中国における日系企業への狼藉は日本におけるものづくりを真剣に考える良い機会だ。ユーロ安やウォン安でドイツ企業や韓国企業の躍進を目のあたりに見ると、円高が大きな要因であることは間違いないが、電機産業の凋落は安易に海外での工場建設と知的財産の流出が揚げられる。地方の多くの工場が閉鎖され、地域経済に大きな影響を与えている。
日本政府はこの20年間ほぼ民間のことだと放置してきた。日本には世界一の貯蓄があり、資金が有り余っているのに、最先端技術を要するエルピーダやシャープが苦境に陥っても外資に支援を求めてきた。日本航空のような支援は無理だとしても国内資金によるスキームを作ろうとする動きは見られなかった。外資に買われることは技術が流出することを意味する。通産省時代であれば産業政策の重点項目として直ちに支援へ動いただろう。
今日の報道によれば、業績不振のルネサスエレクトロニクスを官民一体で再建する買収計画がようやく動き出したようだ。産業革新機構とトヨタ自動車やパナソニックなどの官民連合による出資額は1000億円を上回るとのこと、米国のファンドKKRが更なる人員削減や債権カットを条件に1000億円出資を申し出ていることに対抗しての行動だ。
ルネサスは昨年の大震災で被災し、自動車用マイコンの生産が遅れ、自動車各社の生産に大きな影響を与えたことは記憶に新しい。世界の自動車用マイコンのトップメーカーなのに何故赤字なのかという疑問があり、ドイツの半導体大手は「今の品質なら価格が数倍でも売れる」言っている。ルネサスの取り分が自動車メーカーに入っていると考えられる。
ルネサスはすでに地方にある19の工場の半減と5500人の人員削減を決めている。米系ファンドは買収し、更なる人員削減と銀行などに債権カットを求め、再建を軌道に乗せた後、どこかに売却するのが常套手段だ。当然先端技術は売却先に流れるわけだ。ものづくり拠点をこれ以上撤退させない産業政策が求められる。成長政策以前の課題だ。