
'07/07/12の朝刊記事から
食品の安全性 管理に問題ない→先進国に劣る
中国 強弁姿勢を転換 五輪控え信頼回復狙う
【北京11日佐々木学】中国で生産・製造された食品や薬品などの安全性が問題視される中、中国政府はこれまで「管理体制に問題はない」と強弁していた姿勢を転換、「中国は発展途上国で、食品安全の全体的水準は先進国より劣る」と率直に認め、対策強化の方針を打ち出した。
海外からの来客が増える北京五輪の開催を来年8月に控え、国際社会の中で信頼を回復したい考えだ。
「中国で食品や薬品の安全性に対する監督管理業務は始まったばかり。基礎作業は相当弱い。情勢は楽観できない」。
国家食品薬品監督管理局の顔江瑛・政策法規局副局長は10日、農業省など5部門の合同記者会見で、中国の食品や薬品の安全性に対する国際社会の批判に耳を傾ける姿勢を見せた。
同局トップを務めた鄭篠萸(ていしょうゆ)・前局長(閣僚級)は同日、製薬会社から649万元(約1億円)の賄賂を受け取った見返りに偽の医薬品を承認した罪で死刑を執行された。
同じ日に行った記者会見と死刑執行は、食品・薬品の安全問題に真剣に取り組むという中国政府の強いメッセージとなった。
米国で3月、中国産原料を使ったペットフードを食べた犬や猫が大量死して以来、「危険な中国製品」に対する海外の懸念は高まったが、中国政府は「中国製品の生産から流通、輸出まで品質検査は厳格だ」(中国外務省)といい、外国メディアの報道を「騒ぎ過ぎ」とはねつけてきた。
しかし、パナマで5月に中国製の有毒物質を含んだせき止め薬で100人以上が死亡するなど、事態は人間の健康被害にまで及び、中国政府も座視できず、輸出品の監督強化に乗り出した。
中国当局者は10日の記者会見で、安全基準を満たさない企業の「ブラックリスト」公表や、零細企業による食品の輸出禁止、輸出品の検査官増員と検査施設増設などを発表。
また、日本や欧米に食品を輸出していた企業41社の安全性に問題があるとして輸出禁止措置を取ったことも明らかにした。
政府は一方で、「五輪期間の食品安全は保証する」とも強調し、「危ない中国製品」のイメージを打ち消すのにも躍起となっている。