つれづれなるままに心痛むあれこれ

知る事は幸福度を高める

国連障害者権利条約委員会審査と総括所見

2023-06-16 19:08:15 | 障害者問題

 2022年8月、国連障害者権利条約に関する日本の審査障害者権利委員会が実施し、9月6日には「日本政府に対する総括所見」を発表した。その内容は、「障害児の分離教育の中止要請」と「精神科の強制入院の廃止」を勧告(初めて)するものであった。

 「総括所見」は、課題が山積している事を表すように他国に比べ詳しいものになっている。条約の総ての条文にわたり、「懸念すべき事項」と「勧告」を盛り込んでいる。特に緊急性が高いとするものは、「脱施設(精神病院も含む)」と「インクルーシブ教育」で、委員は「子ども時代に分離されると大人になって地域社会で生活するのは難しくなる。インクルーシブ教育はインクルーシブ社会の礎である」として2つは繋がっているものだとしている。条約第24条(教育)に関する勧告では、目指すべきビジョン分離特別教育を終わらせる事を目的として、障害がある児童がインクルーシブ教育を受ける権利を持っている事を認識する事」と明示している。そのために、「すべての障害がある子どもが合理的配慮個別支援を受けられるようにするためインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択する事」を要求している。また、「就学拒否禁止条項を作る事」「通常学校の教師へのインクルーシブ教育・人権モデルの研修」「分かりやすい教科書の作成」「手話言語教育や盲ろう教育」「高等教育への取り組み」などを要求している。さらに、2022年、文科省からの「四・二七通知」も撤回を勧告している。「四・二七通知」は、「週の半分以上の時間を特別支援学級で過ごす事」としているが、「分離を強化するもの」と批判している。

 障害者権利委員会は、文科省が近年日本の特別支援学校特別支援学級の大幅増加を、「多様な学びの場の充実」として積極的に評価してきた姿勢を、「学びの場を分離した上で対応」するのではなく、「一人一人の個別の教育ニーズを満たし、インクルーシブ教育を確保するための合理的配慮(バリアフリー)の保障」を要求している。

 米国では、かつて白人と黒人の分離教育は「分離すれども平等」として一般に認められていたが、1954年の「ブラウン判決」で「分離は差別」とされ、キング牧師などを指導者とする公民権運動を経て、1970年代には「インクルーシブ教育」が進められるようになった。人を分ける事に慣れてきた日本人も、変わる事を目指さなければ世界で誰も相手にしてくれなくなるのではないだろうか。

(2023年6月16日投稿)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

障害者の65歳問題:介護保険申請か障害福祉サービス継続か熟慮を

2022-12-03 19:14:12 | 障害者問題

 2012年に制定された障害者総合支援法の第7条には「障害福祉から介護保険に移行する時には、国や自治体が障害福祉制度自立支援給付に『該当する』と定めている介護保険給付を優先する」と定めている。これにより介護保険制度に同様のサービスがある場合には、介護保険を原則優先する事になっている。しかしそのため、それまでと同様のサービスが受けられないとか自己負担が増えるなど障害者の命と尊厳、社会保障が脅かされ問題化している。

 例えば、65歳で介護保険になった場合、①障害福祉サービスの生活介護の通所施設・作業所(就労継続支援A型・B型は対象外)や訪問(居宅・短期入所・共同生活介護=グループホーム)、身体介護(食事・排泄・入浴介護等)、重度訪問介護、短期入所、グループホームなどが介護保険に優先され、従来と同水準のサービスが保障されない場合がある。②利用時間も介護保険は介護度で定められ、同じ時間が保障されない。どんなに重度であっても介護保険の認定等級による固定された費用になる(上乗せ給付もあるが、要件を設定する自治体もある)。③障害福祉サービスは非課税所得の場合、利用負担はないが、介護保険の給付は所得がなくても利用料は1割必要である。④事業所が障害者対応でない場合、事業所を変えなければならない。など生活を維持できなくなり、経済的負担も増す

 65歳で介護保険を申請しない事により、それまで受けていた障害福祉サービスを打ち切る事は違法である。2018年12月13日に広島高裁岡山支部(浅田裁判)は、介護保険優先原則を理由とした障害福祉サービスの打ち切り問題での訴訟判決で「障害者総合支援法第7条は、障害福祉サービスを利用していた障害者が介護保険サービス利用を申請した場合に生じる二重給付を避けるための調整規定であり、介護保険制度に申請していない場合この調整規定は採用されない」と断じた。

 介護保険を申請しない場合は、はっきりその意志を伝える事が必要である。一度介護保険を申請すると、サービス提供の要件を満たす限り将来にわたって介護保険からサービスが提供される。それを断り、障害福祉サービスを受ける事はできない。

(2019年12月10日投稿)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする