太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

Lineで母に会う

2021-01-07 10:49:31 | 日記
母は、実家から徒歩1分のアットホームなグループホームにいる。
コロナウィルスで、面会できなくなったり再開したり。
今は、会いに行くのは予約制で二人まで、制限時間は15分。
昨日、姉と妹が会いに行くというので、その時間にLINEをすることにした。

日本は午後の1時半、こちらは1日前の午後6時半。
ちょうど夫もいる時間でよかった。

姉たちが入れるのは玄関まで。
母は玄関の上り口で椅子に座り、姉たちと母の間には、床から天井まで透明のビニールでしっかりと保護されている。

1年以上ぶりに見た母は、母方の祖父に目元がよく似てきた。
顔色がよく、おだやかに微笑んでいる。
母は現実と妄想の世界を行ったり来たりしているそうで、姉が実家を売って山梨県に引っ越していることになっていたり、
妹がよそから子供を預かっていることになっていたりするという。
それでも、娘たちのことや、亡くなった父のことはわかっているらしい。

私は母に忘れられることが怖くて、
忘れてほしくないというのは私のエゴだと知りつつ、手紙に私と夫の写真を入れたりしてきた。

「ヒロコさんは・・」

母の口から、私の名前が出たとき、涙が出た。



家にいるより安全で、優しくしてもらえて(実の娘はキビシイものよ)、
私は母が家にいて、毎日デイサービスに通っていた頃よりも安心している。
姉と喧嘩をすれば、姉も母も怒り傷つく。
姉はたまには母を外に連れ出してあげているだろうか、声をかけているだろうか、
気になるけれど、一生懸命にやっている姉に言えるはずもなく、
私にできるのは、なるべくこまめに母に電話をすることだけだ。

父が使っていた個室に母が入ってから1年。
グループホームにいると、こちらから電話がしにくいので、それだけが寂しい。


「あ、そこにお父さんがいるじゃん」

母がそう言って、姉妹の背後を指さした。
「ひー!」
姉妹は驚いてみせたけど、そういう姉妹も私も、夫ですら、それは幻覚ではなく、
本当に父がそこに来ていたのだと信じている。
母がいないと何もできない父は、暇さえあれば母の近くにいるのだと思う。
母にその時がきたときに、さっと迎えにいけるように。


さっぱりとしている母は、父のように感情をあらわにすることは少なかった。
けれど、それは母の内側も同じ、ということではないと思う。
父が亡くなったとき、母は泣かなかった。
清められて、横たわった父に向って母が一言、

「さあちゃん・・・」

と小声で呼びかけて、それで周りにいた人たちがみんな泣いた。
心の中で、母は泣いていた。


昨日、終始おだやかに微笑んでいた母の心を思っては泣けてくる。