2021年9月20日の朝日新聞が、2020年6月に大阪地裁で「博物館側が大阪市の市有地を更地にして明け渡す代わりに、大阪市は約1億9千万円の土地賃料を免除する」とした和解が成立し休館した「大阪人権博物館」が、建物を解体し更地にする工事を9月末で終了するとの記事を載せた。博物館は再開の目途が立っていないとも。以下、大阪人権博物館がこのような事態に至る経過を、共に「大阪維新の会」所属であった橋本徹氏(当時府知事のち市長)と松井一郎氏(当時府知事)の対応とともに紹介しておきたい。金額は運営補助金額。※印は「ピースおおさか」の状況。
●1985年 9千万円 府、市、解放同盟などが財団法人を設立し、市立小学校跡地に開館(当初は「大阪人権歴史資料館」)。市有地を無償で貸与。
●1995年 1億円 展示テーマを、問題から民族、障害者、性別などの人権問題にも広げた(「大阪人権博物館」に変更)。
●2008年 2億1千万円 橋本徹府知事(位2008年2月6日~11年10月31日)が視察し、「展示内容がわかりにくく、公金を投入する意味を感じない」「差別や人種などネガティブな部分が多い」などと展示内容の見直しを指示。
※「ピースおおさか」は府市の補助金削減。
●2009年 1億5千万円 府市が職員派遣廃止。
●2011年 1億2千万円 児童虐待やいじめ、ハンセン病患者、性的少数者(LGBT)などを展示テーマに加え、小中学生らの体験コーナーを増やすリニューアル。府が900万円補助。
※「ピースおおさか」では「大阪維新の会」の府議らが議会で「偏向した展示物が 多すぎる」と追及。橋下氏が「展示内容が不適切となれば、廃館も考える」と発言。
●2012年 1億1千万円 橋本市長(2011年12月19日~15年12月18日)と松井一郎府知事(2011年11月28日~19年3月24日)が視察し展示内容を再び批判。「1回チャンス与えたのに変わらなかった」と仕上がりに納得せず。朝治武館長は「府側の案を丸のみして対応してきた」と反論。
●2013年 0円 橋本市長が「子どもが夢や希望を抱ける展示になっていない」と府市が運営補助金を全額廃止。橋下市長いわく「人権問題は重要だが、特定団体への減免はおかしい。次の市長が一定の方針を立てて、事業者を公募するのが良いのではないか」と。
●2014年 0円 11月、橋本市長が進める行財政改革の一環で、15年4月から年3400万円(固定資産税など込み)の有償契約を求めたが、財団側は無償の継続か大幅な賃料減免を要求。
●2015年 0円 市が、市有地の無償貸与は3月末で打ち切り、地代など計3400万円の支払いを要求。財団側は支払い能力がないとして拒否。市側は財団側が「不法占拠」の状態で運営を続けているとして、市有地の明け渡しと4月以降の賃料相当の損害金約250万円の支払いを求めて、7月23日に大阪地裁に提訴。橋下市長はこの日の会見で「今までの役割は認めるが、公金で維持する施設ではない」と述べた。財団側は「行政権力による強制的な閉館を意図しているとしか言いようがない」と反発。
5月末、市市民局は教育委員会など関係部局に、学校教育や研修で「リバティおおさか」の使用を控えるよう通知した。のち弁護士の指摘により通知撤回。
※「ピースおおさか」では、4月の改装で、従来の加害展示はすべて撤去された。
(2021年9月21日投稿)