カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

招き猫

2016-03-17 01:45:09 | 依頼です、物書きさん。
記憶を失った画家と頼りになる相棒との感動系の話

 交通事故に遭って以来自分のことを忘れてしまった衝撃で呆然と暮らしていたら、ある日、やたらと馴れ馴れしい一匹の猫が必死に付いてこいと言う素振りを見せるので言う通りにしたら毎回『これは絵になる』と思える風景の前で止まっては『にゃあ』と鳴いた。やがてそれがかつて自分が絵に描いた光景と同じだと気付いた時、僕は今まで一緒に暮らしていた猫の名前を思い出していた。

「ああ、お前だったのか……ヘンリ」

 世界的な文豪に『お前は私に名前をくれた』と言わしめた気紛れな猫と同じ名前をした僕の猫は、一声嬉しそうに『にゃあ』と鳴いてみせる。
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人形の涙

2016-03-16 01:20:05 | 依頼です、物書きさん。
とある悪女と愚鈍な「かみさま」が、泣かない少女を観察する物語

 うちの娘、顔立ちは良いくせに全然可愛げがないのよと吐き捨てる女に、男は俺の娘になるんだから会わせてくれと言った。そして実際に少女に会った男はプレゼントを贈ったり遊びに連れ出して歓心を買おうとした。だか少女は男が新しい父親、と言うよりは女の夫になって一緒に暮らすようになってからも一向に泣きも笑いもしないまま、やがて二人を刺し殺した。
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シンプル・プラン

2016-03-15 00:15:15 | 依頼です、物書きさん。
自分に自信のないモデルとその人物に飼われている《ペット》とのガラス越しの物語

 いつまでモデル業を続けていられるのかを考えてしまうと必ず酷い恐怖に襲われるので、そういう時は部屋の水槽で揺らめいているクラゲを見ることにしている。半透明なゼリー状の触手が規則正しく蠢く様を見詰めていると、何だか別の世界に迷い込んだようで心が落ち着く。そして、決してこの世界を喪まぬよう、これからも仕事を続けて行こうと思えるのだ。
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彼女の思い出

2016-03-14 00:10:36 | 依頼です、物書きさん。
寂しがり屋な大学生と謎の多い友人が記録した「写真」に纏わる物語

 誰だと思うと聞かれた写真には、友人に良く似た可愛らしい女の子が写っていた。お前の親戚か姉妹じゃないのかと言うと該当者は居ないという。そんな訳で単位修得も決定した春休みに僕と友人は彼女の正体を求める小旅行に出て、そして僕は、恐らく知ってはならなかった友人の秘密を知ることになった。
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明朗会計仕事人

2016-03-12 02:45:31 | 依頼です、物書きさん。
いき過ぎた正義感を持つ青年ととことん職選択をミスってる契約社員、どちらかの大切な人が犯人のサスペンス

 正社員に昇格したら彼女に求婚するんだと、どう考えても死亡フラグでしかない発言をしてきた友人を諫めた。そうしたら、良い子だからとにかく彼女に会ってみてくれと懇願されたので食事に同行したら紛れもない事故物件だった。その日から俺の周囲であからさまに不穏な事故が多発し始め、終いには友人にもその累が及んだので反撃することにした。
 結局、友人の家の金目当てだったらしい彼女は『失踪』し、友人は傷心のまま契約社員を続けている。
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愚者の贈りもの

2016-03-10 00:44:07 | 依頼です、物書きさん。
現実を見ようとしないモデルとプライドがカス程もない良家の跡取りとの愛をテーマにした話

 モデル業の仕事が減り、若さも美も永遠ではないのだと何となく思い始めた頃、私は『貴方の美に僕の全てを捧げます』と求婚してきた良家の子息の申し出を受けた。彼は惜しみなく私にお金を寄越し、贅沢な生活に慣れきった私が他の男と遊んでも笑っていた。だが、彼の家が破産した時に私がようやく彼への愛を自覚した時、彼は私に対する最後の贈りものだと自らの命を絶ち、私に対して自由と多額の保険金を残した。
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幸せの及ばぬ力

2016-03-09 00:38:08 | 依頼です、物書きさん。
恥ずかしがり屋の受験生と迷子の子どもが、期間限定の友人になる話

 大学に入る前、家庭教師に勉強を教わっていた。初めは部屋に来て貰っていたのだが、先生の家が学校のすぐ側にあったので私が通うようになった。そこには小さな男の子が居て良く挨拶してくれたが、もうすぐ此処には居られなくなるのだと哀しそうに話してくれて、やがて私が大学に合格して東京で暮らすことが決まった頃、町は津波に流されて壊滅した。
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貴方の為だけに

2016-03-08 01:28:49 | 依頼です、物書きさん。
大切な人をずっと待っている天才とその人物を誰より憎む人物、二人にとって余りにも短かった数年間のお話

 あの子は死んだのよという私の言葉に、彼は決して耳を貸そうとしなかった。そしてひたすらその帰りを待ち続けながら、己の天才的な才能を駆使して彼女の絵を何枚も、何枚も描き続けた。やがてそれに耐えられなくなった私は彼のアトリエに忍び込んで彼女の絵を一枚残らず引き裂き、それ故、彼は自らの命を絶った。
 これで私は彼女と彼、自分の親友を二人とも殺したことになる。
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色恋沙汰も金次第

2016-03-07 02:03:18 | 依頼です、物書きさん。
恋し方を知らない浮気男と異常に人目を気にするチンピラが記録した「写真」に纏わる物語

 女に手を出されて面子が立たないという理由で締め上げた優男は、証拠の写真を突き付ける俺に、彼女とのことは遊びだったときっぱり言い切った上で、この写真を自分にもくれと迫ってきた。何でも偶然に映り込んだ相手から搾り取れそうだというので、俺は写真を渡して後日、多額の報酬を得ることになった。
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趣味と仕事と私生活の両立について

2016-03-04 19:29:29 | 依頼です、物書きさん。
誰も信じない会社員とそれを監視(或いは調査)してる人物が、人生を賭けたゲームをする話

 彼が娘の結婚相手に相応しいかを調べて欲しいというのが今回の依頼だった。調査を開始すると彼は極めて清廉潔白な日常を送っていて、一つだけ難癖を付けるなら隠れ映画マニアの上に重度のコレクターである事だった。しかもその中には俺が長年探し求めていたブツがあり、俺は今、彼に全てをぶちまけて土下座してでもグッズを譲って貰うか、或いは犯罪に手を染めるか、つまり趣味と仕事のどちらを取るかで真剣に悩んでいる。
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