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'07/08/07の朝刊記事から
拿捕の富丸 返還請求棄却
国際海洋法裁 規定なく判断回避
【ウィーン6日石井群也】国際海洋法裁判所がロシアに昨年拿捕された釧路市の「第53富丸」の船体返還について、同裁判所の管轄外と判断したのは、既に没収された船体の返還に関する規定が国連海洋法条約に明記されていないことから、同裁判所としての判断を避けたものとみられる。
ロシア当局は漁業資源の管理強化を狙っており、排他的製剤水域(EEZ)内の漁船摘発を助長する結果につながりかねない。
6月に拿捕された富山県の漁船「第88豊新丸」の船体と乗組員解放の裁判では、同条約に基づき保証金を大幅に減額するよう命じた。
これは裁判の不透明性が高く、手続きが長期化する傾向にあるロシア側に、早期の法整備を促したものと言える。
日本外務省が同裁判所への初提訴に踏み切った背景には、極東海域でロシアによる外国船の漁船拿捕が急増していることがある。
昨年はロシア漁船も含め、3万隻が臨検され、1100件が拿捕、そのうち約100隻が外国船だった。
日本が提訴した7月上旬には、カムチャツカ国境警備庁に38隻が抑留。
裁判手続きを長期待たされる状態が恒常化し、司法の迅速化を求める声が国際的にも高まりつつあった。
富丸の判決を受け、今後、ロシア側が「船体没収」などの強硬措置を繰り返す恐れもあり、漁業関係者の間では「ロシアは提訴の報復として来年以降、当該の漁船に操業許可を出さないのでは」と心配する声もある。
2件の裁判で全面勝訴を確信していた日本側だったが、事実上、「1勝1敗」に終わった。
政府は日ロ間の漁業トラブルを早期に解決する手だてに引き続き取り組まねばならない。