備 忘 録"

 何年か前の新聞記事 070110 など

大相撲の朝青龍問題

2010-09-20 19:45:18 | 文化

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'07/08/20の朝刊記事から

記者の視点 東京社会部 松井伊勢生

大相撲の朝青龍問題   
伝統、品格 角界は指導を


けがを理由に夏巡業への休場届を出しながら、故郷モンゴルでサッカーに興じた横綱朝青龍をめぐる騒動。
軽率な行為だが、「品格に欠ける」と批判される横綱本人、その振る舞いを許してきた高砂親方(元大関朝潮)という「ひとつの相撲部屋の問題」で片づけて良いのか。
増加する外国人力士を国技の担い手としてどう育てるのか、角界の姿勢が問われている。

巡業は、本場所を見ることのできない地方にファンの裾野を広げ、新弟子開拓にもつなげる狙いがある。
日本相撲協会にとって、本場所と同じく重要な事業だ。

朝青龍は、その大切な仕事を「サボった」と受け取られ、協会は二場所出場停止と外出制限などの処分を決めた。
横綱審議委員会(横審)の松家里明委員は「厳罰だが妥当。横綱の品格を問う以前の話」と厳しい。

外国人を知る努力必要
2003年の横綱昇進時、横審が「品格を高めてほしい」と異例の注文をつけたほど、朝青龍は素行が問題とされてきた。
当時からの委員で委員長経験もある石橋義夫委員は「20代前半の若者が完璧なわけはない。親方や協会が足りない部分を教え、育ててほしいということで委員が一致した」と振り返る。

しかし、朝青龍のトラブルは続く。
「親方は絶対」の世界で、無断帰国し先代高砂親方の通夜を欠席、けいこや綱打ちを無断欠席するなど、たびたび波紋を広げた。

その挙句、今回の騒動。
石橋委員は「親方と力士は親子のようなもの。大切な信頼関係が築けていたのか疑問だ。大関どまりだった親方なので横綱に遠慮があったようにも感じるが、それでは駄目だ」と批判する。

相撲ジャーナリストの銅谷志朗さんは「言葉や文化の違いがある以上、教えても伝わらない部分はある。曙らハワイ出身力士にも、相撲の伝統やしきたりのニュアンスを伝えるのは難しかったようだ」と外国出身力士に特有の問題を明かす。
ここまで問題がこじれたのは、本人の責任に加え、親方や協会のコミュニケーション不足、指導力不足を問わざるを得ない。

角界の頂点に立つ横綱は、「品格、力量が抜群であること」と横審の内規に明示されている。
強さだけを競う世界ではない。
協会や親方は、このことをどこまで理解させているのか。

さらに「親方や協会に外国人のことを知ろうとしない体質がある」と指摘するのは、モンゴル研究家で札幌国際大観光学部教授の松田忠徳氏。
「外国人力士の民族性の違いを尊重せず、日本で愛される態度も指導できないなら、国技に外国人を入れるべきではない」と協会の姿勢を批判する。

外国出身力士は、7月の名古屋場所時点で60人。
幕内でも3割を占める。
今回の問題を機に協会は、ただ強いだけではない力士の育成という本来の目的に本腰を入れてほしい。
それを抜きにして、活性化を外国人に頼り続けるなら、第2、第3の朝青龍問題は避けられない。


コメント
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