ソフトバンクが英国のアーム社を3.3兆円で買ったというニュース、多分日本人が買った史上最高の買い物ではないか、孫さんというオーナー社長だからできる芸当だ。アーム社は半導体設計に特化した会社で低電力の設計思想を盛り込んだ超LSIチップはスマホや携帯電話のCPUに採用されている。私のドコモの携帯Foma、IPhone、IpodのCPUはアームの設計によるものだ。ケンブリッジに本社を置くこのアーム社1990年創業、純資産2700億円、従業員3300人の製造部門を有しないエレクトロニクスメーカーだ。
この会社を7月の株価1200ペンスをプレミアムを付けて1700ペンスで買うという。日本のエレクトロニクス業界の時価総額を見ると、三菱電機2.7兆円、パナソニック2.5兆円、日立2.3兆円、だから3.3兆円あれば理論的にはよりどりみどりで買える。半導体の雄の時価総額は富士通8338億円、NECは7371億円、2社をまとめ買いしても1.6兆円にすぎない。ソフトバンクの買い物が如何に爆買いだったかが解る。
2015年6月21日のブログで孫さんが副社長に145億円を出してニケシュ・アローラ氏をスカウトしたが、1人の人間にそんな価値はあるのかと疑問を呈してソフトバンクよサヨナラと書いた。結果的にはこの人事、失敗で無駄使いであったが、今回は額も巨額だし、将来を買うとしても雲を掴むような話でマーケットの反応は冷たく株価は下がった。英国のメイ新首相もそんなに価値がある会社だとビックリ、急遽孫社長に会って礼を尽くした。英国のEU離脱でポンドがおおきく下落したことも孫さんの決断を促したと思うが、メイ首相にとってみれば孤軍奮闘の中で明るいニュースであったことは間違いない。
エレクトロニクス業界に少しでも身を置いた自分としては、かつての通産省も半導体各メーカーもDRAMでの価格競争に韓国メーカーに太刀打ちできず、システムLSIに活路をと唱えていたが、アームのような企業が出てこなかったのが残念だ。おそらく日本の半導体研究者はアームの10倍以上もいたと思うが、狙うところが間違っていたのだろう。