3度目の・・

2010-02-27 01:24:27 |  乗鞍話し
乗鞍岳のお話の続き。

当然また訪れたのですが、それがいつだったか、判然としません。
たぶん翌年の夏休みでしょう。
旅する事の楽しさは以前から知っていましたが、夏の信州を一人で気ままに旅する魅力を初めて知って、翌年再び行く機会があればそれを逃すことはないはず。

避暑地の一人旅・・。
その時々の気分で自由に組み替え可能な旅程。
下界の蒸し暑さを逃れ、涼しい風が通る車中でまどろむ幸せ。
本を読めば、物語をよりビビッドに語りかけてくれる。
こんな楽しさに加え、今度こそ晴れた日の眺めも満喫するのだと、勇んで行ったはずです。

この頃から記憶が混沌とし始め、ひとつひとつの出来事がどの年のどの旅のものなのか区別できません。
現在から見れば遙か昔の若かりし頃、連年同じ場所で体験した記憶。
混ざってしまっても仕方ありませんよね。(自己弁護
今回のエピソードは2回分くらいの旅の出来事が混じってる可能性大と見てお読みください。
ご容赦。


3度目の正直。
この年、ようやく晴れてくれました。
また乗鞍スカイラインから畳平へ。
晴れてたので景色を楽しんだはずなのですが、残念ながらまったく記憶にありません。
後記しますが、乗鞍スカイラインを走ったのはこの時が最後。
3度走っているはずですが、その内2回は霧の中、視界の通りぼやけた印象しか残らなかったようです。

さて畳平からの眺め、晴れた日のそれはなんとも素晴らしい。
ちょっとした高台となっている富士見岳に遊歩道を歩いて登ると、北方に西・前・奥の穂高岳と槍ヶ岳の岩峰が灰色の山肌を横に連ね、なんてぇ所だと思わせる眺め。
東に目を転じれば、重畳たる山並みが見下ろせる。
絶景かな絶景かな。
手前の山の緑が奥に行くに従って青を濃くし、藍色から水色へと移るグラデーションの美しさが泣ける。
いやもう最高です。
この山の重なりの規模は今まで私が訪れた山中で乗鞍岳が一番です。
(あくまで私が訪れた山中で、です。)
こんな景色が白い霧の向こうに隠れていたのね。
あきらめずに訪れてよかった。

西側真下にお花畑があるというので、そこへ行って見ました。
緑の斜面が両側に立ち上がる谷間に平地があり、木道がぐるりと一周設置されています。
お花畑?
ただの草地じゃん。
当時の印象は確かこんなだったはず。
花があまりにも小さく地味で、目に写らなかったと思います。
今なら嬉々として写真撮影してるんでしょうけど。

そこを歩いていると同じ年頃の男女のグループに声を掛けられました。
「一人旅ですか。」
「はいそうです。」
「私たちも一人旅のグループなんですよ。」
「は?」
各人は一人旅でここを訪れ、私に声を掛けたように話す内、一緒に行動するようになったそう。
折角の一人旅なのに、やはり人恋しいんですかね。
かく言う私もちょっと一緒に歩きつつ話してしまう。
聞くところによると、乗鞍岳の本当の山頂へは往復2時間くらいで簡単に登れるらしい。
ふーん、時間もあるし、行ってみようかな。
彼らは乗鞍岳を南に下ったペンション街にあるユースホステルに泊まるとの事。
今晩の宿が決まっていないなら来て見てはどうかとお誘いを受ける。
料金も非常に安いらしい。
きっと行きますと約束して別れ、山頂へ登って見ました。
女性のお誘いには弱い。


<ぶちっ>

ぶつ切りですみません

2010-02-21 00:16:18 |  乗鞍話し
2度目に訪れたのは、10年以上経過した後、社会人になってからでした。
夏休みに長期休暇を取ることが推奨されるようになり、1週間休むのはいいけど趣味の無かった当時、あまりに時間が有り余り、途方に暮れ、それなら旅行に出てみようと思い立ち、小学生の頃訪れた信州をもう一度巡ってみようと出かけたのです。
この時も2泊3日だったかな。


白い河床が印象に残る木曽川。真夏の強い日差しを反射させ、まだ旅慣れぬ私を変わらぬ白さで迎えてくれました。
車で木曽路を北上し、薮原から国道19号を離れ、より山奥へと入っていきます。
途中林の中に別荘地があり、前に来たときログハウスの喫茶店に寄ったのを思い出しました。
店先に水受けがあり、冷たそうな水が導水管から落ちて、透明な水面に浮かんだ青いリンゴをくるくると回していたっけ。
走り進める内、現れる峠のゲートや茶店の佇まいに記憶が刺激され、
「ああ、ここはこんなだった。」
「この角を曲がったんだった。」
「このトンネル変わってないなぁ。」
と懐かしさの嵐です。

初日は白骨温泉付近の道端に車を止め、夏の深緑が作る陰の下、斜面を流れ落ちる小さな滝から吹き寄せる涼しい風に、それまでの興奮の疲れをなだめられ、気持ちよく昼寝したのがメインイベントでした。

その日は平湯温泉の観光案内所で宿を取り宿泊。
旅館に一人泊まるのは初めて。
晩飯は食堂で、グループや家族、カップルで食べている他の宿泊客の中、一人豪華な夕食を食す。
さすがにこの時は寂しかった。
(今は全然平気なんだけど・・)
でも食べるものは食べる。
朴葉味噌がおいしかったッス。

部屋に戻ると八畳間の真ん中にポツンと布団が引かれてました。
・・なんか落ち着かない。
有り余る空間に囲まれて就寝。
たびたび目が覚めたように思う。


さて二日目、ようやく乗鞍岳のお話。
乗鞍スカイラインのドライブを楽しむ予定にしてたのです、が。
昨日と違いその日は
この状況で上っても上の方は雲の中なのは明らか。前回経験済みです。
天気が良くなるのを願って、スカイラインへの道を少し上ったところにある広い駐車場に車を止め、喫茶店で時間を置くことにしました。

夏休みとは言え平日だったからかお店は空いていて、半分外に張り出した造りの窓際のいい場所を一人で占めて読書を。
開いた窓から少し肌寒いくらいの山の空気が流れ込んできます。
本から目を上げれば窓外には山の木々。
後からお客さんが入ってくることも無く、誰に邪魔されること無く一時間近く落ち着いた時間を過ごすことができました。

結局天気は回復せず、仕方なく出発。
中腹辺りからガスが漂い始め、山上はやはり雲の中でした。
なかなか山で良い天気に恵まれるというのは有り難いのだ、ということを感じたものでした。

さて、白一色の駐車場に車を停め、レストランで食事して、土産物をなんか買ったのだと思います。
さすがに2700mの山上、日が差さないこともあって寒い。
なんにも見えないし、山を歩くつもりも元々無かったので、そうそうに車に戻りました。
すると、!!
ライトが点いてる・・
光はすでに弱々しい。
あちゃー、これはダメだな。
一応セルを回そうとしましたが、ピクリとも動きません。
タハハ、どうしよう。
その車は家の借り物で、自身はJAFに加入しているわけでなく、当然ブースターケーブルも持っていない。
誰に助けを求めようか。
ホテルか土産物屋の誰かにお願いしたら助けてくれるかしらん。
と思い歩いていたら、道路公団かなにか正式名称は分かりませんが、道路を維持管理する組織の小さな事務所が目に入りました。
ここの人ならブースターケーブルも自前のを持ってはるでしょう。
扉を開けるとお年を召した作業着姿の方が一人。
私が何をしに事務所を訪れたのか分からないようで、助けてもらえないか3回くらい訳をお話して、ようやく理解してもらいました。
ケーブルはあるが積んでる車は今パトロールに出ているとのこと。
帰るまで待ってろと言われるので、急ぐ旅でもなく、優柔不断な若者だった私は言われるがまま、事務所で待たせてもらうことにしました。

事務所といってもデスクが並んでいるわけでなく、山小屋の中みたいでなんにも無かったように思う。
折りたたみ椅子を勧められ、石油ストーブに当たりながら子一時間くらいそのおっちゃんと他愛ないことを話して時間を潰しました。
しかし真夏にストーブに当たるとは思はなんだ。
ようやく、パトロールから4tトラックが帰ってきました。
パトロールに行っていた方におっちゃんが説明してくれ、トラックのバッテリーを繋いでエンジン始動。
いやいやよかった。
変なことで強烈に記憶に残る旅となりました。
お礼して山を後にしたのでした。


 ・・

当初予定ではその日に帰る案もあったのですが、なんだか帰りたくなくなり、まだ休みもあるのでもう一日旅を続けることにしました。
翌日は立山へ。
そこも霧の中でした。
やれやれ。
その話はまた別の機会に。

私が愛する山域

2010-02-18 01:42:59 |  乗鞍話し
昔の旅のお話、第2弾を。

今回は少し趣を変えて、お気に入りの山とその周辺の話を書きたいと思います。
その山とは、今の私の山好きの大元、根源となった山、乗鞍岳です。
北アルプス南端の観光地としてポピュラーな方の乗鞍岳です。
これまで数え切れないほど訪れ、その度に気持ちの良い時間と空間を提供してもらいました。
訪れた回数を数えるのに両手足でも足りないくらいでは。

初めて訪れたのは遙かウン十年昔、小学生の頃、親に連れられ夏休みに遊びに来たのでした。
初めての2泊3日の旅。
車で信州を訪れ、上高地や穂高ロープウェイ、諏訪湖を巡る。
登山しに来たわけではなく、普通に観光地を見て廻る旅行の目的地の一つでした。
今はマイカー規制されて自家用車では上れなくなりましたが、当時は畳平の駐車場まで行くことができました。
車でいける日本最高所だったと思う。

その時は乗鞍スカイラインを上りました。
あいにくの曇り空、山は雲の中、真っ白な霧の中を走りました。
こんな濃い霧を見るのはこのときが初めて。
視界はほんの10M程。
山にまだ興味は無かったので、その体験だけで結構楽しめました。
我が家の自家用車はトヨタのパブリカ。
車内で、「なんにも見えなーい」って喜んだように思います。
助手席に陣取り、シートベルトなんて締める習慣の無かった当時、身を乗り出してフロントガラスの向こうを食い入るように見ていたはず。
駐車場で降りて、土産物屋でキーホルダーを買ったはずですが、その記憶はなし。
ヘッドライトの光が拡散する白い霧と道路のアスファルト、路肩の土と緑の光景しか残っていません。