随筆紹介 「うっかりもの」 K・Kさんの作品です
始終ドジをしているのだから、今さらのことではないが、スマホをスーパーのトイレに忘れてしまった。ポケットに入れていたので、落とすと困ると荷台に置いたまま忘れたのだ。店で買い物をしていて気がついて戻ったがもう無かった。
五年前に引っ越ししてからは家に固定電話はつけてない。これでは誰とも連絡が取れない。それに「スマホを落としただけなのに」の映画を思い出す。他人に悪用され、事件に巻き込まれていく話だ。冷や汗がどっと出る。
もしかして良い人に拾われて届けられているかもしれない。と祈りながらサービスセンターへ急ぐ。有った!黒いカバーのスマホが見えた。有り難い。「何色ですか?何処でなくしましたか?携帯番号は?」細かく聞かれ、身分証明のコピーを撮られてやっと返してもらった。懲り懲りだ。大事に握りしめる。
それなのに、少しして今度はポイントカードをセルフレジの上に忘れた。チャージ金額は千円しか残っていないので損害は少ないが、うっかりミスに呆れる。店に連絡したら届けられていた。当日のレシート番号を聞かれ戻ってきた。続けてのうっかりミスにへこむ。私のボケ始めだと困るのだが。
忘れ物といえば思い出す知人がいる。彼は何回も忘れ物や鞄を取られているが動じないようだ。コンビニの駐車場でエンジンをかけたまま店に入り、五分位で鞄を盗まれた。この時は財布を抜かれて鞄は他のコンビニで見つかった。ある時は、飲んでスマホを何処かに忘れた。GPSで探したが場所は分からなかった。諦めて新しいのを買った頃出てきた。
「なくしても戻ってくるから。命まで取られた訳じゃない」彼の口癖。別に慌てた様子はない。小心者の私には理解できない。面倒くさがりなのか、鈍感なのか、寛容のためか分からない。場合によって鈍感は寛容という美徳になったりするので、可否をいうわけにはいかない。出張の鞄を家に忘れ、取り止めになったことも。それでもめげない。謝れば済むという。人当たりがやわらかいから収まるらしい。
彼とは年代も違うし身を置いた世界も違う。人の感性というものは千差万別だ。どっちが正しいかどうかの問題ではない、人それぞれ。小さいことにこだわるとストレスが多い。身体によくないと思うが、いい加減さが上手くいかない。彼の生き方の方が楽なのかもしれない。