それは突然降ってきた。
「炒り豆腐が食べたい！」
我が家の夕飯のメニューが、なんとなくマンネリ化してきて、何か目新しいものがないかなあと思っていた。
日本にいたとき、一体なにを食べていたのか思い出せない。
冷蔵庫をあけたら、アロハ豆腐の固い豆腐があった。豆腐ステーキにしようと思って買ったのだったが、そこに突然、炒り豆腐が降ってきたのだ。
母がよく、炒り豆腐を作ってくれた。
夫と結婚してから、たぶん作ったことがなかったと思う。
人参があり、干しシイタケがあり、豚肉がある。
レシピには鶏ひき肉を使うと書いてあったが、母のは豚肉だったように思う。
青味にインゲンを入れよう。
野菜を炒めて、肉を入れて、豆腐を入れて、味付けをする。
レシピどおりに、醤油大匙１．５、みりん大匙２、砂糖小さじ２にしてみたら、私の味覚の記憶はもっと濃い味で、醤油大匙２、みりん大匙２、砂糖大匙１でちょうどよかった。
少し煮詰めたら、卵を割りほぐして入れ、全体にからめる。
生まれて初めて炒り豆腐を食べた夫の感想。
「ナニコレ美味しい！！！！」
相当気に入ったようで、お弁当にも入れるし、朝食のお供にもする。
すぐになくなり、２回目を作ったほど。
醤油と砂糖の味は、日本の味。
死ぬまで忘れられない、心のふるさとの味なのである。
