太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

電話片手に何する人ぞ

2019-07-14 16:35:06 | 日記
バス停で、バスの中で、
買い物しながら、職場の休憩中に、
携帯電話を眺めていない人を探すほうが難しい。
レジでお金を払いながら、その合間にも電話をいじっている人もいる。
私の職場では、休憩中に電話を眺めていないのは私一人だ。
いったい彼らは電話で何をしているのか。
私もスマートフォンを持っているけれど、朝起きたときと
夜寝る前にあけるぐらいだ。

日本に行って電車に乗ると、
向かい側の座席に座っている人達が同じ格好で電話を眺めている様は
壮観ともいえる。
立っていても、うまくバランスを取りながら電話を眺めている。
いつからこんなふうになったのだろう。

東京で短大に通っていたとき、
学校は住まいから遠かったので電車に乗る時間が長かった。
山の手線、中央線と乗り継ぎ、さらに私鉄に乗り換えた。
その時間を、私は人を眺めて過ごしていた。
私が今のように読書をするようになったのは30を過ぎてからで
そのとき本が好きだったら、ずいぶんたくさん本を読めたのにと思う。
当時は携帯電話などなかったから、
人々は居眠りするか、本を読むか、車窓を眺めるかしていた。
私はそういう人たちを眺め、勝手に命名するのが好きだった。

たとえば、
ごま塩頭の60歳ぐらいの男性。
日に焼けたごつい顔に、目じりのシワが良い感じに刻まれている。
『徳田安則』
サラリーマン風の男性、30代半ば。銀縁のメガネに横流しの前髪。
意外と細くて長い指を組んで居眠り。
『牧本 一』
ソバージュにした髪に、濃い目の化粧。
ウォークマンを聞いている、少しきつめのジーンズにハイヒールの女性は20代後半か。
『佐々木彩子』
膝の上に赤いバッグを乗せて、わかめちゃんカットにした髪にパーマをかけた
女性は60代とみた。口は見事なへの字。
『饗庭とみ子』

もうあまりにもピッタリという名前を思いつくと嬉しくなった。
似たような時間の電車なので、時々見覚えのある顔に出会う。
「お、徳田安則さん、今日は開襟シャツか」
なんだか顔見知りになったような気分だ。
命名に飽きると、しりとり。
私のしりとりの最初は、なぜか必ず 徳光和夫。

今は、私はどこにでも本を持ってゆき
時間があけば、本を読む。
他人の名前を勝手につけたり、しりとりをしていた私を
きっと誰かが眺めて異様に思っていたことであろう。