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「求めてきた内容」の本   文科系

2014年04月14日 14時18分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 以前から、こんな本を探していた。世界政治の近未来を、世界経済の過去1世紀以上の正確な長期的変遷様態分析から探っていこうとする読み物を。ある戦争で国の威力をこれだけ見せつけたとか、どの国がこの十年景気よいかなどなどは言ってみるならばまー一時的なこと。長期的に見て世界金融資本と産業資本との関係はどうなるかとか、国の経済力が世界的重要度ではどう推移してきたかとかを、少なくとも一世紀単位で観てみたかった。僕はここに、過去半世紀スパンほどのこういう内容ならば描いたことがある。13年3月1日から4月13日まで11回書き続けた「世界経済史の今を観る」である。大学の最近の経済学教科書など数冊の本を使ってポスト戦後社会から現在までを眺めたものだった。ワシントンコンセンサスへの対抗勢力を世界に探すという内容で終わっているが、その時の作業はこんな感じがぬぐえなかった。やはり戦後社会からだけ見ていてはダメだ。これは戦勝国、先進国、アメリカ中心の見方にしかならない特殊な時代である。そして、せいぜいがこういう国中心に今後20年程度の世界の一面しか分からないな、とも。

 さて、そんな問題意識から格好な本を探していて以降もあれこれと新聞書評欄を見たり、立ち読みなどを繰り返してきたが、以降で最も期待が持てそうな著作に出会った。まだ、書き出しの第一章とちょっとしか読んでないが、岩波新書・進藤栄一筑波大学名誉教授の「アジア力の世紀」である。著者は、京都大学大学院を出た法学博士。筑波、早稲田、ハーバード、プリンストンなどの教授、研究員などを歴任してきた方だ。この著作のモチーフを提示した第一章が、僕の問題意識にピッタリなのである。こんなふうに。

 最初の図表1-1が、「21世紀主要国のGDP変化予測」。これは、BRICsという語を生んだゴールドマンサックスのジム・オニールの計量データに基づくものだそうだが、2025年過ぎに中国が、50年ごろにはインドがアメリカを抜くと予測されている。日本と英国は日本が上のままほとんど伸ばせず、50年にはインドネシアに抜かれると示されている。ちなみに、当然のことながらこの数字は人口をも反映しているから、個人所得比較ではない。同じく図表1-4はケンブリッジ大学の経済史家アンガス・マディソンがまとめた「19世紀以降主要国GDP推移」だ。1820年(実績)から2030年(予測)までを戦前2回、戦後3回、未来予測1回と合計6つの時期に分けて報告し、その都度世界GDPを100とした場合各国がどれほどになるかという帯グラフにしている。この図表で最も興味深い点はこうだ。左から、西欧、米国、豪・加・NZ、露、東欧、中南米、アフリカの順できて(ここまでを①としておこう)、そこから右がアジアになって日本、中国、インド、その他アジア諸国なのだが(同②)、この約二百年の初めと終わりで①と②の比率がほぼ変わらないのである。①と②の比率が1820年では、43対57ほど。それが2030年になると47対53。なおこの図の中でこの両者に最も差が広がったと言えるのは1950年で、②が20%以下になっている。この傾向は1973年にも続いており、②が25%ていどに留まっている。この①対②が、2003年には60対40と追いついてきた。19,20世紀は一定経済力を持ったアジアからの植民地搾取による西欧繁栄の世紀と見ることも出来るのではないか。まるで、こう主張しているようにさえ聞こえるのである。
「むしろ19,20世紀が異常な世紀なのであって、一定経済力があったアジアが主張し始めれば元に戻る。それが世界の民主主義と言うものだ」

 同じ第一章に、アメリカの衰退そのものが示され、予測されている。ちょうど、アジアの「復活」に呼応していくような衰退の形だから、面白い。まず、先に見た「世界200年の主要国GDP推移」でアメリカを観ると、最大は1950年の27.3%が、2003年には20.7%となり、2030年予測では17.3%と落ちていくことになる。特に驚いたのが、図表1-2で「全米企業収益に占める製造部門と金融部門の比率変化」だ。1990年を過ぎてから、金融部門収益が製造部門のそれをどんどん抜いていくのである。日米などのこの資料、数字こそ実は僕が喉から手が出るほどに欲しかったもの。アメリカはやはり完全に、物を作っても売れない世界的金転がしの国になっていたのである。それも、僕が思い描いていたよりもはるかに激しくそうなっている。サブプライムバブルを起こしたり、通貨危機を引き起こしたり、日本以上に中国などの金融市場を是が非でも狙いたがったりというわけも分かるというものだ。食料なりエネルギーなり生活必需品なり、人は物がなければ生きていけないが、そういう物を汗水垂らして生産し財を生み出す人々、国々から、その財を金融で奪い取っていくやり方。自国の一般大衆を貧しくすればするほどそこで金融を操るうま味が消え失せてしまい、他新興国の金持ちの蓄財を求めていく金融資本。これこそ、新自由主義経済の本質だと言いたい。

 また、これの裏返しとして、アメリカ経済の軍事化も顕著である。図表1-3では、アメリカの科学研究開発費に占める軍事部門比率の高さが示されている。政府の科学研究開発費に占める軍事部門の比率が特に高く、この国の軍事研究開発費総額自身が英仏などの10倍よりも多く、日本と比べたら60倍ほどになる(2003年度の数字。OECDデータ)。だからこそ、アフガン、イラク戦争を起こしたとも言える。この結果が、中東・北アフリカ6カ国で米ブルッキングス研究所自身が2003年に行った世論調査にこう現れているという。アメリカは「極めて嫌い(好き)」、「かなり嫌い(好き)」で、「極めて嫌い」の比率を悪い順に書いてみる。サウジ68%、モロッコ67%、ヨルダン63%、エジプト58%、レバノン40%、アラブ首長国連邦31%とあった。こういう不信感を覆すには一体どれだけの年月がかかることだろう。9条を変え、財政も経済も含めて軍事化を急いでいる日本も、胸に手を当てて考えてみることだ。

 さて、この本を近く順に内容要約などで紹介していきたいと目論んでいます。よろしく。
コメント (1)
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