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随筆 「生還」   文科系

2012年12月16日 08時39分05秒 | 文芸作品
  生 還

 十一月二十一日の夜、ここにも書いてきた孫のはーちゃんが大やけどを負った。高い所にあった加湿器のお湯をかぶってしまった。その電気コードを引っかけて倒したのである。すぐに全身に放水を続けた「寒い、寒い!」から、大学病院救命救急センターへの搬入、即入院という修羅場になったようだ。この通報から三週間両じじばば同伴の闘病生活が始まった。まず、火傷について学んだ知識などを描いてみる。
一 火傷は軽度、中度、重度とあり、体表に占める%と、浅い方からⅠ~Ⅲ度の傷の深さとで決まる。中度火傷が例えば、「十五~三十%のⅡ度」、「十%以下のⅢ度」というように。ただ、乳幼児は十%でもショックを起こす場合もあって重傷度が増し、深度も判りにくい。
二 直後の「流水で五分以上冷やす。服、靴下など衣類はそのままで」が、きわめて重要。
三 以降に怖いのは、血液に細菌が入る菌血症、低下した体力がそれに負け始める敗血症が起こりやすこと。細菌を防御する皮膚がないから、体中に注射をしたその日に汚い風呂に入るようものなのだ。これへの手当てが遅れると、治りかけた傷口もすべて内側からぶり返し、ケロイドが酷く残ったり、抗生物質が効かない細菌が入って衰えている体力の命を落とす場合もある。
四 対策、治療は、何よりも傷口の殺菌、二週間とか速やかに皮膚再生に努めること。感染予防のためには、個室隔離、看病者の限定と手洗い、うがいなどの徹底。本人の体力増強にも努め、水分、栄養、睡眠が特に大切になる。

 まさに絶望の宣告、心境を体験した。
「血液に何かの菌が検出されて、敗血症が起こっています。三十九度の高熱がその証拠」
 さらに週末を挟んだ数日後には、
「検出されたのは、黄色葡萄状球菌です」
 抗生物質が効かない黄色葡萄状球菌なら大変だがなどと、この頃がどん底の底だったと思う。耐抗生物質性でないと確認できた時までは、僕自身食事ものどを通っていなかった。あんな数日の気分は人生でも初めてのことだ。若夫婦二人のためにも僕がはーちゃんと入れ替わってやりたい、よく語られるそんな表現が我が身にどれだけリアルだったことか。

 三つ目の抗生物質が効き始めた。熱が下がり始め、顔など傷の赤みも日々見違えるようにとれていく。健康になった子どもの皮膚再生力は、魔法を見ているようなもの。敗血症の目安・血液炎症反応数値も瞬く間に下がって、負傷後二週間が過ぎた頃には一般の平常値よりも低くなった。後遺症関係も二週ほどで判明してきた。
「面積は十%を超えているが、酷い部分でも深度Ⅱの深浅両様で深い方が一%もなく、顔はもちろんほかの部分にも酷く掻かない限り傷跡はほぼ残らないでしょう」
 この全員本当にほっとした時を、今もよく思い出す。若い夫婦二人の気持ちを考えたら、事実泣けてきた。

 こうして、負傷日から数えてちょうど三週間の十二月十二日、退院となった。それから今日も含めて二日間、じじばばとイーオンへ行って遊び回り、リハビリと体力増強に努めてきた。二歳児がきれいな広いフロアーを走り、転げ回る姿は、まさに弾けていた。火傷を洗う悲鳴や退院直前まで続けた点滴針取り替えなどが思い出されて、「雪国の春」。
 小原庄助の僕が朝五時起きで娘と付き添いを代わった2週間など、両じじばばもいかに君の命を大切にしてきたか。はーちゃん、君もどうか自分を大事にしていってほしい。

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31 コメント

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大変でしたね。 (らくせき)
2012-12-16 09:21:02
それにしても最初の処置が適切だったことが
良い結果をもたらしたのでしょうね。
ジジババ力、ご苦労様でした。
本当によかったですね。

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TPP (只今)
2012-12-16 09:46:14
 子どもより孫が可愛い。故の不安は察するに余り有り。
 それはそれ、この国の現在の救急医療体制はなんとしても守らねば、と改めて思います。
 異国の地だったらと思うと、ぞっとせざるを得ません。
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ありがとうございました (文科系)
2012-12-16 10:47:32
 早速、温かいお返事をありがとうございました。
 らくせきさん、随筆としては辞書のような箇所など、この体験を世に生かしてほしいとの思いも込めたつもりです。それだけに只今さんの「TPP」は、身に染みたこと! 日本の医療をアメリカのようにしては絶対にいけませんね。あの国はもうすべてが、身分制社会ですものね。「金の切れ目が、命の切れ目」と、こんなアメリカの実態を若い人たちは知っているのだろうか? 家族の誰かが重い病気をすると破産して、二度と立ち直り難い国だということを。TPPで最も問題になるのが医療の公平性なのだ、と。

 アメリカから見たら、日本の健康保険制度は「関税と同じ保護主義だ」と言い出しかねない。「国家が補助を出しすぎる製品、サービスは、他国の輸出を妨げるはず」という理屈、理念! 郵政がやられたのも同じような理屈だろう。日本国家による円売り為替介入でさえ「保護主義。罰せよ!」とのキャンペーンも聞こえてきた。こういうものを、例えば自動車輸出の保証と取り替えっこしてしまってよいのかと、そういう話だろう。
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Unknown (文藝春秋12月号)
2012-12-16 16:38:38
○TPPで「日本対アメリカ」という図式は間違い。相手は多国籍企業。
○自由貿易ではなく公正貿易を。
「労働者はTPP協定が実施されても余裕はできません。TPPは最底辺で競争するための市場を開くだけです。TPPは見境のない資本主義に走らせるだけです。TPPが実施されるなら、それらすべての国々の労働者及び国が代償を払うことになります」シカゴ・TPP反対デモ
「政府は米国の要求に従って米軍に日本を守ってもらうためにTPPを締結しなければならないと考えているようだが、守ってもらえないのであれば自己防衛しかないのであり、日本経済を人身御供として差し出すのは本末転倒である」『TPP亡国論』中野剛志
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Unknown (文藝春秋12月号)
2012-12-16 17:01:31
日本共産党や、孫崎享氏や、只今氏、らくせき氏、文科系氏は「日本の政治は米国いいなり、財界いいなり、官僚いいなり」だと主張している。原発やTPP推進や消費税増税はその最たるものだという。
一理あると思う。
しかし、疑問もある。
彼らの力がそれほど絶大であり、彼らの思うがままに物事が進むのなら、なぜ「原発の再稼働がいまだ二基だけなのか」(――おかしいではないか――この問いにきちんとまともに答えてもらいたいものだ。とはいえ、私の頭でも答えはでないのに、それ以上を期待するのは無理か――自民党政権が誕生すれば、来年からどんどん再稼働するのか? しかしそれは悠長な話だなあ。菅首相がそれなりに抵抗したと仮定しても、野田首相の誕生でいくらでもなんとかなったはずではないのか)
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12月号さんへ (文科系)
2012-12-16 18:11:05
 あなたの挙げられた例は、いろんな項目がごっちゃになりすぎていて、それも多少の違いはあっても対立的でないものを対立させたりしていて、一概に答えることは出来ない。ここの常連を同じ考えのように言っているし。僕は左翼だが共産党には入れなかった。らくせき、只今さんはまた違うだろう。

 さて例えば、「日本対アメリカ」と「日本対多国籍企業」とにそんなに差があるとは思えないし、ましてやこの二つが対立的などとはとうてい思えない。例えば、イラク戦争や日本軍事化は、アメリカ国家にもアメリカ多国籍企業にとっても関心事項であった。
 TPP推進者が多国籍企業だとしても、アメリカ国家がこれに消極的だなどと語るとすれば、おかしい。また、TPPは、超格差を進めるが、「日本を守ってもらうために」という側面が日本にとって第一なのではない。「自由貿易主義」が、トヨタとか日本金融資本とかにとっても利益なのだ。アメリカのTPP推進武器は「TPPをやらぬなら、アメリカに自由な輸出も出来なくなるぞ」ということがある。

 なお僕は左翼を自認するが、今回も共産党には投票しなかった。非常に考えが違うからだ。『日本の政治は米国いいなり、財界いいなり』など、敢えて言えば今はどうでもよいと思う。以下のように考えているからだ。未来を押してきたのも同じ理由からである。
 アメリカや財界とけんかするよりも、まず日本官僚の強権を奪うことが第一。これが実現すればアメリカ、財界も今ほどは悪政を要求できにくくなる、と。たくさんの敵とけんかするよりも、まず当面最大の敵を押し込める道のほうが、味方も多くなって実現性も増すというもの、とも。酷すぎる官僚を押し込める方が、資本主義を正させるよりも遙かに当面可能で、現実的な話だとも考えている。

 というように見るから当然、こう考える。アメリカの力はもちろん、財界の力もそんなに絶対ではない。今は日本官僚に支えられているからより大きくなっているということはあるが、選挙がある時代だから昔のようには行かない面も多いのだ。他方、反原発の力は、体制側が思っているよりも遙かに強かったということだろう。この点は体制側の誤算のはずだ。だから安倍自民党でさえが、「原発は様子見」という日和見政策を決め込んでいるのだろう。

 なお、ここの人々を同じ考えのように言うのは、やめた方がよい。みんな面識さえない人が勝手に集まってきただけなのだから。
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私は左翼ではありません。 (らくせき)
2012-12-16 18:52:46
左翼だったこともありません。
かりに共産党に投票したとしても
(共産党には投票しませんでしたが)
私が左翼だからではありません。

生きている人間とは、そう簡単に
仕分けができるモノではないでしょう。

私の立場はあえて言えば中庸ですかね?
中庸でありたいと思っていますが、
これは難しいです。



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Unknown (文藝春秋12月号)
2012-12-16 22:12:00
う~ん、私がいいたかったのは「ここの常連は全員同じ考えだ!」とか「共産主義者だ」「日本共産党支持に違いない」とかいう内容ではないですよ(私もあくまで反消費税増税・TPP反対の立場ですからね)。

さて、選挙結果出ましたね。少なくとも、やはり文科系氏は「小選挙区比例代表並立制」を甘く見ていましたね。なぜ、自民党と公明党が“腐れ縁”ながら選挙協力をしているかというと、それをしないと間違いなく議席を減らすからです。小選挙区比例代表並立制では(もちろん例外もありますが)基本的には小選挙区で一位もしくは二位にならないと議席獲得には遠く、民主党も未来の党も“分裂”したわけですから、普通に考えて厳しい戦いでした。嘉田さんと小沢さんの誤算は「10年後に原発ゼロ」の風が80%くらいあるだろうと想定したことのように思われますが、実際はどうも「10年後に原発ゼロ」の風は30%くらいしかなく、それを主に3つほどの政党で分けあった感じですね。
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Unknown (文藝春秋12月号)
2012-12-16 22:18:56
あ、あと「維新」の石原氏はテレビで会計制度の「単式簿記」の弊害を語られていましたね。
そこのところは“是々非々”で、賛成(納得して評価)される方が多いと思いますが、いかがでしょうか。
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Unknown (保守←→左翼)
2012-12-17 02:50:30
雑感……1、考えてみれば、選挙戦中に「景気・経済」のことにまともに触れていたのは自民党だけだったなあ。2、「今回の選挙は(一票の格差で)違憲状態!」……けどね、基本的には前回選挙も同じ意見状態で行われたことを忘れずにね(与党民主党がさっさと小選挙区5減を実施してればよかっただけのこと。この上さらに比例を40も減らしていたら……!?)。
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