96条改正は立憲主義の否定
自民党が憲法の条文、なかんずく9条の改正を行うのに先立って改正手続きを定めた96条の改正を先行させ、衆参両院それぞれの議員の三分の二の賛成による発議から過半数にハ-ドルを下げようとしていることに対して改憲論者の憲法学者からも批判の声が挙がっています。
すなわち、憲法は国民の権利を権力に認めさせるもの(立憲主義)を、権力の側が好む憲法に変やすくしようとするのは間違っている。安倍首相が「国会で三分の一を少し超える勢力があると国民は憲法改正の意思表示もできなくなるのはおかしい」と云ったが、ある政冶勢力が国会で過半数を占めて政権が変わる度に基本的な人権や宗教に関わる国民の権利を変えるようなことはすべきではないというのがこの三分の二条項で、世界の多くの国が憲法改正に厳しい条件を付しています。
96条の改正を持ち出す裏には、憲法は国民の権利を権力に認めさせるものから、憲法を権力(政府)が国民を統治するための道具にしようという考えがあるのです。
思想信条・言論の自由を「公益」で制限
そのことが自民党の憲法改正案の「国民の権利及び義務」の項目に表れていると言われています。
(現行憲法)
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(政府が侵すことを禁ずる)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。(同)
(自民党改正案)
第19条 思想及び良心の自由は、保障する。(侵すことを禁ずるのではなくて政府が保障してやる)
2 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。(国民よ)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認めない。(公益で制限する)
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。(同条2~4手続き略、非常事態条項は自民党案で新設)
第99条 (1~2略)
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。(以下略)
大日本帝国憲法にそのルーツがあった
(大日本帝国憲法)
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
どうです。「自民党改憲案のルーツは大日本帝国憲法」といった意味がお分かりいただけたと思います。
このほか自民党改憲案では、前文で「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって・・」「日本国民は、良き伝統とがの国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」としていますが、大日本帝国憲法を発布した時(1889年・明治22年)の天皇の勅語に「万世一系の帝位を継ぐ朕(天皇)が親愛し、朕の祖先も恵撫慈愛し給わった臣民の幸福を増進するためにこの憲法を発布する」という主旨のことが述べられており、それが自民党案の前文に引き継がれているように思えます。
なお、この小論は6月22日に愛知大学名古屋校舎(笹島)で行われた愛知大学人九条の会と愛知大学九条の会の合同講演会における愛敬浩二名古屋大学教授の講演とその時いただいた資料を基に大日本国憲法のことを少し勉強して書いたものです。大日本帝国憲法を改めて読んでみてまだまだ勉強しなければならないと感じました。
国民は街中に幟を立てるなどして帝国憲法の発布を大喜びしたそうですが、福沢諭吉は「ヨーロッパでは人民が王の専制を嫌って人民が王に人民の権を認めるよう迫ったそうだが、人民の精神の自立を伴わない憲法発布に不安を感じる」と主宰する時事新報に書いています。
自民党が憲法の条文、なかんずく9条の改正を行うのに先立って改正手続きを定めた96条の改正を先行させ、衆参両院それぞれの議員の三分の二の賛成による発議から過半数にハ-ドルを下げようとしていることに対して改憲論者の憲法学者からも批判の声が挙がっています。
すなわち、憲法は国民の権利を権力に認めさせるもの(立憲主義)を、権力の側が好む憲法に変やすくしようとするのは間違っている。安倍首相が「国会で三分の一を少し超える勢力があると国民は憲法改正の意思表示もできなくなるのはおかしい」と云ったが、ある政冶勢力が国会で過半数を占めて政権が変わる度に基本的な人権や宗教に関わる国民の権利を変えるようなことはすべきではないというのがこの三分の二条項で、世界の多くの国が憲法改正に厳しい条件を付しています。
96条の改正を持ち出す裏には、憲法は国民の権利を権力に認めさせるものから、憲法を権力(政府)が国民を統治するための道具にしようという考えがあるのです。
思想信条・言論の自由を「公益」で制限
そのことが自民党の憲法改正案の「国民の権利及び義務」の項目に表れていると言われています。
(現行憲法)
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(政府が侵すことを禁ずる)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。(同)
(自民党改正案)
第19条 思想及び良心の自由は、保障する。(侵すことを禁ずるのではなくて政府が保障してやる)
2 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。(国民よ)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認めない。(公益で制限する)
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。(同条2~4手続き略、非常事態条項は自民党案で新設)
第99条 (1~2略)
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。(以下略)
大日本帝国憲法にそのルーツがあった
(大日本帝国憲法)
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
どうです。「自民党改憲案のルーツは大日本帝国憲法」といった意味がお分かりいただけたと思います。
このほか自民党改憲案では、前文で「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって・・」「日本国民は、良き伝統とがの国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」としていますが、大日本帝国憲法を発布した時(1889年・明治22年)の天皇の勅語に「万世一系の帝位を継ぐ朕(天皇)が親愛し、朕の祖先も恵撫慈愛し給わった臣民の幸福を増進するためにこの憲法を発布する」という主旨のことが述べられており、それが自民党案の前文に引き継がれているように思えます。
なお、この小論は6月22日に愛知大学名古屋校舎(笹島)で行われた愛知大学人九条の会と愛知大学九条の会の合同講演会における愛敬浩二名古屋大学教授の講演とその時いただいた資料を基に大日本国憲法のことを少し勉強して書いたものです。大日本帝国憲法を改めて読んでみてまだまだ勉強しなければならないと感じました。
国民は街中に幟を立てるなどして帝国憲法の発布を大喜びしたそうですが、福沢諭吉は「ヨーロッパでは人民が王の専制を嫌って人民が王に人民の権を認めるよう迫ったそうだが、人民の精神の自立を伴わない憲法発布に不安を感じる」と主宰する時事新報に書いています。