月組、宝塚大劇場公演、無事に千穐楽の幕があがり、おりました。わたしは無事に映画館のライブビューイングで見届けることができました。お金がつきればいけないし、心身共に健康をそこなってもいくことができません。入口で検温でひっかかれば入ることができないので、ひとつひとつ、一回一回が当たり前ではなく奇跡なのだと思います。月組は2月下旬、『赤と黒』『出島小宇宙戦争』が突然千穐楽を迎えてしまって以来の舞台、ライブビューイングも直前にぶっとんでしまいました。すごく遠い日のことのようにも思えます。『WELCOME TO TAKARAZUKA』の桜が散りばめられた衣装と藤の花をイメージしたと思う舞台セットはもともと春に上演する予定だった公演なのだということを思い出させます。わたしは2月のはじめの時点で、どこでなにをしているのかわからないけれど、ぴあのプログラム付きチケットを予約していたのが幻になりました。そして激動の春から夏への時を過ごし、大劇場はまた遠くなりましたが、11月連休の東京宝塚劇場チケット、友の会の先行抽選で申し込んでみたら当選しました。光月るう組長が、東京にもまいりますと笑顔で言い切りました。たまきち(珠城りょうさん)は、このままの勢いで東京にもいきますと言いました。だから無事に上演できる、無事に会えると信じています。わたしはその時まで生き延びます、東京で待っています。月組はなぜかライブビューイングをみてから東京で観劇するというめぐりあわせ、三度目です。
たまきち、無事に千穐楽までたどり着いてほっとしたんでしょうね。なんどもかみながら、希望、光、笑顔ということばを繰り返し届けてくれました。目をうるませながら、今回も泣きませんでしたとセルフコントロール。「宝塚はゆるがない、タカラジェンヌはここにいます、わたしは幸せです、楽しいです、だから安心してください、わたしたちがみなさんを照らす光、みなさんはわたしたちを照らす光、お互い照らし合っている、次に会う時までみなさん笑顔でいてください、いろいろな事情で今回は劇場に足を運べなかったカメラの向こうのみなさんお元気ですか?みなさんの気持ちが許すようになったら是非劇場に来てください」。断片的なですがこんなふうに言ってくれました。『ピガール狂想曲』の中ではどなただったかな、アドリブで東京初日の11月20日という言葉が出ていました。ありがとう、たまきち、月組のみなさん。のぞコン、かちゃコンに続いて、自分たちだっていつ再開できるかすごく不安だったろうしこれからのことだって不安だろうに、一生懸命、夢と希望を届けてくれようとしてほんとにありがとう。気持ち、くさっちゃいけないですね。明日のことは誰にもわからない、未来の不安にまかれていても仕方ない、バスの中の葬儀屋とかお寺の永大供養の広告をみると考えてしまいますがもう少し先でもいいですかね、今は今、この一瞬しかない、一日一日、この時を生き延びていくのみ。
舞台は客席と演者、スタッフ、みんなで創り上げていくものだということを再認識。生演奏復活の日が待たれます。
帰り道、夕焼け色に包まれた富士山のシルエットがとてもきれいでした。この街にもどってきたことを実感。今日は暦の上では天赦日という、年に5-6回めぐってくる最上の大吉日だそうです。次は17日とか。土曜日が二日連続だったらいいのにとかそんなことは今考えない、明後日はまた休みだというのはお給料少なくなりますがプレッシャーはいささか軽いです。
『WELCOME TO TAKARAZUKA』、坂東玉三郎さん監修の日本物ショー。洋楽で日本舞踊は宝塚ならでは。久しぶりに植田神璽翁の登板、ビヴァルディの四季の冬、ドビュッシーの月の光など、どこかでおのずとなんども聴いたことのあるクラシックにのせてのショーはわかりやすく、みやすく、華やかでした。幕開きのチョンパ、これは劇場でしか味わえないものがあるので東京公演楽しみです。専科の松本悠里さん、大劇場を卒業されました。タカラジェンヌに年齢はありませんが80歳ぐらい?扇に思いをこめた舞、フィナーレではせりあがりにのって月組生たちが囲むという演出でした。2年前の宙組『白鷺の城』以来、東京がほんとうの見納め。
『ピガール狂想曲』はシェイクスピアの「十二夜」を20世紀のパリに移した原田諒作品、笑いあり、涙ありで楽しめました。映画館も笑い声がいっぱいでした。ピガール、モンマルトルの丘の麓にあるエリアだそうです。宝塚のレビューの聖地モンマルトル、実際にはそこにいくまで女性が一人で歩くには危ないと言われて、パリを訪れた時いきませんでした。こんなふうに活気あふれる雑多な歓楽街の雰囲気なのかな(コロナ禍の今はちがうと思いますが)。たまきちの双子の男女の演じ分け、お見事でした。女の子なのに事情あって一生懸命に男のふりをしていてそれを悟られまいとするジャンヌちゃん、うわさにたがわず可愛かったです。これは気持ちもっていかれますね。たまきちと上背がそっくりな双子の兄を最後に演じていたのはどなただろう、すごく気になります。美園さくらちゃんのガブリエル、花は自ら開いて咲くものという言葉通りの心が自立した女性を、たまきちのそばで安心してのびのび生き生きと演じているのが爽快でした。細く全身が引き締まったシルエットが浮かび上がるドレスの着こなしが一段と素敵でみていてほんとうに気持ちがいいです。デュエットダンスの淡いパープルのドレスもよく似合っていました。トップ娘役に抜擢されたころにきかれた批判的な声を納得させたと思います。なにもいわせない、見事な成長ぶり。月城かなとさんのシャルルも成長を感じさせました。ものすごい美人でオーソドックスなかっこよさの男役、三枚目キャラをカッコよく演じる力とロングトーンの歌声、星空を見上げながら舞台への思いを歌う場面は星組の原田作品『ベルリンわが愛』を思い出しました。いいところを自分でうまく出せるようになたのかな。鳳月杏さん、今回もおひげつけてダンディな紳士とガブリエルにゴーストライターをさせているくず男っぷりとのバランスが絶妙で笑いの間がうまい。すっごく綺麗な模様の入ったスーツの着こなしぶりもお見事。さくらちゃんと初の夫婦役、何をやっても安心してみていられる安定ぶりで月組の舞台を支えていました。
脳みそが休まる楽しい二本立て、東京公演も無事に上演することができて、自分、無事に観劇することができますように・・・。