以前読んだ伝奇小説で、枯れた桜の巨木の根に抱かれながら眠る白骨という描写があった。
遙か昔に纏っていた筈の血肉や臓物は、やはり遙か昔に桜樹に吸い上げられて薄紅となって散り、もはや紅の抜けた骨色と成り果てた花弁の彩りすら絶えて久しい桜樹が、やがて自身も骨と成り、檻と化して絡みつく中で、尚も滅びの夢を紡ぎ出し続ける白骨。
その眠りが深く平穏である事を、今は祈ろう。
作者註・文中の「伝奇小説」は荒俣宏著「帝都物語」です。
遙か昔に纏っていた筈の血肉や臓物は、やはり遙か昔に桜樹に吸い上げられて薄紅となって散り、もはや紅の抜けた骨色と成り果てた花弁の彩りすら絶えて久しい桜樹が、やがて自身も骨と成り、檻と化して絡みつく中で、尚も滅びの夢を紡ぎ出し続ける白骨。
その眠りが深く平穏である事を、今は祈ろう。
作者註・文中の「伝奇小説」は荒俣宏著「帝都物語」です。