ずっと気になっていた本を文庫で見つけたので、遂に買って読んでみました。ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」です。夢中になって読み始め、昨夜の嵐の音を聴きながら寝入り、明け方また読み出して今朝、読み終えました。2日間、あっという間の出来事でした。これほど読書に夢中になったのは、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」以来です。
やはり、私のものすごく興味のあるテーマの内容でした。最初の、15歳の少年が30代の女性と恋に落ちる描写も、控えめでいながら的を得ていて、素敵でした。W他紙の知らない、少年の心と体の葛藤が多少理解できました。でも、これほどまでにデリケートで内省的で良心的な少年、いまどきはいてくれるのかなーーと不安にもなります。
セックスというのは、ありふれていてその実、非常にプライヴェートな事柄で、一般化できないものだと私は思うのです。していることは確かに同じことでも、感じること、思うこと、それぞれに違っているし、何より、当事者二人が築き上げていく世界ですから。彼の場合は、多感な少年期に運命的に出会ってしまったこの女性のおかげで、そのあとの恋愛がどうもうまく行かなかったのでは、と思ってしまいました。あまりにも強烈過ぎて、そして余りにも複雑すぎて。その設定の見事さは、舌を巻いてしまいます。
戦争の被害者と加害者、その断罪はドイツではすごかったはずです。その中での、戦争犯罪者として生きた女性、謎の行動、裁判のもどかしさ。歴史に翻弄されたのは被害者も加害者も同じようであったはず。その重いテーマを取り上げて、一つの特異な恋愛を長い年月を追って描写した、本当に素晴らしい小説でした。
日本人は、すっかりあの戦争を忘れてしまおうとしています。でも、未だに傷を負った人たちがいて声をあげています。防衛庁が防衛省に?憲法9条改正?
冗談じゃあ、ありません。二度とあのような戦争を起こしてはいけないのです。日本の戦争放棄は、永遠に続けていかなくてはいけないことだと思います。今の政治家は本当、想像力がないですよね。ほぼ同世代の安倍晋三が、どうしてこうも戦争をしたがるのか、全く理解できません。この本のように、私たちも、あの戦争の責任をもっと考えなくてはいけないのではないでしょうか?
探したら、素晴らしい解説がありました。こちらに紹介させていただきます。
やはり、読んでよかった。たしかに、わたしが「読みたい」と思った本でした。