カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第五十五夜・私が捨てなければならなかったもの

2017-08-18 21:49:44 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『みをつくしても』と『消炭色』を使って創作してください。

 献身は必ずしも報われるものではないということを、小さい頃から家族に嫌と言うほど教え込まれてきた。
 両親が笑顔で褒めるのは決まって兄か妹で私はいつだって出来損ない扱いさ、兄妹も常に私を小馬鹿にした態度しか取らなかった。
 だからなるべく早めに家を出ようと準備をしていたらお前が居ないと困ると全員に反対され、彼らが誰か一人を生贄に家庭内の和を何とか保っていたこと、そして皆それに気付いていることを知った私は、消し炭のように冷え切った心の中に僅かに点った熾火が自分を含めた周囲を残らず灼き尽くしてしまう前に家から逃げ出した。
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