インドネシアの労働運動に長年携わってきたインドネシア労働組合総連合会(CITU)の前会長で私の20年来の友人であったタムリン・モシイ氏の訃報がもたらされた。彼はパナソニックインドネシアに入社し、同労組の委員長からインドネシア金属労組の書記長、委員長を歴任し、日系企業の労働問題に苦闘された。引き続き、NGOの「インドネシア社会開発センター(ICEDA)」を設立し、良好な労使関係を目指すコンサルティング活動で多忙を極めたがついに病に倒れた。
日系企業にとってインドネシアは重要な生産拠点であると同時に市場であることはいうまでも無い。高度成長の中で賃金闘争も激しさを増しており、モシイ氏の存在は大きかっただけに残念だ。
この4月、インドネシアの日系企業の労使関係や経済、社会問題について語ってもらい国際労働財団のメルマガニュースに掲載した。主な内容は以下掲載するが、全文は同財団のWebを開け、メルマガニュースを参照されたい。
質問 インドネシアの労働組合とCITUの後継者にどのようなことをアドバイスしますか。
モシイ氏 普遍的な労働組合の目的や将来の展望を把握し、広い視野を持って活動を実行することです。特に自由、民主的、独立、代表制、責任感を意識すること。ディーセントワークを求め、貧困を無くすことも重要です。労使の協力を通じて調和のとれた公平な労使関係を構築し、ストライキやロックアウトを避けることです。
特に重要な点は、[1]職場で搾取が行なわれてないか検証する[2]職場で中核的労働基準と基本的権利が守られているか把握する[3]労使紛争が起きた時には過激な行動は取らず、まず社会対話とお互いが有益となる解決策を見出す――ことです。すべての労働組合活動家は、この行動基準を守ってもらいたいと思います。
質問 これからのインドネシアは経済大国へと発展し、日本からも新規に投資する企業が多くあるが。何かアドバイスは
モシイ氏 新規投資会社とその労働組合は、①企業の労務政策は企業文化の一環として重視すること②労務政策は企業文化であると同時に関係するステークホルダーに対する企業の行動規範であり、単なるスローガンではない③労務政策は企業文化の中核をなし、労使関係の行動規範として作用すること――などを理解してほしい。
また多国籍企業では、現地と自国の文化が混じり合い、労使関係の行動規範がより良い方向へ統合されることが望ましいでしょう。労使関係が成功するキーポイントは両者が学び合い、最良の文化を築くことだと思います。