは山の中腹。
今日は昨日まで稜線で見降ろした雲海の中を歩く事になるようだ。

<道標>


山小屋辺りから下は森の様相が変わる。
さらに深くなる森。
樹高がグンと上がり、生い茂る葉が空を覆い隠す。
昨晩の雨の名残りが雫となって落ちてくる。
道はこれら樹々の落ち葉が堆積し、柔らかな土に変わり歩きやすくなった。

<樹々の天蓋>


沢は近づいたり遠ざかったり。
沢音が遠ざかると静かである。
自分の鳴らすクマ脅しの鈴の音は、森に吸い込まれていく。
クマさんに届いているだろうか。
心配になる。

<白き沢>


白く霞んだ空間の向こう、樹々の重なりは延々と続く。
なんとも幽玄だ。
道の傾斜は緩く、昨日苦労した急傾斜の下り坂はほとんど無くなり楽になった。
広々とした林床をぽくぽく歩く。
山里近くの山だと下山時はつまらぬ植林帯を歩かねばならないが、ここの森は手付かずに見える。
このような下山道なら移り行くガスと森の作る眺めに飽きることはない。

<森に染まる>


そして足元には様々なキノコがひょうきんな姿を見せる。
目立たぬ色形をしてるので、見落とさぬよう登山道周辺に視線を落とし歩く。
むほほ。
キノコを見つけると花を見つけるよりうれしいのはなぜだろう。

<キノコ一輪>


当初、大門沢下降点からは下山するためにひたすら歩くだけの行程と考えていたが、標高を下げてから思いもよらずとても楽しめた。
懐深き南アルプスである。
奈良田まで4時間半も使って下った。

景色が変わる

2014-09-20 01:55:19 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(七)

稜線を歩いた二日間、午前中早い時間は最高のお天気だったが、徐々に徐々に麓から雲が湧き上がり、頂きには雲がかかるようになる。
午前中でも早お昼前になると、稜線の東側(行くて左手)にはガスが一面に立ち昇り、眺めは閉ざされてしまう。
ガスは稜線を越えて登山道を覆おうとするのだが、西からの風に稜線を越える事が出来ない。
稜線の右側は眺め良く、左側は真っ白だ。

<大門沢下降点導標>


今回のコースでは、大門沢下降点と言うところから下山を開始する。
稜線歩きはここで終わり。
ここから下山口の奈良田まで下り一辺倒である。
標高差にして約2000m。
歩行距離も非常に長く、大雑把に言ってしまえばこれまで歩いた登山口の広河原から農鳥岳までの水平距離と同じくらいだ。
下降点でお昼を迎えるので奈良田まで降り切れず、途中山小屋で一泊する。

<湿り気の中へ>


東側に降りるので降り始めてすぐガスに包まれる。
下るにつれ草が山肌を覆い、木々の背丈が高くなっていく。
道は石や木の根が凸凹を作り歩きにくくなった。
脚を痛めないよう気を付けねば。
やがて沢音が聞こえ始め、大門沢が登山道に近づいてくる。
豪快な沢だった。
どでかい岩がゴロゴロと積み重なる急流で、倒木流木が散乱してとても荒々しい眺め。

<大門沢>


枝沢を丸木橋でいくつか渡る。
この橋がまた渡りにくい。
ガッチリしてるので安定感はあるが、靴を乗せる部分が丸く濡れているので滑りそうで怖い。
慎重に渡る。
こんな道を明日も下り続けるのか…。
大変だ。

<枝沢と丸木橋>



山小屋新知見

2014-09-18 00:51:23 |  南アルプスのおはな・し
南アルプスのお話(六)

今回の山行きは夏休み終了後、秋の紅葉シーズン前の閑散期だった。
なので他の登山者は少なかろうと想像していた。
確かに最盛期と比較すれば圧倒的に少ないのだろうけど、山中ではまずまずの頻度で他の登山者とすれ違った。
山小屋にも10名以上宿泊者がいた。
下手したら2、3名とか、私だけなんて事もあるかと思ったが そんなことは無く、やはり人気のコースなんだなと認識を新たにした。
そんな南アルプスの山小屋に泊まり、本来の山小屋のありようを知った気がする。

まず南アルプスの山小屋には乾燥室が無い…。
私が泊まったところだけなのかもしれないが、へえ…、そうなんだ、と意外だった。
北アルプスの山小屋でそんな設備があるんだと初めて知って、どの小屋にもあったので、こういった深山の山小屋には雨でぐしょ濡れで到着した登山者のため、どこでも乾燥室が備わっているんだと思い込んでいた。
今回訪れた小屋によってはストーブを置いてる所もあったが、乾燥用スペースという感じだったし、ストーブは暖房用でもあるようだ。
部屋に張られた針金に濡れたものをかけて、自然乾燥させるのが普通なのだ。
他に驚いたのは、登山者の少ない時期だからかもしれないが、山小屋を管理人さん一人で切り盛りしている所があった事。
そんな所があるとは思わず、びっくりだ。
どこも複数名スタッフさんがいるものと思っていた。
さすがに一人だと食事の準備だけに時間をかけれない。
ご飯とお味噌汁は必ず出てきたが、主菜は保存食メインで品数も少なかった。
朝食の主菜は生卵、つまり玉子かけご飯だった。

昔の山小屋の食事はどこもきっとこんなだったのだろうな。
最近は山小屋の料理が豪華になったと聞いていたが、なるほどこの食事を標準と考えると如何に贅沢な料理を出されていたのか分かる。
しかし管理人さんも同じ食事のはずで、ずっと山に居たらビタミン不足にならないのかな。
一人でやってたおっちゃんとお兄ちゃん、大変だな。
山小屋管理人の職業病があるに違いない。

<山小屋敷地内の路地>