これまで、女性は労働市場において補助的職務に限定され、また雇用調整弁となっていることを繰り返し記述してきた。しかし、働きがい、生きがいといったテーマはOLだけのものではないはずだ。基幹的な「男の職務」に従事している男性たちは、仕事にやりがいや生きがいを見出すことができているのだろうか。この章では、こうした点を中心に、OLを取り巻く現代社会について概観したい。
何のために働くのか?こうした壁にぶち当たるのは、女性だけではないはずだ。 現代社会は、「より早く・効率よく」を合言葉に、スピード化・効率化を目指して進んできた。いかに効率よく仕事をこなすか。いかに効率よく時間を使うか。コンピュータの普及、携帯電話、家事の簡略化。そのために様々なものが開発され、進化した。だが、便利になるということは、必ずしも豊かになるということではない。
近年は、男性の会社人間としての働き方に疑問が出されている。80年代バブル景気の頃は「24時間戦えますか」と働かされ「過労死」するサラリーマンが現われ、バブル崩壊後の90年代半ばには企業のリストラの一環として人員整理の対象となるサラリーマン、また企業が倒産して失業するサラリーマンが現われている。あれほど会社のために尽くしたのにという失望感や夫だけが働いていることのリスクを見せつけられている。一方、家庭の中でも会社中心で家庭のことを省みない夫に対する不満、家のことは任せたと相談に乗ってくれない夫に対する失望、コミュニケーションのない冷めた夫婦関係から生じる孤独を感じる妻も少なくない。経済的な豊かさが、必ずしも心の豊かさをもたらすとはいえないのだ。真に豊かに生きるということについて触れていきたいと思う。