「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、TPP交渉参加に反対するという自民党の公約だが、これは逆にTPP交渉に参加しますよという合図だったのだが、こうしたレトリックは政治家としてよく使う。シンガポール以外の国では聖域なき関税撤廃などあり得ないことは判っていて、低いハードルを設定したのだ。
自民党内反対派のバックには農業団体や医師会など既得権益の塊にたいする目くらましに使ったわけだ。反対派の政治家は低いハードルだと判っていながら姿勢は聖域の細かいことは触れずに断固反対を唱えている。
思い出すのは、普天間基地移設で最低でも県外と言って政治生命を絶たれた鳩山元首相だ。こちらは実現可能な腹案もなく最高のハードルを設定してしまったところに失敗の原因があるが、政治家としては未熟だったと言われても仕方がない。この点、安部首相とそのブレーンは実に単純なレトリックだがそれは反対勢力を押さえ込むのに有効だった。
今後は断固反対と言っても通らないので、何をもって聖域とするかという議論に反対派も引き込まれざるを得ない。聖域に押し込む品目間の闘いとなると、条件闘争に早く鞍替えした方が得をする。安部首相の戦術としては、聖域品目をなるべく多く決めざるを得ないので絞り込みは最後の段階まで引っ張り、頑張ったがこの品目は外国の反対が強くダメだったとして国内対策に補助金を出すというこれまでのやり方で収めようとするだろう。