私が初めて鬼を見たのは五歳の時だった。夜中に目を覚ますと客間から怒鳴り声が響いてきて、けれどそれが母の声だと知ったのは、こっそり覗いた客間で声を張り上げる女の顔を見てしまったからだった。翌日から父は姿を消し、二度と戻らなかったが理由は知らされず、私は父が鬼に喰われたと信じた。
あの日、私をあれほど怯えさせた鬼が何処から来たのか知ったのは、背に包丁を突き立て血まみれの姿になって足下に転がるあの人から視線を外して顔を上げた時、鏡の中から今の私を見据える姿と対峙した瞬間だった。
私の心を食い破って表に現れた、哀れで醜い鬼の貌。
あの日、私をあれほど怯えさせた鬼が何処から来たのか知ったのは、背に包丁を突き立て血まみれの姿になって足下に転がるあの人から視線を外して顔を上げた時、鏡の中から今の私を見据える姿と対峙した瞬間だった。
私の心を食い破って表に現れた、哀れで醜い鬼の貌。