夕焼け色のペンダントブローチ
良く解らんが魔王が復活するらしいので一応は勇者の血を引く妾腹王子の俺が魔王討伐に不可欠の聖剣を探す羽目に陥った。先の戦いで砕かれたという聖剣の欠片で最初に見付けたのは柄の飾り石で、ブローチ仕立てにされて骨董品屋の棚に並んでいるのを見た時は脱力するしかなかった。
羊の頭骨
頑固な犬族の老人が所有していた聖剣の欠片を譲って欲しいと頼むと、代わりに古くて乾いた羊の頭骨を寄越せと言われた。肉屋で手に入れたものは突っ返されたが、骨董品屋で見付けたものを見せるとコレだと喜んで欠片を渡してくれた。一体何に使うのだろうと尋ねたら好物だそうだ。
義眼
聖剣の欠片は要するに力の結晶で、たまに信じ難い外見に変わるらしいが、三人の年老いた魔女が代わる代わる使っている魔法仕込みの義眼がそれだった。仕方なしに代わりの義眼を必要分だけ用意して渡したが、誰がどの義眼を使うかの争いで凄まじい騒ぎになったので早々に退散した。
毒薬瓶
自害用に作った毒薬に相応しい瓶を用意してくれと言われても既にああそうですかとしか思わなくなった俺だが、同行していた幼馴染の騎士が自殺は大罪だと叫ぶ。しかし神の摂理から外れたモノにもそう言えるのか、何より聖剣の欠片は儂が喰らい死なねば取り出せぬと老人は嗤った。
古文書
ようやく聖剣の欠片を集め終えて帰還することになった晩、幼馴染の騎士は骨董品屋の片隅にあった古文書を購入して読み終えた後、本当に城に帰るのかと訊ねてきた。他にどうするんだと訊ね返すと黙り込んだが、意外に楽しかった旅が終わるのが残念なのだろうと深くは聞かなかった。
追記
この後、復活した聖剣を帯びた妾腹王子は幾つかの選択を迫られ、その結果のマルチエンディングとして国王になったり魔王になったり幼馴染と殺し合ったり共に逐電したりするわけです(無責任)