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'07/08/08の朝刊記事から
富丸返還棄却の国際海洋法裁 船没収、高額請求は批判
ロシアに昨年11月、拿捕された釧路市の「第53富丸」をめぐるドイツ・ハンブルクの国際海洋法裁判所が6日に出した判決は、日本政府の船体返還の訴えを退ける一方で、ロシアによる船体没収や高額の保証金請求を批判した。
日本側は判決を拿捕漁船の返還交渉に好影響を与えると評価しており、判決はロシア側の姿勢が軟化するきっかけにもなりそうだ。
政府「歯止め期待」
麻生太郎外相は7日の記者会見で、富丸の判決について「(ロシアに)不当に性急な没収は国際法の趣旨に矛盾すると指摘しており、この点は日本としても評価する」との認識を表明した。
また、6月に拿捕された富山県の漁船「第88豊新丸」の保証金額が大幅に減額されたことについても、「算定基準に船体価格を考慮すべきでないという主張が全面的に認められた」と判決を歓迎し、「船体と乗組員の早期返還が実現するよう、ロシア側に求めたい」との考えを示した。
日本が国際海洋法裁判所に提訴したのは今回が初めてで、麻生氏が提唱する「法の支配の強化」に基づいた国際裁判所活用の一環。
外務省は「判決を機に、ロシアが外国漁船の拿捕、釈放に関する国内制度と運用を改善し、日本の漁船の長期拘束に歯止めがかかることを期待したい」(国際法局)としている。
日本の提訴後、別の拿捕事件では、ロシア司法当局が船体没収を認めない決定を下しており、ロシア側の対応は軟化するとみられる。
豊進丸事件で、現地の自然保護検察局は当初、船体返還の保証金として違法操業による損害額分を要求。
巨額の船体価格も含めるよう求めたのは国境警備当局とみられ、最初から船体没収を視野に入れていた模様だ。
こうした要求が出たのは昨年8月、根室市の漁船員1人が亡くなった吉進丸銃撃事件から。
事件以降、日本漁船に対する4件の拿捕事件すべてでロシア側は船体没収を求め、2隻が没収された。