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随筆紹介   国勢調査で見えた「社会の瓦解」 文科系

2021年01月03日 05時48分26秒 | 国内政治・経済・社会問題

 随筆紹介   国勢調査で見えた「社会の瓦解」  I・Kさんの作品です

 

 曲がり角の国勢調査       
                                  
 残暑厳しい八月末に五年ぶりの国勢調査が開始された。調査員はなり手が少なく、今年は六十万人と十万人減った。世の中は個人情報の尊重、詐欺への懸念、加えてコロナ感染の危惧で、調査員は苦労しつつ、指定された全世帯を訪問する。ベトナム人が出てきて会話できなかったり、番犬がうるさかったり、若い女性は絡まれたり、さまざまなトラブルを回避しつつ、実際に居住する法定人口を算定するため歩き回る。トラブル回避のため、名古屋市などは面談抜きで、配布さえすればいいと割りきる市町村も出現した。対応にバラつきが出ていることに違和感がある。
 私は四回目の訪問で、事前調査を完了し、男女別の世帯人数、代表者氏名、空き家、回答方法を確認した。便利なネット回答をインターホーンごしに勧めた。
 しかし、インターホーンを意図的に切っていたり、寝ていて起こされたと怒られたり、個人情報だから世帯人数など教えないと言われた。詐欺を疑い、身分証をかざしてくれとも言われた。

 国勢調査は今年で百年。たかだか人口調査で六十万人が人海戦術を続けるのは奇妙な話である。住民台帳との乖離があるから、現場主義での調査という。海外への出張者、病院への入院者、住民票を異動しない学生、段ボール族、夜逃げなど、住民台帳による人数と市町村の居住人数とに乖離があるからだ。だから五年ごとに、膨大な人員、費用をかけての調査となる。この人数は法定人口と言われ、国会議員の小選挙区の議員数、地方交付金の算定、町から市へ昇格に使用するという。選挙時に郵送される投票用紙は住民台帳がベースであり、建前そのものが疑わしくなる。

 この疑問は横へ置き、国勢調査のための人員は調査員六十万人、さらに指導員、国勢調査を担当する総務庁、都道府県、市町村の膨大な職員がいる。費用は職員の給料を除いて八百億円である。

 こうみていくと、国勢調査の人海戦術は曲がり角にある。世界各国も国勢調査に大変な苦労をしているのだから、北欧のように住民台帳などの既存のデータを繋ぎ合わせて活用すべきである。海外出張者は出入国管理のデータを、住民票を異動してない学生は全大学に調査依頼する、住民票を異動しない入院者はすべての入院病院に調査依頼する。段ボール族などは市町村が個別調査する。これで、必要な人員、費用も大巾に圧縮される。

 その他に、マイナンバー制度を人口調査の観点から活用したり、調査を民営化した郵便局に委託したり、様々な改善が考えられる。国勢調査百年を迎え、疲労気味のやり方に、大きく舵をとり改革すべきであろう。                       

 

社会の瓦解
        
 今回の国勢調査は、前回の五年前と雰囲気ががらりと変わった。前々回は郵送での回答を加え、前回はネット回答を追加し、サービスの向上を図った。にもかかわらず、今回は未回答が爆発的に急増した。これは単発の一つの現象だろうか。そうではなく、社会の大きな変化の流れの氷山の一角に過ぎないのだろうか。

 国会議員の投票率は八割から四割台に半減し政治から離脱する国民が半数を越えた。既存の政党を支持しない国民も大きく増え六割を越えた。この現象は地方にも及び、自治会参加者は減少の一途、老人会の参加者は私の地区は一割を切り、毎年役員の選出でもめている。私は町の文化協会の役員をしているが、会員数は大きく減少し、参加部も脱退がたえない。春秋の文化祭の展示会場は閑散とし始めた。
 社会は確実に変化している。高齢化、少子化、格差の拡大、さらに鬱病、特殊学級、非正規社員の激増といった傾向がある。若者はなかなか結婚しないし、離婚率も高くなっている。国の借金も世界一で、脱出策はなく、閉塞感が強い。親戚付き合いも希薄になり、葬儀は家族葬に縮小している。そしてコロナが襲った、そんな時期の国勢調査であった。時代を反映し、調査員の応募者は減り、未回答率は爆発的に増え、調査の信頼性は大きく失墜した。国民、特に若者は国、組織より個人主義、家族主義が顕著に台頭してきたのだろう。国家、政治への不信、無視があり、距離をとっている。

 社会に厭世感が漂い、倦怠感に溢れ、世をすねる。社会への参加意識が薄れてきた。共同体の集まりが苦手となり、都市のように個々人分散が地方にも浸透し始めた。今後、どんな社会になっていくのか、先が読めない。パソコン、スマホの広まりが情報を拡散し、国家、社会への愛着を喪失させていること、伝統、慣習、既成概念をも破壊している。今後どのように再構築していくのであろうか。

コメント (1)
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