うちの応接間にあった高い棚には通いの薬売りが中身を補充する薬箱が置いてあって、定期的に現れる薬売りは「子供さんに」とゴム風船をおまけにつけてくれることがあった。風船には正露丸や何やら薬の名前や商標が印刷されていたが、一つだけ女性の名前と読めない漢字があったのでお爺ちゃんに聞いたら顔色を変え、その晩から体調を崩してしまった。
結局お爺ちゃんはそれから寝たきりになり、春を待たずに亡くなったのだが、その間中、とうに鬼籍に入っていた祖母ではない女性の名前を呼びながら許しを請い続けていたという。
結局お爺ちゃんはそれから寝たきりになり、春を待たずに亡くなったのだが、その間中、とうに鬼籍に入っていた祖母ではない女性の名前を呼びながら許しを請い続けていたという。