都内でも有数の閑静な住宅地に建つ
渋谷区立松濤美術館は、コレクションを持たず、
分野や時代にとらわれないバラエティー
豊かな企画展が行われている美術館。
この時、開催されていたのは「廃墟の美術史」です。
栄華や文明の痕跡を残しながら
崩れ落ちようとする建造物や遺跡。
18世紀~19世紀にかけて廃墟趣味が流行し、
「廃墟」は絵画の主役の地位を確立していきます。
近代に日本の美術のなかにも伝播し、
廃墟の主題は受け継がれているのだとか。
この展覧会では、西洋古典から現代日本までの
廃墟・遺跡・都市をテーマとした作品を集め、
「廃墟の美術史」を辿っていくものでした。
上の作品のみ撮影が可能でした。
美術展を引き立たせるのがこちらの建物。
石造りの印象的な外観、噴水を設けた吹き抜け、
趣深い展示室・回廊が、美しく調和しているのです。
毎週金曜日には45分程の建物ツアーが実施され、
参加してみることにしました。
(事前の申し込みなどは必要ありません)
戦後を代表する建築家、白井晟一氏が設計。
鏡やソファなどの調度品にいたるまで、
白井氏が建物に合わせて探してきたものだとか。
外壁の花崗岩も岐阜の石を使う予定が、
韓国まで行って取り寄せたとか。
花崗岩に覆われた外壁と銅板葺きの大きな屋根の外観、
建物中央の吹き抜け、独特の意匠が印象的です。
松濤という高級住宅街の一角ですから
建物から近隣の住宅を覗かれることのないよう
窓も最小限にとどめているなどの配慮も。
建物の中央に噴水のある吹き抜けがあり、
それを展示室が円形に囲むというユニークな設計。
第1展示室が展望できるギャラリーと、
噴水を見下ろせるブリッジがあり、横断できます。
予算をオーバーした建物、維持管理費も高そうですが、
心安らぐ雰囲気に包まれ、美術への身近な架け橋となり、
潤いのある生活の一助にと建てられた美術館です。
入館料:一般500円、大学生400円、
高校生250円、小中学生100円
(毎週金曜日は渋谷区民は無料、区民の利用は3%とか)
東京都渋谷区松濤2-14-14
2019.1.25