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'07/08/20の朝刊記事から
タイ 新憲法案承認へ
初の国民投票で過半数
【シンガポール19日勝木晃之郎】タイの新しい憲法案の是非を問う国民投票が19日行われ、即日開票された。
スラユット首相は同日夕、賛成票が過半数を占めることが確実な情勢になったことから、「新憲法は国民の承認を得た」と勝利宣言を出した。
投票率も55%程度になる見込みで、昨年9月のクーデターでタクシン前首相を追放し実権を握った軍政がとりあえず国民から信任を取り付けた形となった。
国民投票はタイ史上初。
選挙管理委員会によると、開票率87%の段階で、賛成票は58%となっている。
タクシン前首相の支持基盤だった東北部では賛成票が36%にとどまったが、大半の地区で賛成票が過半数を占めた。
新憲法はプミポン国王の承認を得て公布され、スラユット政権は年内にも民政移管に向けた総選挙を行う予定。
同首相は「12月5日の国王の誕生日後が適している」と述べた。
各政党は選挙に向けた準備を本格化させる見込みで、タクシン前首相の支持者らによる反政府運動が下火になることも予想される。
投票は午前8時(日本時間同10時)に全国約8万7千箇所の投票所で始まり、午後4時(同6時)に締め切られた。
タクシン前首相の支持者らの動きに備え、各地には警察や軍など約20万人が配備されたが、大きな混乱はなかった。
新憲法案は、首相の任期を2期に制限し、中選挙区制の復活でタクシン前首相のような与党の肥大化を抑える内容となっている。
一方、議会にクーデターを起こした軍人に恩赦を与える権限も付与したため、「不安定な連立政権が続く可能性があり、軍部の介入を許すことになりかねない」との批判も出ていた。
タイ新憲法案
クーデターを実行した国軍主導で指名した憲法起草委員会がまとめ、全15章、309条から成る。
タクシン前首相の強権政治を教訓に①首相任期を最長連続8年に制限②下院の選挙制度を小選挙区から中選挙区に変更③首相や閣僚への不信任案の提出要件の緩和―など特定の政治家や政党への権力集中排除が最大の眼目となっている。
国民投票による承認後は、45日以内に暫定議会が関連法案を制定、プミポン国王の承認を経て公布され、新憲法下で総選挙を行う。