2019年6月14日、吉村大阪府知事が、吹田市の小学校での女児いじめ問題で、吹田市教委が1年半放置していたとして、「教育委員会制度は廃止した方がいい」「(いじめへの)感度が低い。どこまで本気でやっていたのか」「制度自体が今の時代にマッチしているのかをもう一度考えるべきだ」などと述べた。
「いじめ」は人権侵害問題である。それを考えれば、これまでの大阪府知事(橋下、松井を含む大阪維新の会)の様々な政策や姿勢も人権を否定無視した内容でしかない。そして、現府知事の吉村氏もこれまで(市長時代)の自分を棚に上げた傲慢な発言だと言ってよい。
2015年4月1日に施行された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」に基づけば、「いじめ」問題への対応は、「いじめ事件などが発生した場合は、まず、常勤の教育長(府知事が任命)が第一義的な責任者として迅速に対応する事になっている。また、教育長の判断により、教育委員への迅速な情報提供や教育委員会会議の召集ができる。さらに、府知事の判断により、緊急に総合教育会議を開いて、講ずべき措置についての教育委員会と協議・調整を行う事ができる事になっている。
上記法律の施行により、教育長やそれを含むすべての教育委員は議会の同意を得て府知事(首長)が任命できる事となり、教育長は教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表(会議の主催者、具体的な事務執行の責任者、事務局の指揮監督者)する地位となった。
また、総合教育会議もすべての公共団体に設置する事となり、府知事(首長)が召集し、府知事と教育委員会で構成し、教育行政の大綱の策定、教育の条件整備など重点的に講ずべき施策、児童・生徒等の生命・身体の保護等緊急の場合に講ずべき措置などを協議・調整する事を定めている。
大綱とは、教育の目標や施策の根本的な方針の事で、教育基本法第17条「教育振興基本計画」に規定する基本的な方針を参酌して定める。総合教育会議で府知事(首長)と教育委員会が協議・調整し、府知事が策定するとしている。大綱は、府知事(首長)の権限に関わらない事項である教科書採択の方針や教職員の人事異動の基準等についても、教育委員会が適切と判断して、府知事(首長)が記載する事もあるとしている。
以上の事から判断すれば、今回の「吹田いじめ問題」において、最も重い責任を問われるべきなのは吉村洋文・大阪府知事であるという事ではないのか。そういう意味で吉村洋文氏は傲慢で独善的人格の持ち主であり、府知事など「公職」に就く資格を有していないと考えて良いのである。また、かつては、「公職には適していない」とされた人物が、公職に就くようになっているのが現代の政治の世界であるという事なのである。
吉村氏は、安倍自公政権が目指す、「首長が教育行政を独占する仕組み」をつくるための「露払い役」をつとめているのである。