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韓国人元BC級戦犯(李鶴来氏ら)問題発生は日本政府とGHQマッカーサー(米国政府)双方の目論見に根源、メディアは本気で解決するつもりなら主権者国民に早期解決のための適切詳細な情報提供を

2022-11-22 08:14:59 | 朝鮮問題

 2018年1月15日の新聞に韓国人元BC級戦犯問題に関する記事が載った。法政大学国際文化学部の鈴木靖教授のゼミに所属する学生8人が、学部内のゼミの研究発表テーマとして、ドキュメンタリー作品「戦後補償に潜む不条理~韓国人元BC級戦犯の闘い」を制作する中での学生たちの「気づき」、それは本来日本人が責任を負うべき問題として問われてきた事であるにもかかわらず、その日本人が気づかずにきた事への「気づき」を伝えていた。しかし、メディアがこの問題を解決するために読者を啓発する事を目的にしているのであれば、現状をもう少し詳細に伝える記事にすべきだと思う。

 韓国人元BC級戦犯問題とは何か。神聖天皇主権大日本帝国政府は1910年の「韓国併合」により大韓帝国(朝鮮民族)を植民地として支配し、朝鮮民族には日本国籍を押し付けた。そして、アジア太平洋戦争時には日本軍軍属として徴用した人々がいたが、その人々は日本の敗戦での連合国軍軍事裁判では「日本人」として裁かれた。BC級戦犯で起訴されたのは5700人で、そのうち148人が朝鮮民族で、23人には死刑が執行された。しかし、敗戦直後の占領下の日本政府(自民党系は、朝鮮民族に国籍選択の自由を与えず一方的に「外国人として扱う」と扱いを変更するとともに、1952年4月の軍人軍属援護法やそれ以後の「改正法」においても、援護や補償については、韓国人元BC級戦犯を「外国人」である事を理由として対象外とし、日本人戦犯の扱いとはまったく異なる扱いを続け、その後の自民党政権下で韓国人元BC級戦犯7人(李鶴来氏が会長の同進会)が国家補償を求めて裁判に訴えても認められず現在に至る問題をいう

 なぜこのような事が起きたのか。敗戦直後の天皇を含む日本政府の思惑とその意思を受け入れたGHQ総司令官マッカーサーが代表する米国政府の思惑に基づいた政治的駆け引きがこのような結果を生んだといえる。それは以下のBC級戦犯の処理に関わる法の制定の経過を見れば明白である。

1945年11月25日:GHQにより、軍人への恩給停止命令。「現在の惨憺たる窮境をもたらした最大の責任者たる軍国主義者が、他の多数の犠牲者において極めて特権的な取扱いを受けるがごとき制度は廃止されなければならない」として、軍人恩給に代わる「善良なる市民のための社会保障計画」の提示を求めた。

1946年2月:日本政府による恩給廃止。戦時中に制定された「軍事扶助および戦時災害保護法」も廃止

1947年5月2日:日本政府による外国人登録令(日本史上最後の勅令)制定「日本国籍を有しても(朝鮮民族を)外国人とみなす

1947年5月3日:日本国憲法施行(制定過程においてGHQ草案に存在していた「外国人は、法の平等な保護を受ける」という条文を日本政府が削除した。そして、憲法上の権利が認められるのは日本国籍を持つものに限るという解釈をとり、朝鮮民族は権利保障の対象から除外される事となった)

1952年4月28日:サンフランシスコ講和条約発効。外国人登録法施行「朝鮮人を外国人として扱う」(国籍の一方的剥奪)。韓国人元BC級戦犯は釈放されず、人身保護請求に基づく釈放請求裁判を起こす

1952年4月:日本政府により軍人軍属対象の戦傷病者戦没者遺族等援護法公布

1953年:軍人軍属対象の恩給法復活

1954年:恩給法改正戦犯の刑死も「公務扱い」となり恩給支給。読売新聞報道「東条英機の妻恩給56万円」

1956年:韓国人元BC級戦犯、巣鴨プリズンから仮釈放

1991年:韓国人元BC級戦犯7人(李鶴来氏が会長の同進会)で自民党日本政府に国家補償を求めて東京地裁に提訴

1999年:最高裁が訴えを退ける

2006年:廬武鉉韓国政府が元BC級戦犯の被害(神聖天皇主権大日本帝国政府による植民地支配に基づく被害)を公式に認定

  日本政府は独立後、戦傷病者や戦没者遺族への補償制度を整えた。戦犯にも恩給法により援護措置を講じた。しかし、朝鮮民族など植民地出身者に対しては日本国籍を一方的に剥奪し、恩給支給の対象にはしなかった。つまり、日本政府は、朝鮮民族を、日本人(兵)として利用し、戦犯として罰し、そして、外国人として見捨てたという事である。

 李鶴来氏は17歳で日本軍属の捕虜監視員として南方タイの捕虜収容所へ送られた。日本敗戦により、豪軍により裁判で死刑判決。のち懲役20年に減刑、1956年に仮釈放された。もうすぐ93歳になる。同進会の仲間も残り3人となっている。早期に解決を図らなければならない問題である。

 1999年の最高裁は、韓国・朝鮮人の元BC級戦犯が、深刻かつ甚大な犠牲ないし損害を受けた事を認めている。また、東京高裁判決も、「早期解決のため、適切な立法措置を講じる事が期待されると付言している。つまり司法は、国会や国民に正しい理解と、早期解決を求めているのである。

 また、麻生自民党政権下の2008年に民主党は、最高裁判決を受けて、「特定連合国裁判被拘禁者特別給付金支給法案」を国会に提出したが、衆議院の解散により廃案となっている。メディアが真剣にこの問題を解決しようと考えているのであれば、戦後、歴代の自民党(自民系も含めて)政権がこの問題に目をつぶってきたその事実と体質を、国民に詳細に伝え、国民がこの問題をできるかぎり正確に把握し判断し行動できるように尽力すべきである。現在のような体質の自民党政権が続く限り自民党が自らこの問題を解決する事はありえないからである。(2018年1月25日投稿)

※2020年6月29日朝日新聞「取材考記」が、6月15日に衆議院第2議員会館で、在日韓国人元BC級戦犯・李鶴来氏(95歳)が車椅子で訪れ、「このままでは刑死した23人の朝鮮人の先輩たちに申し訳ない。次の臨時国会で特別給付金を支給する法案を成立させ解決してほしい」と訴えた事を報道した。

(2020年6月29日投稿)

 

 

 

 

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大阪真田山陸軍墓地:保存ではなく墓じまいをし故郷の墓で、誤った戦争の加害者であり被害者として哀悼する事こそあるべき姿

2022-11-20 18:07:31 | 戦争遺跡

 大阪真田山陸軍墓地の墓石の補強工事を始めた。また、これまで保存活動をしてきた人々がいる。しかしあえて言う。この際、陸軍墓地は保存をするのではなく、墓じまいをし、葬られた方それぞれに存在するであろう故郷の墓で親族縁者により弔われるように計らう事こそ現行憲法に基づく政府のあるべき姿である。

 なぜなら、陸軍墓地が整備された経緯や敗戦時における神聖天皇主権大日本帝国政府、特に日本陸軍の対応、そして、日本国成立後の新政府の対応を知れば、上記のように考えても微塵の不思議もないであろうし、誰からも批判される理由もないはずである。

 陸軍墓地(海軍省が維持管理した海軍墓地も各地7カ所に存在)とは敗戦まで陸軍の聖地として陸軍が厳重に維持管理し、清掃も行き届いた、一般人には気軽に立ち入る事を許さない墓地の事であった。陸軍が1871年に全国で最初に設置したものが大阪真田山陸軍墓地であり、その後、全国各地に造られ、敗戦時には80カ所以上(現在44カ所)に存在した。

 ちなみに、大阪真田山陸軍墓地に埋葬されているとされるのは、陸軍創設期に亡くなった兵士をはじめ、西南戦争日清・日露戦争、第1次世界大戦、アジア太平洋戦争における軍人・軍属の戦死者、病死者。5千超の墓石、8千超の方を葬る納骨堂があり、規模は全国最大である。

 しかし敗戦になると、帝国政府陸軍省廃止(1945年12月1日)されるとともに、大日本帝国政府も陸軍墓地の管理を拒否した。そのため、墓地を管理する者がいなくなり、荒れ果ててしまった。さらに、陸軍省が、墓地に関する史料を廃棄し、墓地に関する引き継ぎもしなかったり、敗戦後の新政府も故意に墓地に関する調査をしなかったため、陸軍墓地に関する詳細は一切不明となった。しかし、葬られた方々について今日詳細を知る事ができるのは、NPO法人「旧真田山陸軍墓地とその保存を考える会」の方々の調査によるものである。

 今日、真田山陸軍墓地を維持管理しているのは大阪市である。それは、1946年6月第1次吉田政権が、全国関係自治体大蔵次官・内務次官通知「旧軍用墓地の処理に関する件」を出し、「旧陸軍墓地は都道府県又は地元市町村に無償貸付するものとする」「維持管理、祭祀は地方の実情に応じ、市町村、宗教団体、遺族会等において行うものとする」として一方的に押し付けたためであり、そのため他の自治体同様、大阪市も政府と国有財産無償貸付契約(真田山陸軍墓地の財産所管部署は財務省近畿財務局である)を締結する事となったのである。この事は政府が表立って関わると都合の悪い事を地方自治体に押し付けて政府の目的(戦争の正当化、戦争責任の放棄とともに、天皇に忠誠を尽くし戦って命を落とした人々を護国の神兵として讃え顕彰し、後に続く精神の崇高さをすり込む場として存続させる事。これは靖国神社の果たす役割そのものである)を達成するという狡猾な手法に基づくものだという事である。

 真田山陸軍墓地の実際の維持管理、祭祀について大阪市は1947年、団体を設立、現在は公益財団法人「真田山陸軍墓地維持会」と、「旧真田山陸軍墓地に関する確認書」を交わし、除草・清掃などの環境維持や、墓碑の修復事業や祭祀(慰霊祭)、墓地見学者に対する案内・普及・啓発活動、次の世代に引き継ぐための活動などを委託している。

 そして、2018年11月には、大阪市長であった吉村洋文氏は、安倍首相に対し「旧真田山陸軍墓地の管理・維持保全」に関する要望書を出している。そこには、「本市の無償貸付契約による維持管理で対処する事が難しく、財産所有者である国による抜本的な対策が必要」「もともと国により創設された、国民の生命・財産を守り、その使命を果たすために殉じた方が眠る墓地である事から、当墓地の管理・維持保全は、国の責務であると考えております」として3点を要望している。しかし、ここには「維新の会」の誤った戦争観が明確にうかがえるとともに、憲法の政教分離原則に対する認識の欠如がみられる。それは、

1、行政目的の確立、国の責務の明確化

 国民の生命・財産を守り、その使命を果たすために殉じた方を慰霊する施設であると明確に位置付け、さらに、戦争の歴史を後世に伝えるための史跡として文化財指定を行うなど、「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」と同様に、行政目的と所管省庁を明確にしたうえで、その管理・維持保全の責務が国にある事を明確にする事

2、旧真田山陸軍墓地の計画的な維持保全の実施

 国は、国有財産の管理責任者として、……将来にわたって旧真田山陸軍墓地を適切に管理・維持保全していくために、国の事業として、維持保全計画を策定し計画的に維持保全を実施する事。

3、国・本市・民間団体との役割分担及び財政支援

 ……墓地の管理・維持保全の責務は国にある事を前提として、当該管理・維持保全などに係る必要な部分について、国・本市・環境維持活動を行っている団体それぞれの役割分担を明確にするとともに、国は、本市や民間団体が担う業務に対して財政支援を行う事。       

以上のような内容である。

 現在、この要望書に基づいて、墓地を所管する近畿財務局公費(税金)を使い、公益財団法人「元興寺文化財研究所」と契約を結び墓石の補強工事を進めている。これまで納骨堂の屋根瓦の補修などを実施してきたようであるが、墓石の保全は初めてである。そして、財務局は「今後も関係団体と協議の上、計画的に修繕を進めていく」という。

 しかし、安倍自公政権、財務省近畿財務局のこの動きは、全国に新たに「靖国神社」の支社を造るような敗戦まで国教とされた国家神道のような宗教活動に加担する行為であって、政教分離を原則とする現行憲法に違反する政策であり、主権者国民は看過してはいけない。

※憲法第89条「公の財産の支出又は利用の制限」には「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と定めている。

千鳥ヶ淵戦没者墓苑では遺骨は天皇下賜の骨壺に入れられており、兵士は死んでも天皇制から逃れられない事を象徴している。

昭和天皇記念館の内容は極めて政治的で思想的に偏向している。昭和天皇は平和のために尽した人物であるとし、戦争責任を免罪するためのビデオや展示を行っている

※靖国神社は、戦死者を顕彰し、護国の神として祀るところである。戦死者を顕彰するのは、戦死者を次の戦争に利用するためである。顕彰できるのは、正しい戦争で亡くなった人だけで、誤った戦争で死んだ者を讃えたり、神として祀ったりはしない。靖国神社は明治以来の日本の対外戦争はすべて正しい神聖な戦争であるとしている。1875年の江華島事件を起こした時に、朝鮮側の守備兵を35人殺害した。日本軍兵士は1人だけ死んだ。その兵士は靖国神社に祀られている。

(2020年2月22日投稿)

 

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新井史朗・日本原子力産業協会理事長の恐るべき「原子力利活用推進」発言

2022-11-08 16:35:26 | 原発

 岸田首相が策定を指示した「クリーンエネルギー戦略」(「新しい資本主義」の柱の一つ)について、経産省がまとめた中間整理には、原子力について「エネルギー安全保障、脱炭素の効果の高い電源を最大限活用する必要がある」との文言が明記され、政府・与党内では「原発回帰」の動きが強まっている。

 新井史朗日本原子力産業協会理事長(元東電HD理事/原子力・立地本部副本部長)も2022年2月25日の定例記者会見で「原子力の利活用推進」の発言をしている。それは「安定的に電力を供給すると言った意味で原子力の優位性はあり、注目度は高まる」「原子力の利用に対してブレーキになるのでは、というのもわかる。しかし、原子力の効用は非常に大きい」「大きなメリットを考えた時、戦争状態というデメリットをどこまで考えるかという事だと思う」「事業者は破滅的な破損に対して手を尽して対応するが、それを超えて戦争状態になると、事業者、産業界の範疇を超えてしまう。外交努力、国際的な関係改善で努力していただくしかない」などに見られる。

 新井氏原発と戦争の極めて危険な関係性を理解した上で、そのデメリットよりもメリットが大きいので原子力を推進すべきであると主張しているのである。営利企業である事業者は、原発を利用する場合、様々な電源の中から、比較の上で選択しているはずであるが、原発を推進しながら、そのリスク(人命損失)については事業者・産業界ではなく政府が責任を負うべきであると主張しているのである。原子力産業界のいう、原子力安全文化とは「『原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われる事』が実現されている組織・個人における姿勢・特性を集約したもの」としており、言葉だけ建前だけのものという事である。

 原発は安全保障上も、エネルギー安全保障上も大きなリスクである。そのリスクを誰が負うのか。住民は国民はその事を改めて考え原発を受け入れるか否かを判断すべきである。

(2022年5月23日投稿)

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