カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第九十五景・お屋敷から吹く風

2019-05-03 21:12:46 | 桜百景
たかあきは、風の隣家と桜の葉に関わるお話を語ってください。

 うちの隣にあったお屋敷の庭は沢山の樹や花が植えられていて、風が吹くと散った葉や花弁がうちの前にも吹き込んできて掃除が大変だった。祖父母はお福分けだと気にしていなかったが、二人が亡くなると神経質な母はお隣に文句を言い続け、やがてお隣が引っ越してお屋敷が更地になった頃、うちの身代も傾いた。
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骨董品に関する物語・小さな立体写真のセット

2019-05-03 20:30:10 | 突発お題

 ここから見える建物は父さんの母校なんだぞと自慢気に渡された箱を覗いても、僕にはただの写真が二枚並んでいるだけにしか見えなかった。けれど母さんも妹も本物みたいで凄いと喜ぶので、結局は僕も見えるふりをするしかなかった。やがて成長した僕は父さんと同じ大学に入学したが、たまに校舎が平板な写真にしか見えなくなって困る。
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骨董品に関する物語・極めて小振りの印章

2019-05-03 19:09:14 | 突発お題

 うちの親方は変わった人で、たまに注文もないまま緻密極まりない細工物を作ることがあった。勿論それは売り物ではなく親方の技量を示す見本として使われるのだが、どんなに見事な細工だと周囲に絶賛されても、若い頃に見た異国の旅人が荷物に吊るしていた細工物の緻密さにはとても及ばないと、親方の顔は常に晴れない。
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骨董品に関する物語・初夏に似合う花模様のカラフ

2019-05-03 13:35:45 | 桜百景

 あまり酒の飲めない友人は、だからこそきめ細やかに酒を楽しみたいと器にこだわる。グラスやゴブレットの類は一通り欲しいものを集めたと言って今度は瓶から移した酒を注ぐ為の細長い器を探し始めたが、最終的には昔読んだ本に出てきた、たんぽぽのお酒に似合う器が欲しいそうだ。
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