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随筆  はーちゃんの号泣に   文科系

2013年08月19日 05時54分19秒 | 文芸作品
 はじめての孫のはーちゃん、9月で3歳になる女の子だ。現在、母子と僕ら祖父母で、北海道へ旅に出ている。今19日午前5時現在、富良野のあるホテルでこれを書いている。
 昨日のレンタカー移動中こんなことがあった。小樽文学館で小林多喜二コーナーなどを観たあとここへ移動してくる途中のことである。

 はーちゃんがチャイルドシートを嫌がって泣き叫び、何を思ったかベルト留め金を外して床に座り込んだ。そして、立ち上がろうとする。横のばばが、危険と判断して立ち上がろうとするのを、頭や肩などを押さえつけた。それも3~4回。対するはーちゃんの抵抗と抗議の、ものすごかったこと。抗議と抵抗の表出はもちろん、悲嘆にくれて身も世もあらずの様相が、優に30分以上。その間、なんの慰めも、好物の提供申し入れも一切振り払って受け付けず、ただ大泣きである。それも、喉がかれて声が出なくなるほどの号泣をずっと続けている。
 「これってなんだろう?」。大人3人は皆、すごく当惑した。抗議というよりも、身も世もあらずとの態度が執拗だったからだ。と、娘がこんなことを話し出した。
 先日初めて、こんなようなことがあった。見知らぬやや年長者3人の砂場遊びだったかに入りたくて露骨に拒否されて入れず、しばらく粘っていたが娘がその場から脱出させたとたんに、これとそっくり同じ大泣きが始まったという。それも、初めてのことだと見たのだが、この「身も世もあらず」がやはり30分以上は続いたという。「はじめたみた、全く同じ感じの泣き方だ」と断言したのだ。

 さて、僕はうろ覚えのこんな知識を思い出していた。20世紀最大の発達心理学者ジャン・ピアジェの言葉で確か「幼児の、恩と愛着」というような概念があったはず。他人から恩を受けたことの長期記憶が生まれ始めると、人への愛着というものが起こり始める、と。こんなふうに愛されることが多かった子どものなかで、能動性の強い子はこの愛着も極めて強いはずだ。そして、この愛着が裏切られたと体験したときには、ものすごい葛藤が発生するということではないか。
 こう考えて僕は二人に言った。
「これって、とても良い、新たな体験なのだと思う。安心して身を任せるように愛し始めた人に拒絶されたと判断できて、身も世もあらずとできるようになったということじゃないか」
 愛や恨みが発生しなければ、拒絶や別離に何も感じないはずだ。拒絶と感じて号泣できるほどに成長したということだろう。

 ところでさて、これほどに拒絶されたばばの方は、猛烈に不安が生まれたらしい。今後の態度が変わるのではないかと、しきりに述懐していた。ただ僕は、何の心配もしなかった。人への愛着が生まれ、人によるその強弱も生まれ始めた幼児は、愛着の方も覚えているに違いないと考えたからだ。その後案の定、こんな場面が繰り広げられた。富良野「風のガーデン」という所で、はーちゃんがばばにむしろ気遣って優しいこと、明らかなのであった。手をつなごうとしたり、ものをあげたりと、いつもより強いそんな態度がはっきりとしていて、娘とふたりで目を見張っていたものだった。幼児ながらすごいものだと、言い合わせていたものだ。
コメント
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