いえいえ、原左都子の場合は元より“病院へ行かない主義”を貫いているため、その制度が始まろうが受診率が低かろうが、今のところ何の影響も無いのだが。
その私が珍しくも、1年程前に近くの内科主治医を受診している。
その時の様子を綴った「珍患者・左都子の“10年ぶりの内科受診記”」と題するバックナンバーを公開しているため、以下に振り返ってみよう。
「病院へ行かない主義」で名を馳せているこの原左都子が、実に10年ぶりに近くの内科医院を受診した。
一体、我が身体の何処がどうしたのかを説明するならば…
ウィーン旅行から帰国した後頃からだろうか。 どうも食事と連動して左胸が痛む感覚があった。 特に朝食時にその症状が顕著であり、昼食時にも同様の症状が出る日々が続いた。(どういう訳か夕食時には酒のせいもあるのか?、その痛みは無いのだが。 夜中にその痛みが出るということも一切無かった。)
元医学関係者の私としては、当然ながら自己診断にてあれこれと病名を探るのだが…
食事と連動して左上胸部及びその周辺が痛むということは。 私なりに、消化器系に何らかの異常があるのではないか、最悪の場合、食道か胃に癌が発生しているかもしれない… などと勘繰り始めるとこの私ですら恐怖感に苛まれ始めるのだ。
それにしても何で痛みが左胸中心なんだ?? 合点がいかないなあ。 などと考えつつ。
昨日、重い腰を上げて自宅近くの内科医院を訪れた。
参考だがこの医院へは現在の住居へ転居後、17年の年月に渡り一家3人共お世話になっている。 (上記のごとく、私自身は10年ぶりだったが。)
それでは診察室でのやりとりを以下に列挙しよう。 (内科医先生をM先生とさせていただく。)
私 「こんにちは。ご無沙汰致しました。」
M先生 「本当にご無沙汰でしたね。 今日はどうされましたか?」
私 「前回の診察以来、ずっと元気だったのですが。」
M先生 「それは何よりでしたね!」
私 「(上記の症状を説明した後)、最悪の場合、消化器系の癌も考えられるかと自己診断しまして、本日診察に伺いました。」
M先生 「消化器系の癌とした場合、痛む場所が左上胸部というのが少し突拍子が無いかとも思います。 ただ〇さん(私の事)がそう診断したのならば、念のためカメラを飲みましょうかね?」
私 「先生、そっ、それだけは勘弁して下さい! カメラを飲むのは、私にとっては別の重い病気が出来そうなほどに辛いんです!!」
M先生 「過去にカメラを飲んで何か問題があったのですか?」
私 「はい。 私は医学部出身なのですが(M先生も既にご存じだが)、学生時代に自分の胃液を採取しての検体検査目的と共に、患者さん達の苦しい思いも実体験するとの目的も兼ねてゾンデを飲まされたことがあります。 周囲の学生達はまるでうどんをすするがごとくスルスルと飲めるのに、この私は何と3時間が経過してもゾンデが喉を通らず、“オエ~~~~ッ”とゾンデを吐き出してばかりの死ぬ思いをしました。 あんな苦しかった経験は後にも先にもなく、今尚トラウマとなっています。 ましてやカメラを飲むなど、私にとっては地獄に落ちるがごとくの仕打ちです。」
M先生 「そうでしたか。その思いも分かりますが… ただ、現在のカメラは実に小型に出来ていて、意外や意外、患者さんが横になっていてさえくれれば、アッと言う間に検査が終了するかもしれませんよ。」
私 「本当ですか?!」
M先生 「いずれにしても私の現在の考えは先ほど申した通り、もしかしたらその痛みは消化器と連動したものでは無く、単に筋肉由来であるかもしれません。 〇さんは現在何か運動をされていますか?」
私 「はい。 週に2度5kmを完走しています。 これが現在の私に取って何にも勝る達成感・爽快感の源でもあります!」
M先生 「それは凄いですね! (私に5kmを何分で走っているかを確認した後に)、いやいや実に素晴らしいじゃないですか! 不整脈症状も無い現在、どうも〇さんは心身共にお元気そうで癌等の疾患とは無縁のような気もします。 〇さんの場合、側彎症がある故に左側にのみ筋肉の痛みが出る事もあり得るかもしれません。 それでも〇さん自身がどうしても消化器系の疾患を疑うのならば、それも尊重しましょう。 どうでしょう、しばらくランニング等の運動を続行しつつ様子を見て、未だ症状が気になるようでしたら今度こそカメラ検査の段取りにしませんか?」
私 「ご理解、誠にありがとうございます。 それでは、どれ程の期間様子見しましょうか?」
M先生 「1、2週間でどうでしょうか? その間に〇さんの不安の程が拭えない場合、いつでも受診下さい。」
まとめに入ろう。
こんな珍患者、実際にこの国に存在するであろうか?
加えてこれ程までに患者の立場に立って診察に挑んで下さる医師先生も珍しいのではなかろうか?
もしも今回のM先生の診断が誤診であった場合、相手が素人患者だったならば“命とり”との結論ともなりかねない。 ただそうはならないであろう。 M先生は患者一人一人に寄り添われながら、日々丁寧な問診の上診察に当たられている。
元医学関係者である我が素人診断も尊重して下さりつつ、次の診察の提示も頂けている。
私にとっては、M先生とは我が理想の地元医院の内科医先生であられる。 それだからこそ、何かの場合には必ずやM先生に依存させていただいて来ている。
さてさて私は後1~2週間内に、カメラを飲まざるを得ないのか、どうなのか?!?
(以上、2019.10バックナンバーを引用したもの。)
この受診の後日談を語ろう。
受診直後はやはり食事と関連して左胸の痛みがしばらく続いていた。
ただその後は、M先生の診断である「左胸の痛みは筋肉由来ではないか。」なるアドバイスが私の脳裏にも活きてきた。
加えて食後に左胸が痛むとは言えども、その痛みは忘れた頃には消え去っている。 どう考察しても重い病気では無い事が明らかだ。 M先生のご指導通り、今まで通りランニング等の運動を続けよう。
そうこうしているうちに左胸の痛みが出ていた事すら忘却していた、との成り行きだ。😝
「オンライン診療」に話題を移すと。
現在、コロナ収束までの特例として、コロナ禍のもと感染を防ぎつつ医療へのアクセスを確保する方策としてこの制度が取り入れられている。
今年4月からは電話診療も含めて初診から利用できるようになり、対象もすべての病気に広がっているようだ。
一方、オンライン診療では触診や検査ができず得られる情報には限界がある。 電話診療はなおさらだ。
そうした不安も影響してか、電話・オンライン診療に対応する医療機関は10月末時点で15%、初診から対応する所は6%にとどまる。 実際に初診から実施した所は1%に満たない。
高齢者など機器の扱いに不慣れな人や、経済的な事情で利用が難しい人達への配慮も忘れてはならない。
更には、薬の乱用や横流しを防ぐため、初診で麻薬や向神経薬を処方することは禁じられている。 これに反した事例が9月までに175件あった。
田村厚労相は、安全性を確保するため初診での利用は電話では無く画面を通しての診療で、普段からかかっている医者に限る、との考えを示しているが。 具体的な要件を詰めるのはこれからだ。
(以上、朝日新聞2020.11.08付「社説」より一部を引用したもの。)
最後に、話題を我が主治医M先生に戻そう。
私にとっては実に“名医”のM先生だ。
10年間ご無沙汰して、一患者の私のことをよく覚えて下さっていたのにまず驚きだ。 まあ、私の場合“医学関係者”との立場のため覚えやすいのであろうが。
それにしても問診のみで「大丈夫ですよ」と結論付け、投薬の一つも成さないM先生の“勇気ある診断”は拍手ものだ!!
それだけご自身の医師としての経験則に基づき、問診時に患者の“人と成り”まで診察して結論を出しておられるのであろう。
やはり直接患者に対面して話して触れて実施する「診察」こそを、本来の診療と呼ぶべきではなかろうか?
「オンライン診療」。
現在はコロナ禍故にこの手段の採用はやむを得ないとはいえ、その未来は如何なるものなのだろう…