日銀の異次元緩和で今年は60兆円ものお金が供給され、唯一はっきりした成果は円安だろう。1年前の1ドル70円台が100円前後になったのだからプラス、マイナスの効果は大きい。製造業で言えば、海外生産より国内生産で耐えてきた企業にとって盆と正月が1度に訪れたような効果だ。その典型例が富士重工で、特色ある車で米国市場を中心に頑張って輸出比率は7割になっている。4~6月期の営業利益は前年同期比4倍という円安効果だ。
逆に現地生産を優先させ国内生産を縮小させたメーカーは輸入製品のコスト増で円安はマイナス効果になる。猛暑でエアコンが爆発的に売れているが経済産業省の統計では日本で販売されているエアコンの半分は海外からの輸入品で、場合によっては円安のおかげで売れば売るほど赤字になる事もある。
例えばパナソニックは白物家電(エアコン、冷蔵庫、洗濯機)の半分を海外で生産している。仮に円相場が1ドル=105~107円まで下落すると「1円円安になるだけで、10億~11億円営業利益が下がるマイナス効果」(高見社長)がある。このため、同社は現状の海外生産態勢を急遽見直し、国内生産比率を3割から5割に戻すことを決めた。柔軟に国内生産比率を高められるパナソニックのような企業ばかりでなく、円安を恨めしく思っているメーカーもあることだろう。