カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

030「海原」より ・ 兄が愛した海

2014-08-06 17:54:40 | 和モノ好きさんに100のお題
 港町の高台にある病院の窓から海を見下ろしながら、あの海は別の世界に繋がっていて何処にだって行けるのだと目を輝かせていた兄は、結局この町から一歩も出ることなく短い生涯を終えた。
 だから私は船を出し、兄の遺髪を沖合に流してやった。これで例え別の世界に辿り着けなくても、兄は海に抱かれて眠ることになるだろう。
コメント