
2025年2月22日(土)17時30分~日生劇場
ものすごい寒さでした。場所によって雪がちらついたようです。風が吹きすさぶなか出かけたものの低体温症気味で電車の中でも芯から冷え切ったまま、首の後ろも腕も冷え切ったままで全く体が温まらずでしたが劇場の中では冷えがおさまってきました。体温あげる力が体にちゃんとありました。よかったです。あまりの寒さにかなり壊れていました。見知らぬ方々に迷惑かけたり親切にしてもらったりしながらなんとか無事に日比谷を往復できたことは別途書きました。
ギリギリのタイミングで幕開きに間に合いました。始まってから10分間は客席に案内できないということでファントムの登場からコニーアイランドまでは階段で観劇、その後スタッフさんの案内で席につきました。ほどなくしてマダム・ジリーの書斎でメグ・ジリーとの場面が始まったところで舞台監督さん?のアナウンスが流れました。舞台装置の安全確認により5分ほど中断、スタッフさんが何人か舞台上で作業される様子を観客全員が静かに見守りました。再開のアナウンスが流れたときは拍手。大掛かりな舞台装置です。誤作動をどのように感知するシステムになっているのかわかりませんが安全に上演できるよう舞台袖とモニターで見守って下さっているおかげで舞台は成り立っているのだということをあらためて認識しました。一回一回、多くの見えない力があってこその舞台。芳雄さんがカーテンコールでよく言っていますね、自分たちは歌って踊っているにすぎない、後ろにいるたくさんの見えない方々のおかげで舞台はあると。グスタフは最後の最後までいるので子役ちゃんの終業時刻が気になりましたが無事に終了し、カーテンコールはアンコール一回。最後にオーケストラが観客のために演奏してくれる至福の時間、また『ラブ・ネバー・ダイ』を観ることができたという満足感。人間関係の複雑な糸と音楽が絶妙に絡み合って観る者の心がおずのと世界観へと誘われるます。豪華な舞台装置と衣装、キャストの歌唱、よくできているなあとあらためて思いました。
千穐楽間近で熱量マックスの舞台でした。平原綾香さんクリスティーヌの「愛は死なず」、ますます磨きかかった素晴らしい歌声でした。最後のオペラ歌手のような高音ソプラノ、震えがきました。客席からブラボーのかけ声。これはOKでしょう。カーテンコールではすごく嬉しそうに飛び跳ねていたのでご自身大納得のパフォーマンスができたということでしょう。2014年の初演のときは芝居から歌、歌から芝居への流れにぎこちなさがありましたがその後舞台の経験をかさねて情感豊かなクリスティーヌとなりました。グスタフが、歌うためにドレスアップしたクリスティーヌの姿に、お母さまとってもきれいという場面がありますがほんとにきれい。石丸幹二さんとの「月のない夜」も聴きごたえ、見ごたえたっぷりでした。なかなかに妖しい歌ですが力のあるお二人による歌の掛け合い、駆け引き。石丸さんファントムの歌声も冴えわたっていました。オペラグラスを持っていきませんでしたがグスタフは自分の子供だと知らされて仮面の下の醜い顔が露わになるところ、なんとかわかりました。『オペラ座の怪人』では怪しい仕掛けでクリステーヌを邪魔する奴を次々と殺めてきたファントムのなんとも哀れな姿がさらけ出される残酷な場面。空白の10年間に想像の翼を羽ばたかせながら一気に見入りました。
ラウルは加藤和樹さん、とにかく声がカッコいい。『レディ・ベス』初演を思い出すと、このあとものすごい数のミュージカルでプリンシパルキャストをつとめて何本かはみているので欠かせない存在になったことがなんともしみじみ感慨深いものがありました。なかなかにこじらせているラウル、クリステーヌが歌ったことでファントムとの賭けに負けて去り最後はひとことも発することなく終わります。『エリザベート』のフランツのように、発散する場面のない辛抱のいる役なのだと思いました。クリステーヌへの愛情はたっぷり。クリステーヌ亡き後、グスタフとの親子関係はどうなったのでしょう。毎回気になります。
星風まどかちゃんメグ・ジリー大優勝という清史郎君の感想に納得。「水着の美女」の場面ノリノリでみてしまいました。下世話といえば下世話な歌で再演ではゆうみちゃんとねねちゃんが演じていましたが娘役ヒロインからの大転換。宝塚時代より背が高く見えたのは男役さんが隣でなくなったからかな。ファントムのために娼婦までやってきたのに彼はクリステーヌしかみていないと母親からきかされたときの狂気、嫉妬に狂う感じがよくでていました。空白の10年間があっての今のメグ・ジリー。暗がりのなかでグスタフを連れ去るところ、確認できました。グスタフを道連れにしようとする場面、実は全力で子役が橋から落ちないよう掴んでいるというのは初演のとき笹本玲奈ちゃんが明かしていたのだったかな。まどかちゃんが生き生きと楽しそうに演じていて何より。
メグ・ジリーのお母さんマダム・ジリーは春野寿美礼さん、男役宝塚OGのポジションになっている役どころのひとつ。背が高いので一幕の終わりを背負うに充分な舞台映え。ぞくっとするような陰湿さがよく出ていました。ジリー親子の歌と台詞から想像する空白の10年。ファントムのためならなんでもやってきた二人の絵を思い描きながら観劇。それぞれの想像力に委ねられるようにうまくできています。
