「安倍ちゃん、そのままガンバッテ！！」 大谷昭宏

　　　　　ガンバレ、駄々っ子安倍ちゃん
　　　　　　　　　― 災い転じて…皮肉にも改憲の動きが鈍化 ―

　私、このコラムにおいて再々、「いい加減にしてよ、安倍ちゃん」などと書きました。ここにその非礼を深くお詫び申し上げたいと存じます。そしていまこそ、高らかに「ガンバレ、安倍ちゃん」のエールを贈ろうと思うのです。

　何しろ一昨日行われた参議院選挙、自民党は予想を上まわる37議席という見事なボロ負けぶり。あの橋本さんでさえ44議席、宇野さんは36議席であっさり政権の座を放り出してしまったのですから、安倍さんもてっきりと心配この上なかったのですが、そこは例によって得意の駄々っ子ぶり。手足をバタバタさせて「ボク、やめないって言ったら、絶対やめないんだからね」。こうなったらもう誰も手をつけられません。

　選挙の直前、政治部記者から聞いたのですが、安倍ちゃんの首に鈴をつけられるのは、あの岸元総理の長女である、お母様の洋子さんと奥様の昭恵さんだけとのことでした。その二人がそろって「悪いのはまわりの人たち。佐田の玄ちゃんでしょ。それに産む機械の伯ジイでしょ、松岡のまっちゃんに久間のキューちゃん、そうそう、それにおじいちゃん同士があんなに仲がよかったのになんでしょうね、あの孫は。そう絆創膏の赤城のバンちゃん。まわりのみーんなが悪いの。晋ちゃんはひとつも悪くないのよ」なんて言ってたそうですから、ダミダこりゃ。

　でも、もう一人、やめてはいけませぬ、若殿様と言っていた男をお忘れになってはいけません。不肖、私メでございます。この安倍首相のお陰で思わぬことが起きているのです。

　これは北大の山口二郎教授などが指摘しているのですが、安倍首相の悲願、国民投票法を成立させ、着々と進めている憲法改正。皮肉にも、この改憲の動きが安倍首相のお陰でどんどん鈍ってきているのです。国民は改憲について、いま急いでやることはない。とりわけ戦争放棄の９条は国の宝だ。ちょっとやそっとで手をつけてはならないという流れになってきているのです。

　うれしいではありませんか。国民は賢者でリーダーシップを持った宰相が言い出した改憲なら、これは一理あるかも知れないと思うところでしょうが、何しろ手足バタバタの駄々っ子。ママと奥様しか諌めることが出来ないボクちゃんの言い出したことだから、これは慎重にしなくてはいけないと思い始めたのです。

　それに何より、私は安倍内閣が出来た時、新聞社で言えば、政治部ではなく、事件や不祥事を追う社会部ばかりが忙しくなると書きましたが、まさにその通り。伯ジイに、まっちゃんにキューちゃん、バンちゃん、ホンマに忙しくさせてくれました。こんな私たち社会部育ちが脚光を浴びる政権なんて、めったにあるものではありません。ぜひ、もう少しばかり楽しませて下さいませ。だから「ガンバレ、安倍ちゃん。ついでに洋子さんも、昭恵さんも」なのです。

（日刊スポーツ・大阪エリア版「フラッシュアップ」平成19年7月31日掲載）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ーネット虫－