※下記は2020年7月17日に投稿したものに加筆修正し再投稿したものです。
2020年11月に大阪維新の会は、彼らが推進する「大阪都構想」の是非を問う住民投票の実施を予定しているが、5月11日、市民グループ「みんなで住民投票!」が、新型コロナウイルスが終息するまで延期するよう求める陳情書を大阪市議会に提出した。
発起人は、「賛成の人も反対の人も、新型コロナを乗り切るのが一番の課題。落ち着いて議論できるまで住民投票は待ってほしい」と訴えている。
そのような中で、松井一郎(大阪維新の会代表)市長は、「7月ごろ」としていた判断時期を前倒しし、5月30日に、「今の時点では予定通り実施できると判断している」(吉村府知事も同意見)と発表した。
これに対し、6月8日、開業医らでつくる府保険医協会と府歯科保険医協会が住民投票の中止を求めて要望書を吉村府知事・松井市長に提出した。新型コロナウイルスの感染拡大の第2波と、例年11月頃に始まるインフルエンザの流行が重なる可能性を指摘し、市民が都構想について考え、議論する余裕があるのか疑問である。医療体制の整備が喫緊の課題であると訴えている。
8月21日には、吉村府知事は府議会代表質問で、住民投票について、新型コロナウイルスに関する府の独自基準「大阪モデル」で非常事態を示す「赤信号」が点灯しても11月1日に予定通り実施したい考えを示した。
大阪維新の会は、「大阪都構想」実現を、「市民のため」としているが、本当にそうだろうか?これまでの維新の会の姿勢を観察してきたが、私にはそうは思えない。「市民のため」と言っても実のところそれは「二の次」で、市民(有権者)の耳に心地よい「建前」に過ぎず、彼ら大阪維新の会はただ、自身の夢(妄想といってよいが)を実現する事によって大阪の政治において「主導権」を掌握し続けようとする事だけしか考えていないと言ってよい。その事はこれまでの大阪維新の会の市民(有権者)への対応に如実に顕わとなっているからである。
例えば、松井氏は、「都構想」について市民から意見を聞く公聴会(出前協議会)について、2019年12月11日、「そもそも反対の意見は時間も限られているのでご遠慮いただきたい」「出前協議会は中身を聞いてもらうためにある」「最初から反対のための反対を言われたら議論が深まらない。反対集会は別でやってほしい」などという浅薄で非常識で傲慢で市民を愚弄し異論を排除する考えを、主権者市民に対して突きつけていた。
その公聴会(出前協議会)は今年、新型コロナウイルスの関係で延期の末、中止されてしまった。
その代替策として2020年5月22日、府と市の法定協議会は、協議会の委員が「都構想」について意見を述べる動画を作成し、府と市のHPで公開した。
また、府と市の法定協議会は、作成中の「協定書案」の参考にするとして「都構想」について市民の意見を募集し、府と市のHPで公開するとしている。意見は、郵送やファクス、電子メールでとしている。
これでは「大阪維新の会」の手法は、主権者である市民の様々な実情を無視した一方的な手法であると言われても仕方ないだろう。市民の理解がどのようなものであれ関知しないとする姿勢であると言って良く、もちろん「維新の会」はそのような手法に責任を感じてもいないと考えて良いであろう。とりあえず「住民投票」はどんな手法を使っても「勝ちさえすれば良い」(勝てば官軍)のだという考え方なのである。そしてさらに、「勝つためには何をしても良い」「勝てば何をしても構わない」という考え方でもある。
このような姿勢は国会の審議においても表れている。それは5月28日、衆院憲法審査会が、今国会で初めて開かれ、「国民投票法改正案」についても討議されたが、自民党の新藤義孝・与党筆頭幹事が「(改正案)を早急に質疑、採決して結論を得るのは当然の事だ」と述べ、広告規制の議論は採決後に行うという手法を主張した事に対し、日本維新の会の馬場伸幸もそれに同調しているところにみられる。野党は自民・公明・維新の会のこのような手法に反対し、別の手法を主張している。
また、今年11月29日に予定されている大阪府市主催の第10回大阪マラソンについては、吉村府知事は、「実施は無理だろう」とテレビ番組で公表しているにもかかわらず、「住民投票」については「延期」陳情書が提出されようと、何が何でも実施しようとしているのである。
ここで主権者国民にとって大切な事は、「大阪維新の会」の正体を見極め今回の住民投票はもちろんこの先何度も騙されないようにする事である。大阪市民の「お人好し」な人柄を「大阪維新の会」に都合良く利用されないように。
もっとも重要な事は、現在、松井一郎(大阪維新の会)が市長を務める大阪市が示している「住民投票の手続き」(HPで閲覧可能)は以下のように極めて前近代的で民主的でない内容を掲載しているので、その改正を問題提起する事から始めるべきである。
HPには、住民投票は大都市法(大都市地域における特別区の設置に関する法律)に基づき行われるものであり、投票権を有する者は大阪市民有権者です、としている。
そして、賛成の票数が有効投票の半数を超える場合、大阪市が廃止され特別区が設置されます。
反対の票数が半数又は半数を超える場合、特別区は設置されない。
としている。そしてそのあとに、最も重要なルールを載せている。それは、
大都市法における住民投票は、「投票者数にかかわらず、成立します」という内容である。つまり、投票者が100人であっても、賛成反対のどちら側であろうとも、そのうちの半数(つまり、50)を超えた側に決定するとしているのである。大阪維新の会はその決まりに「故意に」触れようとせず、投票の実施の成立を急いでいるのである。「成立しさえすれば後は自分たちのやりたい放題」という狡猾で傲慢な考え方なのである。この姑息な詐欺的手法こそが大阪維新の会の常套手段なのである。
このような子どもでもその不公正不公平を感じる非常識なルールで住民投票を実施しようとしているのである。この点こそ都構想実現が市民のためでなく、大阪維新の会自身のためのものである事を如実に暴露している。
もし、「大阪維新の会」が住民投票が取り止めないのであれば、市民(有権者)にとっては有効投票率の規定を作る事こそ重要で急を要する課題である。この有効投票率の規定については憲法改正における「国民投票法」においても規定がないため主権者国民にとって重要な課題である事を忘れてはならない。大阪維新の会も安倍自公政権も詐欺的体質は同じだという事である。
※国民投票改正案「自民、公明、日本維新の会などが2018年6月に国会提出。大型商業施設への共通投票所設置など7項目を盛り込んだ内容」