貯蔵している清酒を検査するためタンクの呑口(のみくち)を開けて酒を出し、鑑定することを呑切り(のみきり)と言います。
通常、清酒は冬場の寒い時期に仕込まれ、春先に加熱処理して貯蔵に入りますが、この貯蔵中の酒質の変化、火落ちの有無、調熟の度合を調べ、個々の貯蔵タンクの酒質を判定し、出荷の順序やブレンドの組み合わせなどの参考にするのが目的で、現在は7月頃に行われるのが一般的のようです。
まるっきり同じように仕込んだお酒でも、タンクごとに若干風味が違ってきますので、例えば本醸造だけでも何種類も唎き酒することになり、アイテム数が少ない酒蔵さんでもかなりの数を鑑定することになります。
昨日はその呑切りにお招きいただき一路村上へ。お酒を口にするということで今回は電車で移動。
デジカメを持っていこうかと迷ったのですが、目的を履き違えているような気がしないでもないな… と、携帯のカメラで済ませることに。そのため画質はこれが限界ですわ。上の写真は色の具合を忠実に再現できないので単色にて失礼を。
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新商品を出さない酒蔵さんに対して「企業努力が足りない」と仰る方が稀に居られますが、決してそんなことはないのですよ。真面目な蔵元さんほど常に新しい試みに挑戦されたり、研究開発に励んで居られるのです。そうして培った技術を通常の晩酌酒に活かそうと頑張って下さっているのでして、これは立派な企業努力なのですよ。次々と奇をてらったお酒を発売するのも確かに企業努力でしょうけど、それぞれ立場があることをご理解いただけたらありがたいのですが…。
唎き猪口の中に気泡が出来ているのは香りを立たせて嗅ぐためにスポイトで空気を送り込んだ私の仕業。順序的に(最も香りが華やかな)大吟醸の後だったのでこうしないと分かり難いんですよ。もっと鋭敏な嗅覚をお持ちの方ならこんなことはしないでしょうけども。
もちろん他の方々の迷惑にならないように配慮した上での行為ですので。(って自分で思っているだけかも…)でもやった甲斐は大いにありましたわ。思わぬ収穫を手にしましたからね。
語弊があるかもしれませんが、一発勝負の季節商品ならその都度の味わいでも通用します。しかし、「何時飲んでも安定した変わらぬ美味しさ」という非常に困難な目標に向けて、一年中販売されているお酒に心血を注ぐ地味な姿に、私は敬意を表したいです。決して脚光は浴びないかも知れませんが、細く長く、脈々と継承されていくために一番大切なことだと思いますから。