カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

094「路地裏」より ・ 喰らう少女

2014-10-09 21:06:03 | 和モノ好きさんに100のお題
 蝋石で道路一杯に描かれた絵は子供にしては達者なものだった。何を描いたのかと少女に訊くと妖怪だという。何処で見たのかと訊くと此処で見たという。妖怪はどうなったと訊くと食ったという。美味しかったと笑いながら開いた口元には人間の幼児とは思えぬ乱杭歯がぞろりと覗いていた。
「お兄ちゃんは羽根が生えているんだね、鶏肉みたいな味かな」


 どんな時代でも子を捨てる大人は存在し、大人の庇護を失った子は実にあっさり死ぬ。恐らくは少女も飢えて力尽きたのだろう。
 だが、どれだけ哀れであろうと、むしろ哀れであるが故に、滅する以外の方法は無かった。
コメント