2024年9月11日(水)17時45分~、帝国劇場
無事観劇することができました。気温がぐんぐあがり湿度も高くて体にこたえましたが荒れることはなく、不安神経症に打ち勝って汗だくになりながらなんとか15時半ごろには部屋を出てバスと電車に体を乗せることができました。外は日本人ってほんとに陰険だなあと思うことが多いこの頃、劇場内は杖ついてあるいているばあさんに譲ってくれたり声をかけてくれたり、スタッフさんにもお世話になりました。幕間お手洗いに並んだとき優先的に案内しましょうかという案内に今回は甘えました。ありがとうございました。ロビーの椅子を譲ってくれた30代ぐらいの女性の方もありがとうございました。終演後階段下りるまで鞄持ちましょうかと後ろから声かけてくれた30代ぐらいの女性の方もありがとうございました。素直に持っていただけばよかったかなとあとから思ったりしています。甘え下手、心遣い本当にありがとうございました。きっと、ゆん(古川雄大さん)が優しいからファンも優しい方が多いのでしょう。客席は鏡だあと思いました。ありがとうございました。
何度目かの『モーツアルト』、ゆんは最後との思いでやっているだろうし、初演から出演している市村正親さん、山口祐一郎さん、アンサンブルキャストの数名の方が年齢を考えると最後だろうし、わたしが帝国劇場で観劇するのも最後。3月30日の研音イベントでゆんの「僕こそ音楽」を聴くのは最後かと思いましたが、こうして帝国劇場で見届けることができました。
まずはアマデが素晴らしい。初日に舞台稽古なしのぶっつけ本番だったと紹介されていた若杉葉奈ちゃんでした。小柄でこましゃっくれてちょっと生意気な感じがなんとも可愛い。アマデはヴォルフガングの一部で、やがて憎しみの対象となっていくというところがよく出ていました。2幕終盤、銀橋でおちゃらけたヴォルフガングがアマデの宝石箱を取り上げてしまうとそれはお前が触れることのできないものだから返しなさいと言うように右手を出すところ、ぞっとするような静けさ。ヴォルフガングが幼い日に皇帝陛下からいただいた箱はアマデだけのものでヴォルフガングは持つことを許されない=ヴォルフガングは神童と呼ばれた幼い日の自分を超えることができなかったということか。としたら人生はとてつもなく残酷で切ない。最後に箱を開いたナンネールは何をみたのか、答えは観た人それぞれの中にあるのでしょう。毎回思うことですが子役ちゃんたち、どう作品世界を理解し動線を覚えているのか、指導されている方が力を引き出すのに長けていて有能なのでしょう。アマデがヴォルフガングと拮抗する存在感を出せないとこの物語は成立しないのでお見事でした。アマデがみえているのはヴォルフガングだけ、そりゃコンスタンツェにしれみればヴォルフガングは一人で喋っているようにしかみえないわけで気が狂ったのかと驚くの無理ない、終盤コンスタンツェは怯えるように坐り込んで頭抱えているのだと今さらの気づき。
コンスタンツェがどういう人だったのか、なかなかとらえづらく演者にも答えはないのかもしれません。真彩希帆ちゃん、その時々の相手との呼吸、空気感を感じながらコンスタンツェとして生きているんだろうなと思いました。ヴォルフガングと出会ってときめいた少女時代から死後墓場を暴く場面に立ち合うところまでの演じ分けがとてもわかりやすかったのは宝塚で培ったヒロイン力、ワンスで少女時代から晩年までを演じた経験が見事に生きていると感じるコンスタンツェでした。「ダンスはやめられない」を聴きながらコンスタンツェもまたとてつもなく孤独だったのだと感じました。夫とのすれ違いをダンスで埋めようとする苦しい歌ですね。退団公演では細い針に糸を通すような繊細な歌声をとウエクミ先生に求められた経験も生きていると感じた歌声。天才であるヴォルフガングを支え力にならなければとあがくも自分にはできなとわかっているはがゆさ、至らない自分との葛藤。素敵なコンスタンツェになっています。天使の歌声がコンスタンツェとして帝国劇場に舞い降りたのもまた奇跡。プラター公園でヴォルフガングもくるくるとバレエのように回っていたのは真彩だから?演出が変わった?前回まで黄色だった衣装が美しい黄緑色になっていたのも真彩ちゃんの個性にあっているか。
何度目かのたーたんヴァルトシュテッテン男爵夫人、「星から降る金」の物語るような、まろやかな歌声はより熟成されてきました。星組OGの華鳥れいらさんが歌っているのを動画にあげているのをみて、歌いこなすのはものすごく難しい歌なのだとあらためて思いました。自分がどう考え歌うか、軸がしっかりしていないと振り回されてしまう歌。歌う人によって見事に違ってくる歌。ヴォルフガングをウィーンへと誘うヴァルトシュテッテン男爵夫人、女神のような微笑みの裏に策略があるようにみえたたりみえなかったり。キラキラドレスの着こなしは男役だっと思えず、でも男役時代の映像みると今も大好きだし退団後大活躍し続けている姿も大好き。客席は男役時代をリアルタイムで知っている人が少なくなってきているか、でもまだわたしのようにいますね。
ヴォルフガングを待つパパとナンネールが切な過ぎたこと、ゆん渾身のヴォルフガングの人生、生きることはほんとに難しくて闘いの連続で残酷なものなのだと感じたこと・・・長くなってきたのであらためます。まだまだ気づいていないことがたくさんあるであろう、壮大な作品。思わず力が入ってしまうので演者も観客も心身共に健康度高くないと成立しませんね。
オーケストラ、お姿はみえませんでしたが今回もカーテンコールが終わると観客のために演奏してくれました。ゆんは最後一人で幕前に登場して三方向にとっても丁寧にお辞儀していました。