太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

「顔布」に思う

2012-06-20 08:47:34 | 日記
日本の美容院でシャンプーしてもらうとき、中途半端な大きさの布を顔に乗せてくれる。

大人になって以降、私の記憶がある限り、大抵の美容院で顔布があった。

私はあれが苦手だった。



私が今、ハワイで行っている美容院は、東京でお店を持っている人がホノルルに出しているサロンで、

移住する少し前から、東京のその店に替えた。

余談になるが、

日本以外の国に住むにあたり、美容院問題は切実である。

白人の髪質と東洋人のそれは、あまりに違いが大きくて、よって求められるものも違ってくる。

ボリュームを出してナンボの世界にある美容院で、「重いから梳いてください」という注文は、フランス料理屋でラーメンを注文するのに匹敵する。

同じ東洋人だから、韓国人や中国人の美容師ならいいかというと、そうばかりでもないらしい。

とにかく手先の細かいことをやらせたら、日本人には日本人が一番いいのである。



さて、その美容院では、顔布がない。

シャンプー台の椅子のリクライニングする角度が緩く、それほど上体が仰向けにならないため、美容師と顔が近くならないからじゃないかと思っている(今度聞いてみようと思う)

先日、その美容院でシャンプーしてもらっているとき、突然あの「顔布」のことを思い出した。

あれは、非常に日本的なものなのだと、しみじみ思う。



こちらの地元の美容院に行っている友人によれば、仰向けに近く椅子が倒れて、美容師と顔が近くなっても、ここでは顔布は見たことがないという。

あの布の存在する理由って、

お客にとっては、 見られたくないものを見せないため、美容師にとっては、見てはいけないものを見ないため 。じゃなかろうか。

そういう配慮は、日本独特かもしれないと思うのだ。



相手との距離を保つ、ということに関して、日本人は大変気にする。

こちらから侵害しない、相手にも侵害させない。それは電車の中で多くの人が居眠りをしているという光景を思い出させる。

ほんとうに眠くて寝ている人もいるだろうが、私には、あの人たちが見えない繭の中にすっぽり入って、自分の領域を守っているようにみえる。

エレベーターで乗り合わせた人と言葉を交わす確率は、日本では少ないと思うが、こちらでは大抵何か一言二言話す。

他人が、自分のオーラの中に入った時、人は不快だと思うのだと聞いたことがある。

それが本当なら、美容院でのシャンプー時の顔の距離を、日本人が気にしないわけがないのだ。



私は、そういう日本人の気質が嫌いじゃない。

嫌いじゃないが、あの顔布は好きになれない。

あの布を乗せられると、洗濯洗剤の残り香を嗅ぎつつ、あまり鼻息が荒くならないように気をつけたり、

鼻が詰まっている時には、口で息をしたり、見えない分、美容師の口臭やコロンの匂いに敏感になったりする。


なにより、見られたくはないが、しかし 「見せてはいけないものが顔布の下にある」 ということが、遺憾である。

気にしていることを明らかにされると、気にしているということが、かえって失礼に感じることだってある。

それは、ハゲ散らかしている人に、かたくなにハゲの話題を避けるような感じかもしれない。

いっそのこと、最初っから全部見せて、見られてしまったほうが、ずっと気楽のようにも思う。






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