原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

義母が連日「介護施設を変わりたい」と訴えてくる

2021年06月25日 | 医学・医療・介護
 一週間程前からだろうか。
 この訴えが電話にて一日2,3度届く。


 認知症状に加え難聴の悪化が加速し、何が言いたいのやら十分には把握不能なのだが、要するに表題の内容を我が家に訴えてくる。

 もはや嫁の私の声は電話では全く聞こえないとの義母の話をラッキーとして、亭主が毎回電話にて義母対応しているのだが。


 何故今これを義母が訴えてくるのかに関しては、想像がついている。
 義母が最近またもや「お金を取られた!」騒動を施設内でやらかして、施設の職員氏達が“お手上げ”状態なのだ。
 説明を加えると、決して“お金を取られた”のではなく。
 義母は以前より大事なものを室内のあちこちに隠す習慣があり、それを隠したはよかったが、翌日になってその事実を忘却している。
 そして必ずや施設の事務所へ出向き、職員氏相手に大声で「また、お金をとられた!!」と 大騒ぎをしでかす癖がついてしまっている。

 それを多忙な職員氏達が十分に構ってくれないのが、義母には不服の様子だ。 我々保証人としては職員氏達に申し訳ない限りであり、今後この義母の奇行を如何に鎮めるかに頭を悩ませているのだが。


 ところが義母としては、現在の状況が寂しくて仕方がないのであろう。
 そして思いつくのが、「介護施設を引っ越そう!」との発想だ。
 別の施設へ行くと、皆が自分に構ってくれると想像する義母が不憫でもあるが、認知症とはそういうものなのでもあろう。

 具体的に義母が何処の施設へ入り直したいかに関しても、亭主に告げるらしい。
 どうやら義母の薄れゆく記憶の中に、現在の施設入居以前(義母75歳頃まで?)に通っていた病院の情景が蘇るようだ。 義母曰く、その病院長先生がとても優しかったらしい。 いつ行っても義母の話に十分耳を傾けてくれ、義母にとって欲しい回答を寄越してくれたようなのだ。

 そして義母が亭主に言うには、「あの病院へ入院するか、付属の高齢者施設に入り直したいから、貴方が電話で相談して。」
 亭主応えて、「病院とは病人が入るところだから、元気なおばあちゃんは入れないよ。 付属介護施設に入り直すと簡単に言うけど、入居費にいくらかかるか分かっているのか? あの場所は山手線沿線で地価が高いから、施設入居費だって高額だよ。 入居一時金だけでおそらく2,000万円を下らないよ。 それをどこから出せと言うのか。 毎月の入居費だって現在より高くなるよ。 もっと大事な事は、何処へ入居したって職員の待遇は大して変わらないということだ。 それがおばあちゃんは全然分かっていないね。」

 まったく亭主の言う通りなのだが、認知症状も難聴もあって話の1割も通じていない様子だ。 そして、日々2,3回ずつ同じ電話を繰り返し寄越してくる…
 よくぞまあ亭主も根気よく義母の電話に付き合っているものだと、褒めてやりたいものだが。


 思考力の欠片も失ってしまった義母にとっては、自分を大事にしてくれて暮らしやすい“別天地”があると信じたいのだろうが…

 如何に説得すれば現在の施設でおとなしく暮らしてくれるものか、今後に及んで保証人にとっては頭の痛い問題だ。