晴れの日

2023-07-10 06:22:55 | 山行
山小屋に戻り、朝ごはんをいただく。
朝も暖かい作りたてのお料理、焼いた魚の切り身が出てきた。
その日は体調良くおいしくいただいた。
食後、寝床を片付け、荷造りして出発だ。
食事前に仙丈ヶ岳山頂へ登ったので、この後は下山するだけ。
登ってきた道をそのまま辿り下る。
そうだ一ヶ所だけ、小仙丈ヶ岳については巻道を通らず山頂を経由した。
前日と違い遠くまで見晴らせる素晴らしいお天気で、地図を取り出して周りの山の山座同定を楽しんだ。
お天気とルートの他、前日と違うのは登山者の数。
早いうちにすれ違った人は、昨晩から北沢峠の山小屋かテント場に泊まり登ってきたのだろう。
後から後から続く人達は朝一のバスで到着した人達か。
前日とは比較にならない沢山の登山者とすれ違った。
以下、下山時に撮った写真。

<仙丈小屋から東の稜線への上り>


<なだらかな馬の背と右上は鋸岳>


<仙丈小屋を振り返る。
 昨日はガスに包まれこの位置からでは見えなかった。>


<キバナシャクナゲがたくさん咲いていた>


<小仙丈ケ岳へ。
 奥の青い山は左が甲斐駒ケ岳、中央から右へ早川尾根、右端はたぶん地蔵岳。>


<カッコイイ岩場>


<東側の眺め。
 一番奥の青い山は富士山、その右は北岳、その右が間ノ岳。
 日本で一番、二番、三番目に高い山の揃い踏み。
 山座同定に使った地図はこの北岳、間ノ岳を縦走した時に買ったもの。
 2013年版だったので10年も前だったかと思ったが、ブログ記事を見返すと2014年の秋だった。
 その時は向こうから仙丈ヶ岳を眺めたのだろう。>


<昨日は左の巻道で楽をした。
 今日は右の小仙丈ケ岳へ。>


<小仙丈ケ岳山頂>


<小仙丈沢カールと仙丈ケ岳>


<西側の眺め。
 中央奥はたぶん乗鞍岳。
 この左には御嶽山と中央アルプスが、右には北アルプスが同じように見えた。>


<行く手には甲斐駒ケ岳、左奥は八ヶ岳、右奥は秩父の山か。>


<登山者がやってくる>


<北沢峠のテント場。
 その左手上の谷まで降りる。>


<再び樹林帯へ>


<バス停横のお花畑で発車時刻待ち>



初めてのヘッドランプ

2023-07-08 07:45:15 | 山行
寝苦しい夜をやり過ごし、明け方に目を覚ました時、そろそろかなと時計を見ると午前3時半過ぎだった。
日の出の時刻は4時20分頃だから、ちょうどよい時間に目が覚めた。
体調が戻っていれば朝食の前に頂上に登って日の出を拝もうと思っていた。
起き上がっても、頭痛も気持ち悪さもない。
大丈夫そうだ。
暗い中ダウンジャケットを着込み、ヘッドランプの光を手のひらで絞って足元を照らし、階下に降りた。
登山靴を履いて外に出ると、ほんの少し明るくなりかけ。
ガスはまだ引いておらず周りは霞んでいるようだ。
山頂に着く頃には晴れてくれるのを期待して歩き出す。



ヘッドランプは登山を始めた当初に買い揃えた奴で、毎回山行きの時はもってくるのだが、頭に巻いて山を歩くのは多分初めてだ。
ザレた足元をうっすらと照らしてくれる。
小さいランプだが意外と見えるもんだ。



東の方角なのだろう、雲間に明るい部分がある。
仙丈小屋から仙丈ヶ岳山頂までは20分。
日の出に間に合うかと気が急いて足の運びが早かったのか、息が切れ出した。
ペースを落とす。



峰の南側から冷たい風が吹き上げてくる。
登山道は峰の北側にあるので、背丈を超える岩の横に入ると風はピタリと止んで助かる。
徐々に明るくなってきた。
ガスも引き、西側には白い雲間から青く沈む伊那の町の光が見えるようになってきた。



東の空はまだ雲が覆っていたが、ピンク色に染まり出した。
一ヶ所小さな雪渓をトラバースして、山頂に到着。
昨日はどうなることかと思ったが、無事到着できて良かった。
風が当たらぬよう岩陰に座り、日の出を待つ。



日の出は雲の中からだった。
それでも下側が切れていたので、山の稜線から出てきたところが拝めたのだろう。
太陽は時間と共に丸くなり、少し潰れた楕円形の輪郭がはっきりと視認できた。



日が昇るに連れてガスは晴れていき、昨日は窺い知ることの出来なかった辺りの様子が明らかになってゆく。
天気が悪いままだったら、こんな景色に囲まれていた事を知らずに降りねばならないところだった。
日の光が黄色くなるまで眺めて、小屋へと戻った。




高遠の町

2023-07-06 07:03:08 | 山行
時を少し戻し、前日の高遠町でのこと。
旅の初日が移動だけではつまらないから、途中で観光できるところはないかと探していた。
大阪から北沢峠まで、電車とバスで行くのにもっとも近いのは、
・新幹線で名古屋まで
・特急「しなの」で塩尻へ
・中央東線と飯田線で伊那北、または伊那市まで
・JRバス関東で高遠へ
・長谷循環バスで仙流荘へ
・南アルプス林道バスで北沢峠へ
と思っている。



この移動中の観光地として真っ先に思いつくのはやはり高遠。
高遠といえば高遠城址の桜が有名だ。
今は桜の季節ではないから、城跡を城跡として見学してはどうだろう。
ガッツリ見学する時間は取れないが、少しくらいなら見て回れるだろうと思っていた。



しかし、事前の調査不足であった。
JRバス関東のバス停が高遠城址から結構離れたところにあったのだ。
高遠で一番の観光地なんだから、バス停はその近くにあるものと勝手に思い込んでいた。
それにこの先、山で食べる糧食を買っておく必要があるのだが、バス停近くにコンビニ、スーパーが見当たらない。



当てずっぽうで歩いて見つかるとは思えない雰囲気で、どうしようと思っていたら観光案内所を見つけた。
聞いてみると歩いて20分ほどかかる場所にしかないという。
行って買って帰ってくるだけで高遠での残りの滞在時間はほぼ使い果たしてしまう。



つまらんなあと思いながら歩き出したが、コンビニへの往復の道中で通り抜けた町は意外に被写体に溢れていた。
古い建物と新しい建物が入り混じった町だ。
観光案内所でもらった地図で歩く道は、こんなことでもなければ歩くことのなかった道。
城跡見学を町並み見学に入れ替えて、高遠観光とした。




外のベンチでビールを一杯、とはいかず

2023-07-04 06:25:47 | 山行
仙丈小屋は小降りな山小屋。
同じような髭を生やした同じような背格好の二人のお兄さんが管理していた。
受付してもらい、注意事項の説明を受け、寝床の番号を教えてもらう。
小屋は三階建て。
一階には外から入る昼用トイレがあり、それ以外のスペースは小屋の維持管理用設備に使われているよう。



入口は階段を登った二階で、受付と小さな売店があり、土間にテーブルと椅子とストーブがある。
ストーブは薪ストーブでかっこいい。
その左手に厨房。
奥は畳敷きの休憩スペース兼食堂。
本棚に漫画がたくさん。



三階には夜用トイレが、これも外から入る場所にある。
寝床も三階で、その日は9人宿泊したようだ。
一人一畳分くらいのスペースがボードで区切られていた。
頭の部分が盛り上がったマットが敷いてあり、毛布は三枚。
持参したインナーシーツを毛布と身体の間に敷いて寝るよう言われた。



ザックから荷物を出して就寝用体制を作り、二階に降りた。
夕食は17時からで、まだ2時間弱時間がある。
暇を持て余して外に出るが、相変わらず辺りは真っ白。
足元の花しか被写体にならない。
体調回復したと思ったのだが、花を撮るのにしゃがむとやはり頭痛がする。
小屋に戻る事にした。



二階の休憩スペースの畳に座り壁にもたれていたら眠くなり、変な格好でうつらうつらした。
ふと目を覚ますと、とっても気持ちが悪い。
夕食、喉を通るかな。
テーブルに配膳された料理は作りたてで暖かく美味しかったのだが、こってりしたおかずは食べきれず残す事になってしまった。
申し訳ない。
まだ17:30だったがもう休むことにし、三階の寝床へ。
明日は回復していることを願って横になった。




さらに不運の追い討ち

2023-07-02 19:09:07 | 山行
北沢峠は標高2030mほど。
ここから3030mを少し超える仙丈ヶ岳まで登る。
歩くのは尾根道だが、原生林の中なので眺望は効かず。
道脇を覆う苔の中に芽を出すツガなのだろうか、針葉樹の芽や草の幼葉を愛でながら歩く。
出発が他の人とずれたので、他の登山者ともほぼ遭遇せず、静かな山行きだ。



長い道のりの途中には何度か少し斜度のある上り坂が続くところがある。
登っても登っても同じような上り坂が目の前に現れ、さすがでっかい山は登りでがあるなあと、息を切らしながら思う。
脚の筋力の衰えはいかんともし難く、上るのに高い場所に足を置くと、脚だけでは体を持ち上げられず、手で膝を押さえる補助が必要だ。



息を切らしては立ち止まり、撮影しては息を整える。
立ち止まる度に何かしら気になる被写体がいるので、いいところで立ち止まるなあといい気になっていたが、たぶんどこで立ち止まっても同じなんだろう。
ほんの少しづつ違う自分を魅了する存在で、周りは埋め尽くされていたのだ。



峠を出発した時には日の差していた天気が崩れ出した。
ガスが漂い始め、小さな雨粒が落ちてきた。
標高はどんどん上がっていくので雨が止むことはないだろうとカッパを取り出し着込む。
コースのちょうど中間地点となる大滝頭に到着。
標高が高くなり周りの木々も段々と小さくまばらになってきた。
森林限界が近そうで、雨を遮ってくれる木々があるところでお昼ご飯とした。



ご飯を食べるのに止まってる時間はコースタイムに入っていない。
食べ終わってすぐに出発。
エネルギー補給はしたが、足の疲れに即効性はなく、息が切れる間隔も短くなる。
森林限界を過ぎ、急に周りの見晴らしが良くなった。



といっても近くの景色は見えるが、遠くはガスっていて真っ白。
あるはずの隣の峰は時々ちらりと覗く程度でほとんど見えない。
行くてはハイマツに覆われた丸い山塊だ。
雨はいつの間にか上がっていた。



ここにきて息がますます苦しくなり、足元に咲く花を撮ろうとしゃがむと頭痛に襲われ、立ち上がると立ち眩みと吐き気が通り過ぎる。
むむ?これって高山病の初期症状ではないか?
気分の悪いのをやり過ごししばらく頑張ったが、とうとう立っていられなくなり、道端の岩の上に座り込んでしまった。
しばし呼吸を整える。



じっとしているとしんどくはないが、立ち上がればまた気持ち悪くなりそうだ。
こんなことは初めてだ。
暑くて気持ち悪くなったことはあるが、ここまではっきりした高山病の症状は経験したことがない。
どうしよう。
山を降りることもできるが、宿泊予定の仙丈小屋まであと一時間くらいで、そちらの方が近い。
もう少し登ってみる事にする。



縮んでしまったような肺に空気を送り込みつつゆっくり歩いていくと標識が現れ、小仙丈ヶ岳の頂まで登らずとも済む巻道があった。
ガスってなにも見えないから頂上を通過する必要はなく、ありがたく巻道で楽させてもらう。
上り坂から解放され、平坦な道を歩くようになると呼吸はだいぶ楽になり、これなら小屋まで行けそうだ。



もう上りは無いのかと思ったがそうは行かず、鎖の付いた岩場を越えたりしなければいけなかったが、ふらふらすることは無くなった。
写真撮る時頭痛はするが体調は回復傾向。
道が下り坂になり、そろそろ山小屋に着くのではないかと歩いていると、前方から話し声が聞こえてきた。
すると薄っすらと山小屋らしき建物が、白いガスの向こうに見え出した。
やれやれ、ほっとした。
到着期限の15時に20分ほど早く到着。



仙丈小屋から仙丈ヶ岳山頂までは20分とあった。
当初予定では小屋にザックを置いて、山頂往復するつもりだったが、この体調では無理だろう。
数十m先の山小屋も見えないガスの中だ、どうせ何も見えない。
明日の朝、体調と相談して登ることにしよう。