縦走後の感覚

2013-08-31 02:32:43 |  初・縦走
先週末の雨から一転、朝晩涼しくなった。
朝、汗が体を覆う気持ち悪さから勝手に目が覚めるということもなく、目覚まし時計に起こされるまで心地良い眠りを得られた。
それは良かったのだが合わせて忙しくなり、帰宅時間が遅くなった。
就寝時間が後ろに倒れ睡眠時間も短くなって、心地良い眠りと力を合わせ、目覚ましが鳴ってからも私を眠りに引き込もうとする。
起き出すのに意思の力がいるようになった。
油断すると寝坊しそうだ。

週の後半になると疲労も蓄積され、早く就寝できていた頃は薄らいでいた居眠りに対する欲求が高まってきた。
我ながらよく働いたな。
そんな忙しい一週間をなんとかしのぎ切り、小さな満足感に浸りながら帰宅した。
ふう、なにもしない時間を過ごしたい。

そう、この感覚は縦走後の帰り道にも味わった。
室堂から美女平までのバスの中、美女平から立山駅へのケーブルカー。
いつものようにはしゃぐことなく、普段見られぬ贅沢な景色を眺め、ただ座って連れられていった。
立山駅から電鉄富山駅までは、富山地方鉄道で。
富山地方鉄道は有名観光地をつないでいるが、やはりローカル線である。
旅を楽しむ途上なら、こんな機会を逃すことなく途中下車などして写真撮影に勤しむところだが、旅を楽しみ切って身も心も満足してしまったその時は、登山者の?汗の匂いのする 古いシートから腰を上げる気にならず、ただただ時間を流し行く。
ゆらゆら揺られて富山平野をぼんやり眺め、山の記憶に思いを馳せる。



富山駅に着くと天気は完全に回復。
やはり暑く、忘れていた蒸し蒸し感を思い出した。
夏の空から夏の日差しが私を突き刺した。
とうとう下界に戻ってきたな。
その事を実感したのは若い女性の姿。
ちょっとちょっとお嬢さん方、何て開放的な服装なの。
そんな恰好で山を歩いちゃ危ないよ。
…っと、ここは街中だった。
普段なら気にも留めないのに、山で見慣れぬ景色に男の‘さが’が反応してしまった。


シャンプー3回

2013-08-30 01:07:43 |  初・縦走
みくりが池温泉は室堂ターミナルから10分ほど歩いた所にある。
入浴は9時からで、ロビーで少し時間待ち。
入口横に喫茶室があった。
HPに書かれていたのはこれか。
コーヒーを飲もうかとも思ったが、時間が中途半端。
テラスは雨に濡れ、入浴後のソフトクリームもなしだなこれは。

時間が来て、浴場へ。
他にも3名いらしたが、一番風呂だ。
ぬひょひょー、シャンプーシャンプー。
洗い場の椅子に座りシャワーで髪を濡らし、シャンプー液を手に取る。
1回目はシャンプーの液体を髪の毛に行き渡らせた途端、立ちかけた泡が消えた。
ぬはは 、一旦洗い流す。
2回目は髪の毛の汚れを取り、頭皮を攻めたら、またしても泡がなくなった。
むむむ。
3回目でようやく最後まで泡が持ち、きれいになったことを確認。
よしよし。

顔と体も洗って、さて湯船へ。
泉質はph2.18の単純酸性泉。
お湯は少し茶色がかって白濁している。
湯船は二つあって、片方はお三方が入っていたので、右側の空いてる方へ。
これが無茶苦茶熱く、水でぬるめそろそろと入る。
うーん熱い。
お三方が出た後左側の湯船に移ると、こちらは比較的ぬるめ。
ようやく身体の力を抜き、身体を伸ばした。

前日までに泊まった山小屋では学生アルバイトらしき従業員が働いていたが、中には女性もいた。
男どもはあまり気にしないのかもしれないが、女性は日々の入浴なしでどう過ごしているのだろう。
謎だ。

入浴後、全ての衣服を汗のしみていないものに着替え、町に戻る準備ができた。
んー、スッキリした。
再びカッパを着込んで室堂のバスターミナルまでゆるゆると戻る。
ガスは晴れつつあり、カッパは乾きつつあった。
このままバスに乗っても大丈夫そうだ。
グッバイ、山の日々よ。


縦走最後の行程

2013-08-29 02:10:45 |  初・縦走
最終日。
残る行程は約1時間、一ノ越から室堂まで下るだけである。
四たびカッパを着込み 、ガスが覆い雨がシビ降る中、下山。
室堂までの道は石畳。
遊歩道である。
もう難しいところはない、と思っていたら残雪が長く道を覆っていた。
残雪上を二人連れが上ってくる。
霧の向こうから二人揃ってストックなしで腕を垂らし、俯いてゆっくり歩みを進める様は、亡霊かゾンビが歩いてきたかのようで、苦笑した。

眺めは相変わらず真っ白だが、こうして山中を歩くのもあと少し。
余韻を味わうべく、ゆっくり下った。
途中すれ違った単独行?の女性に問われた。
上の天気はどんなですか?
ずっとこんなですよ、と答える。
そうですか、と残念そう。
直後に小学生の集団登山のグループとすれ違った。
こんちは、こんちは。
…ああ、さっきの女性はこのグループの斥候だったんだ。
雄山くらいまで登るのかな。
子供たちにいい景色を見せて上げたくて叶わず、ため息をついてたのね。
でもこれが山の天候。
君達、山を嫌いにならないでね。
しかし付き添いの先生、雪渓通過には神経使うだろうな。
お気を付けて。

さすがにこの道は賑やか。
こんな天候なのにつぎつぎと上ってくる登山者とすれ違う。
集団登山グループ多数。
交わす挨拶の重みが昨日までとまったく違う。
着いた室堂平がとても開けて見えた。
8時頃、室堂ターミナルに到着。
電鉄富山までの切符を先に買ってお待ちかね、みくりが池温泉へ。

以下次号。

あろうことか旅の終わりを心待ちにする自分が

2013-08-28 01:27:28 |  初・縦走
実は今回の縦走、企画時あるいは出発前、楽しみではあるものの気が重い要素もたくさんあった。
山は好きだし、身体を動かすのも好きだが、高い所は怖いし、険しい道を歩きたいわけでは無い。
私の登山技術で太刀打ちできないコースだったらどうしよう。
怪我や体調が悪くなったらどうしよう、などなど、不安がモヤモヤ。
また、山小屋という制限の多い宿での宿泊など、通常生活から大きくかけ離れた環境に身を置くことのストレスはどんなだろうと。

山中に入ってからもその心持ちは変わらず。
悪天候が連続し、行動時間の7割は足元を見てただただ登るという毎日。
いつものお気楽旅行なら、日が過ぎるに連れて、ああもう半分過ぎてしまった、ああ今日で旅も終わりかと嘆き、旅が長く続く事を願うのだったが、今回は違った。
元の不安に悪天候下を歩く緊張も付加されたし、予定通り日程消化して不安の数を減らし、安堵する日々。
これは修行だな…。
と思い、自虐的気分で足を運び続けた。



そんななので、いつの間にか楽しみにするのは下山後のあれこれに移ってしまった。
まず最初は最終日に予定していた、室堂にあるみくりが池温泉での入浴。
計画時、みくりが池温泉のHPを見たら喫茶室があり、入浴後はテラスでソフトクリームをどうぞ、と魅力的である。
4日間の汗と垢を落としてスッキリサッパリして、ソフトクリーム?
気持ちいいだろな、美味しいだろな。

その次のお楽しみは帰り道。
立山黒部アルペンルートをバスで楽々と下り、富山地方鉄道に揺られ、サンダーバード号で帰阪する。
歩かなくても目的地に連れて行ってくれるなんて。
快適だろうなあ。

帰り着いたら冷たいビールか?
そうだ、ビールだ。
ぐびぐびと飲むのだ。
暑く汚い部屋だが、自分の寝床もとても恋しい。
きっとぐっすり眠れるに違いない。


山中では塩分とビタミンが不足する

2013-08-24 01:16:34 |  初・縦走
どこの山小屋の食事でも美味しいなと思ったのが味噌汁だった。
別に特別な感じはない(失礼 )普通の味噌汁なのに、なんでこんなに美味しいのだ?
きっと毎日汗をかいたので、身体が塩分を欲していたからだろう。
山中で過ごすのは非常に健康的である。
積極的に塩分を摂取したいと思わせるほどの減塩生活を送れるのだから。(違うか

早寝早起き。(眠れないけど
5時、17時の規則正しい朝食と夕食。
適度な運動。
夜遅くまで飲み食いする環境もないし。
実際、下山したらお腹周りがすっきりして、ベルトの穴が一つ内側に通せるようになった。

縦走中の昼食は山小屋で頼んだお弁当である。
山小屋により、棒寿司だったり、おにぎりだったり、普通にお弁当だったりする。
共通しているのは、大食漢でもお腹が空かないよう量がある事。
私にとっては2食分くらいだ。
食べきれないので、一度夕食を頼まず、昼食の残りを夕食にした。
1000円浮いた。

山小屋の食事はどうしても保存の効く食べ物が多くなるので同じような献立になる。
続けて山の中にいるとさすがに飽きてくる。
それ故に食べる量が過大にならず、腹八分目で満足。
やはり健康的。
下山後、一週間くらいトマト入りのサラダがおいしくておいしくて、惣菜売り場で目に入ると必ず手を伸ばしてしまった。
生鮮野菜に飢えてたんだ。



一ノ越山荘の食事は夕食も朝食もそれまでの山小屋のものと違い驚いた。
夕食ではシチューが出た。
たぶん市販のルーを溶かして作った家庭で食べるシチューと同じなんだろうけど、目先が変わってしかも暖かい。
なんとも美味しく感じてしまった。
朝食は目玉焼きを一人用テーブルコンロ(固形燃料を使うやつ)で焼いて作って熱々を食べた。
下界に近い山小屋は違うなあ。


覚悟を決めて

2013-08-23 01:03:10 |  初・縦走
山荘には衛星放送が入るTVがあった。
朝食の時間、夜間外で吹き荒れていた風の音は聞こえなくなっていたので、天候回復か?と期待したが、朝食後見たTVのデータ放送の気象レーダーが、実際はそうで無い事を物語っていた。
前線がもたらす雨雲が富山県上にあり、赤や黄色の雨量大の点々が厚く帯状に連なり、一目で大荒れである事が見て取れる。
降水予想は分母を覚えていないが6時が7mm、以降3時間置きに2mm、2mm、1mmと減って行く。
回復には向かっていくようだ。

部屋に戻ると同室の皆さん、それぞれで考えを決めて準備をしていた。
山荘に滞留する方、予定通り室堂へ向かう方、薬師岳への縦走予定を取りやめて室堂に帰る方。
室堂から来た方に話しを聞くと、室堂への道はそれ程難しい道ではないらしい。
気になったのはガイドブックに注意要と書かれていた鬼岳東斜面の雪渓トラバース。
そこについても特に問題ないとの事。
ふむ。
滞留するも勇気、出発するも勇気。
出発時間を遅らせて予定通り室堂方面へ、一ノ越山荘まで歩く事に覚悟を決めた。

2時間ばかり小屋で時間を潰し、先に出立する同室の方を見送り、しっかりと雨具を着込んで私も出発。
湿原は細かな雨の混じる濃いガスの下に沈み、見えない先行きの不安を抑えつつ木道を辿る。
ザラ峠への下り坂、稜線に出ると突然風が強くなる。
左から右へと白いガスがビョウビョウと音立ててすごい勢いで吹き抜けているのが見える。
こんな中を歩いて行くのか。
再び覚悟を新たにする。

風は初日、二日目の比ではなかった。
自分は台風が来た時、外に出たいと思う人間ではないので、暴風と言うものに初めて体をさらしたと思う。
背中のザックが体の表面積を増やしているので、油断すると足を取られる。
下界の台風の風は強弱があるが、稜線の風はほぼ一定である。
常に強風。

ザラ峠を過ぎ、獅子岳へ上り始める。
ハイマツと岩石の覆う斜面に、登山道はつづら折れにつけられている。
こんな天候の下、道を間違えてはしんどいことになるので、道しるべのマークまで来たらいちいち次のマークを確認してからそちらへ歩みを進めた。
登山道横にはハイマツが茂り、谷に吹き飛ばされる心配はないものの、足場の悪い所が無いでは無い。
時にしゃがんで暴風に耐え、難しい所は風がほんの少しでも弱まる瞬間を捉え、越える。

風を背後に受ける時は楽ができる。
急な斜面の上りを後ろからぐんぐん押してくれた。
カッパが強風にはためき、バタバタと鳴り続ける。
越中沢岳の南側斜面や北薬師岳辺りの道でなくて良かった。
あそこをこの強風下、歩く自信はない。
持ちうる限りの集中力と注意力、判断力を駆使し、必死にこの事態に対処した。

稜線の風はオンオフが激しい。
西側を歩いている時は上記の通りだが、道が稜線を越えて東側に移ると風がピタリと止む。
横につながる山体が盾になってくれ、風は上空へ吹き抜けて行くようだ。
地面近くは本当に無風である。
突然静寂の世界に包まれ、自身の忙しない呼吸音が唯一耳を騒がせる。
なので西側に移る時は再び気合を入れ直す必要があった。
覚悟を決めて境界を越えた。

獅子岳の山頂を越えてからは主に山の東側に道があり、ようやく一息ついて歩いた。
鬼岳への道は高山植物がたくさん花を咲かせていた。
今回の山行で楽しみにしていた場所の一つである。
晴れてたらなあ。
カメラはザックの中で取り出す気にはならず。
また、次の機会としよう。

懸案の鬼岳の雪渓は、通り道が整備され幅2~3m程水平な道が出来ており、なんの問題もなく通過できた。
ありがたやありがたや。
天候回復してきたのか鬼岳の北側に入った時、一時的に地表付近のガスが晴れ対岸の景色が目に入った。
垂直に切り立つ灰色の岩壁下に山道があった。
岩壁には異様な迫力があった。
うわ、こんなところ歩いてたの?
お天気いい日に山全体を見渡して歩いていたらそうは感じなかっただろうその眺めは、真っ白な世界に居続けた後、突然険しい部分だけ切り取り見せられたため、凄みを増してくれたのだろう。

浄土山南峰に着いた時には強風も収まり、一ノ越へのなだらかな道を下る。
どうやら無事歩き切る事が出来そうだ。
長い石壁のある一ノ越山荘に到着。
玄関を入ると見た顔が二人雨具を脱いでいる。
五色ヶ原山荘で同室だった方だった。
あはは、お互い無事で何よりです、と再会を喜んだ。

長い夜

2013-08-21 01:30:44 |  初・縦走
連日猛暑が続いているが、地球は公転を続け、朝はどんどん遅くなっている。
もう窓外の明るさで目を覚ます事はなくなり、少し寝過ごす危険が出てきた。
しかしまあこの暑い自室で、これだけ汗をかきながらよく眠れるものだ。
我ながら感心する。
あんなに涼しかった山小屋では全然眠れなかったのに…。

思い返せば縦走中、山小屋にいる時間が一番長かった。
山中行動してる時間が一番長いと思っていたけど、縦走の主役は?山小屋だった。
結果を反映して記事も山小屋の話しばかりだ。
雨のせいで一日の行動時間は短くなり、4日で平均すると6時間に満たなかった。
そうすると全日程の3/4は山小屋で過ごした事になる。
意外と楽してたのか。
だから歩き通す事ができたのかな。



山小屋にいる時間の中でも一番長く感じたのは夜。
消灯後、寝入るまでが長い。
山小屋の消灯時間は早く、だいたい21時である。
そんな早い時間でもアルコールが入っていたら楽勝で眠れるのだろうが、シラフではつらい。
アルコール無しでは眠れない身体になってしまったのか。
しかも隣には知らない人がいる。
多分消灯から3時間か4時間くらい眠る事ができず、延々寝返りをうっていた。
朝起きる時は眠かったので、朝方はなんとか眠れていたようだが。

夕刻、夕食までの時間は疲れが出てとても眠く、うつらうつらするととても気持ちよい。
その時の眠気が消灯後訪れてくれないかと思うのだが、そうはいかず。
毎日毎日ただ眠れなかった。
とてもつらい時間だった。


さて、五色ヶ原山荘の夜は嵐だった。
雨でなく風の音が窓外で轟々と響く。
翌日は悪天候だと同室の方が情報を仕入れて来てくれた。
翌朝はどう行動するか、判断が必要となるようだ。

山小屋、非日常の世界で時間をつぶす。

2013-08-18 21:16:27 |  初・縦走
<北薬師岳にて>


恐れていた山小屋の混み具合は許せる範囲で、どこの小屋でも最低一人一畳割り当ててもらえた。
これについてはホッとした。
今回泊まった小屋は、二段ベッド状に寝床が並ぶ所と、6畳の個室を複数人で使用する所と、二つのパターンがあった。
二段ベッド状の所は小屋全体で一部屋の雰囲気があるので、隣の人とも特に関わりなく過ごせる。
6畳部屋は流石に同室の方々とお話しする事になる。
どぞよろしく。

皆さん経験豊富でこれからの行先や今日までのルート、過去に歩いた山域など、いろいろと情報交換されていた。
私も少し参加。
年齢は全員私より年上のようなのに皆さん元気元気。
74歳の方がいらしたりする。
64歳の方と二人で歩いているそうだが、74歳の方がイニシアチブをとって登りに行こうと尻込みする64歳を引っ張っているそうな。
すごいですな。

もし早く小屋に着いた時の思い描いていた時間の過ごし方は、小屋の周りを散策したり、見晴らしのよい小屋のテラスに座り、眺めを楽しんだり、本を読んだり、風に吹かれ昼寝したり、なんて事。
それも天気が良ければの話。
なんでかいい天気になる事を疑っていなかった。
今から考えると、天気が良ければ写真撮るのに時間を使い、小屋に着くのは遅くなってゆっくりする時間はなかっただろうに。

しかし実際は雨ばかり。
皮肉な事に雨ゆえに途中写真を撮らずサクサク歩いたので、小屋に早く着きゆっくりする時間がたっぷりあった。
雨だから外に出る気にはならず、小屋内で過ごすのだが…。
太郎平小屋は一番早い時間に到着した小屋。
午後の時間をまるまる小屋で過ごす。
二段ベッド状の作りの所で、雨音を聞きながら、思い描いていた場所(眺めの良いテラス)とは異なるが、割り当てられた寝床で本を読み居眠りして時間を過ごした。

持って行った文庫本は江戸の料理人の物語、時代小説である。
日常からとても離れた場所で、時間的にとても離れた場所の物語を読む。
小説の世界から現実に戻っても、そこは日常ではない。
非日常の現実×虚構。
これぞ究極の非日常の世界への浸り方か。

この日は写真たっぷり

2013-08-17 00:04:44 |  初・縦走
スゴ乗越小屋から五色ヶ原へ向かう日は好天に恵まれた。
山中にいる間、晴れたのはこの日のみである。
二日間雨の中を歩いたので、前夜まで翌日の天気は期待していなかった。
が、朝焼けが見えるぞとの声に目を覚まし、カメラを手に外に出ると、おー、晴れてる。


<朝焼け>


朝食を食べ、出発。
カッパはザックの中。
シャツ一枚で歩く気持ちよさ。
うわ、焼けそうな日差し。
眺めはスッキリ。
右手に黒部川を挟んで隣の峰の稜線が間近。
こんな場所を歩いていたのね。

<これは左手の景色>


スゴ乗越の残雪の上を越え、スゴの頭への急坂を上る。
この後の越中沢岳の上りが今回の縦走コースで一番の急坂で、事前調査時に要注意のポイントとしてチェックした場所の一つだったが、このスゴの頭までの上りもしんどい。
岩にへばりついて登る。

<これは道である>


急登にプラスして嫌な要素が加わった。
薬師岳では茶色かった足元が、花崗岩の白黒に変わったのだ。
花崗岩は岩である内は滑りにくく歩き易いが、風化して崩れると丸い粒の砂礫になるので、ズルズル滑り嫌いな岩質なのである。
滑らないよう脚に変な力が入り疲れる。
縦走路はスゴの頭のピークは通らず、ピーク下の広場が最高点。
そこで小休止。

<登山道に影を伸ばしてみた>


振り返ると薬師岳が大きい。
昨日はあそこを歩いていたのか。
事前に見えなくて良かったかも。
今日歩いてきた道が一望できる。
上の写真の上端中央少し左にある赤い点がスゴ乗越小屋。
そこから右下へ下り、写真中央右の白い残雪のあるところがスゴ乗越。
そこからこの足元までの上り。
昨日の行程も含め、こうして見ると感慨深い。

<越中沢岳への上り>


スゴの頭からいくらか下り、その後いよいよ越中沢岳へ取り付く。
ここも変わらず花崗岩の山。
ザレた急斜面が立ちはだかる。
足元は登山靴で踏みしめる度ズルリと滑り全く安定しない。
上を見ると増々斜度が増し、あんなとこ登れるの?
と、ここで気が付いた。
道しるべの◯印はどこだ?
行く先に無いという事は登山道でないという事だ。
少し戻ると案の定左手に◯印があった。
危ない危ない。
あのままもう少し上っていたら、降りるに降りられず、無理して滑落なんて事になりかねなかった。

<スゴの頭と薬師岳>


また後ろを振り返る。
上の写真のでかい花崗岩は一つ前の写真の突き出た岩。
左上の緑の山がスゴの頭。
その右肩の茶色い部分が小休止した広場。
右上の雪を抱いた山が薬師岳。
これが縦走というものかぁ 、と実感した景色だった。

<越中沢岳山頂>


ようやく越中沢岳山頂に到着。
いやいや、お疲れお疲れ。
難所は越えたのでこれで一安心。
お腹も空いたし、ここで大休止。
お昼にした。

<山頂でくつろぐ>


天候の悪い時は山頂でゆっくりする気にはならないが、お天気良い日に山頂で食べるお弁当に勝る食事はそうはない。
食後は山座同定。
背後は薬師岳に雲ノ平、笠ヶ岳、水晶岳、右手には烏帽子岳、針ノ木岳、左手には弥陀ヶ原、そして行くてには五色ヶ原、立山、剱岳。
絶景かな絶景かな。

<行くて>


そうしてゆっくりしていたら、徐々に雲が出てきた。
薬師岳の上空にはレンズ雲がかかり、立山の手前に雲が流れ、弥陀ヶ原の上にぶ厚い雲が浮かぶ。
スッキリとした眺めもここまでかな。
出発する。

<ヨツバシオガマかな>


越中沢岳の北側の斜面はなだらかで、なんの憂いもなくポクポクと歩く。
その日最後のピークである鳶山を上る頃には稜線を越えてガスが流れてくるようになった。
心地よかった風も冷たく感ぜられるように。
自然と足が速くなる。

<鳶山山頂から五色ヶ原>


鳶山から後は下るだけ。
五色ヶ原は湿原全体にお花畑が拡がっているのかと思ったが、花が多かったのは鳶山から下る途中だけで、湿原に下りきってしまうと突然花がなくなった。
生えてはいるが、時期が遅かったよう。
すっかりガスに巻かれ、五色ヶ原山荘に到着。

<五色ヶ原上部のお花畑>



サンダーバード号で湖西を行く

2013-08-13 22:32:19 |  初・縦走
どうも湿っぽい話ばかりなので、ちょっと目先を変えて。
今回の旅の足は鉄道。
サンダーバード号で富山まで。
サンダーバード号ははるか号みたいな白く四角い顔をしていた。
下あごが出てた気がしたのだが、あれは前の型だったのだろうか。

サンダーバードと聞くとどうしても人形劇の国際救助隊をイメージしてしまうので、勇ましいイメージがある。
けど、日本語にすると雷鳥なんだよな。
雷鳥となると可愛いイメージになる。
いつもこのギャップを考え喜んでいる。
でも実はサンダーバードの名は立山なんかにいる雷鳥とは違う別の空想上の鳥が由来らしい。
知らなかった。
富山に行く特急なんだから、実在する雷鳥にしとけばいいのに。

そうそう、今回縦走中、薬師岳で3度雷鳥を見かけた。
内2回はつがいだったから計5羽。
登山道脇のハイマツ林って言うと変だけど、その縁に普通にいるから驚く。
体長20cmくらいで丸々としていてかわいい。
雄なのだろう、眉毛が真っ赤で凛々しかった。
2mくらいしか離れていないのに逃げようとしない。
少し観察してそっと離れ先に進んだ。

やってきたサンダーバード号は12両もつなげていた。
びっくり。
そんなに需要があるのだろうか。
切符を買ったのは出発の前週になってからで、満席だったらどうしようと思ったが、窓際の席がとれた。
夏休み中とはいえ、日中走る便だから利用も少ないのかな、と思っていた。
本当に少なかった。
指定席車両は一割くらいしかうまっていない。
自由席が混んでるのかな?

サンダーバード号は湖西線を行く。
なかなか結構な乗り心地。
新幹線以外の特急電車に乗る機会はどんどん少なくなる。
約3時間の旅を楽しんだ。
右には琵琶湖、左は水田の緑、その向こうに比良山地の青い山。
水田を覆う緑の葉が風に吹かれて濃淡を作っている。
なんでかその日はお天気もいいし、夏の景色だ。
それではと、お昼にしますかな。
駅弁は近江牛のすき焼き重にしようかと思ったが、150円ケチって神戸焼すきやき弁当にした。
神戸牛とは書いていない。



列車旅、いいですな。
新幹線だとあまり旅情は感じられないけど、特急電車は景色が近い。
長距離を移動するというのもいい。
座席でじっくり車窓の変化を楽しめる。
あ、眠くなってきた。
勿体無いけど少し眠ろう。
福井から金沢の間を、うつらうつらした。

一眠りすると、旅の興奮も少し落ち着いた。
もうすぐ富山駅。
気持ちよい時間だったので、早く過ぎてほしくないけど、旅の序章は終わろうとしている。